イギリス英語
the full monty「the full monty」は脱ぐ話じゃなかった。映画の前は「全部のせ」で、語源はいまも誰にも分からない
the full monty は「全部そろったやつ」。脱ぐ意味が広まったのは1997年の映画からで、それより前はボクシングの声援や、金の指輪じゃらじゃらの男に使われていた。モンゴメリー元帥の朝食説も紳士服チェーン説も有名だが、どれも証拠が無い。
公開文 ジャスト・ロンドン編集部約2分で読めます
01
もとは「全部入り」。脱ぐ意味は1997年の映画から
見つかっている古い例は、北イングランドの匂いがする
日本で the full monty といえば、1997年の映画『フル・モンティ』。シェフィールドの失業した男たちが、一念発起して全部脱ぐ話だ。でも本来の意味は「全部そろったやつ」「何から何まで」。脱ぐのはその一例にすぎない。
古い用例を探した英国の研究者によれば、見つかっている早い例は1975年9月22日のロンドンの夕刊紙。ボクサーの試合のリングサイドで、選手の妻が「Give it the full monty」(全部出しなさい!)と叫んでいる。1979年の芸能紙では、北部出身のお笑いコンビが「金の指輪をじゃらじゃら、the full montyで決めた男」の話をしている。
米イェール大学で引用句を研究する図書館員によると、1982年のマンチェスターの電話帳には、「The Full Monty Chippy」という名前のフィッシュ・アンド・チップス屋が2軒載っていた。
ボクシング、指輪、フライ。脱いでいる人はまだ一人もいない。日本語でいえば「全部のせ」「フルコース」だ。ラーメン屋の全部のせを頼んで脱ぎ出す人はいない。
02
モンゴメリー元帥の朝食か、紳士服のバートンか
どっちも面白い。どっちも証拠が無い
語源の説は二大巨頭がいる。
- モンゴメリー元帥説:第二次世界大戦の英雄が、朝食に毎回フル・イングリッシュ・ブレックファストを求めた。あるいは勲章を全部つけて現れた
- 紳士服のバートン説:北部で店を広げた紳士服チェーンの創業者モンタギュー・バートンの店で、3つ揃いを一式そろえることを「the full Monty」と呼んだ
英語の大辞典はバートン説を「たぶん最もありそう」としている。ただ、さっきのイェール大学の研究者の結論は冷たい。どちらの説にも記録の裏付けが無く、「色っぽい語源話は魅力的だが、ほぼ例外なく間違っている」。そもそも古い例では monty が小文字で、人名ならおかしい、とも指摘している。
そして議会。2025年、映画とテレビの支援策をめぐる下院の議論で、ある議員が政府の回答をこう評した。「大いなる遺産を期待したのに、the full montyは出てこず、ブラス!な気分にさせられた」。英国映画のタイトル(『大いなる遺産』『フル・モンティ』『ブラス!』)をつなげた、議会芸だ。続けて「次は委員会で手短な出会いを」と『逢びき』(英題 Brief Encounter)まで入れている。
使い方は簡単。go the full monty(とことんやる)、the full monty(全部入り)。脱ぐかどうかは文脈しだい。