英国のいま
英最高裁がパレスチナ・アクション禁止令を11月4日から審理、直前のデモで325人逮捕
ロンドンの米大使館前で2026年10月31日、パレスチナ・アクションへの支持を掲げた325人が逮捕され、最高裁は11月4〜5日にこの団体の禁止が表現の自由と釣り合うかを審理します。英国のテロ関連逮捕は1年で16倍に増えましたが、増えた分はほぼプラカードです。判決がどちらに転んでも、テロの統計がテロを測れなくなった問題は残ります。
公開文 ジャスト・ロンドン編集部約2分で読めます
2026年11月4日時点の報道と公式発表をもとに書いています。出典は本文のリンク先です。
- 世相・ニュース

画像: ChrisVTG Photography / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
ニュース
米大使館前のパレスチナ・アクション支持デモで300人超を逮捕
2026年10月31日(土)、ロンドンの米大使館前で、「ジェノサイドに反対し、パレスチナ・アクションを支持する」と書いたプラカードを掲げた人たちが次々に逮捕されました。警視庁が11月1日に発表した逮捕者は325人。うち320人の容疑は、テロ法の「禁止団体への支持の表明」です。報道はMore than 300 arrests at Palestine Action support protest outside US embassy(BBC、11月1日)。
団体はイスラエルの軍需企業の英国拠点などに押し入り、設備を壊してきました。2025年6月に空軍基地へ侵入して給油機のエンジンに塗料を吹きつけ、7月5日からテロ組織として禁止されています。以来、支持を示す品を掲げれば最長6か月、支持を呼びかければ最長14年の拘禁刑です。
2026年2月に高等法院は禁止を違法としましたが、6月に控訴院が覆しました。最高裁の審理は11月4〜5日で、内務省は「断固として争う」としています。
論考
最高裁が答えるのは一問だけ、2,936人がその答えを待つ
最高裁が答えるのは一問だけです。この団体を禁じたことは、表現と集会の自由に照らして釣り合っているか。内務相が自分の方針に沿って決めたかは、7月に争点から外れました。判事はリード長官ら5人。5日午後は非公開で、判決日は決まっていません。なお傍聴席には、スローガン入りの服では入れません。
合法なら、プラカードでの逮捕は続きます。違法なら禁止命令が崩れ、それを前提にした起訴も足場を失うとみられます。ただし英国は議会主権の国で、議会が法律で直接禁じ直す道は理屈の上では残ります。
ここからは私見です。内務省の統計を見ると、増えたのはテロではありません。2026年6月までの1年間のテロ関連逮捕3,867件から、この団体がらみを除くと237件。過去10年の中央値238件とほぼ同じです。この団体がらみの3,630件はほぼプラカードで、逮捕者の平均年齢は59歳です。起訴は17%にとどまり、2,936人が保釈や捜査継続のまま宙に浮いています。
英国でテロ容疑で捕まる人の典型は、いまや50代後半で、段ボールと太いマーカーを持っている。本人たちは「テロリストではない」と言い、それはたぶん正しい。ただ掲げている名前は、空軍機に塗料を吹いた団体のものです。最高裁が量るのは自由との釣り合いだけで、警察の手間も統計の歪みも秤には載りません。判決が出たら、それを量るのは議会の番です。