Armada Portrait of Elizabeth I
エリザベス1世(アルマダ・ポートレート)
作者不詳(イングランドの工房), 1588年頃
クイーンズ・ハウス

作品の概要
勝利のすぐ後に描かれた、「宣伝」としての肖像画です。 1588年、スペインの無敵艦隊を退けたエリザベス1世を、これ以上ないほどの権威で飾り立てています。
まず、女王の右手を見てください。 指先が地球儀の上に置かれ、その指が覆っているのはアメリカ大陸です。海の向こうの新しい世界へ、イングランドが手を伸ばそうとしていることを示す身振りです。
次に、背後の2つの窓を左から右へ見てください。 左の窓には、スペイン艦隊に向かっていくイングランドの火船。右の窓には、嵐に流され、岩だらけの海岸で砕けるスペインの船。英国では、この嵐は「プロテスタントの風」と呼ばれました。戦いの経緯が、窓の外の景色として一枚に組み込まれているのです。
衣装を見てください。 襞襟、全身に縫い付けられた真珠、リボン、宝石。真珠の一部はスコットランド女王メアリーのものだったとも言われます。女王の脇には王冠。肖像を横長の画面に収め、背景に出来事を描き込むこの形式は、エリザベスの肖像画としては前例のないものでした。
この絵には兄弟がいます。 アルマダ・ポートレートは3点が現存し、ほかの2点はウォーバーン・アビー(ベッドフォード公爵家)と、周りを切り詰めた形でナショナル・ポートレート・ギャラリーにあります。かつては宮廷画家ジョージ・ガワーの作とされていましたが、いまは3点とも別々の工房で、名前の分からない画家たちが描いたと考えられています。
クイーンズ・ハウスの1点は、無敵艦隊と戦ったフランシス・ドレークの一族に伝わったもので、2016年に公募の寄付によってロイヤル・ミュージアムズ・グリニッジの所蔵になりました。
ここがポイント
- 女王の右手の指先が、地球儀のアメリカ大陸を覆っている。海の向こうへ伸びるイングランドの野心
- 左の窓に迫る火船、右の窓に嵐で砕けるスペイン艦隊。戦いの経緯が一枚に組み込まれている
- 現存する3点のうちの1点。ほかはウォーバーン・アビーとナショナル・ポートレート・ギャラリーにある
- ドレークの一族に伝わり、2016年に公募の寄付でロイヤル・ミュージアムズ・グリニッジの所蔵になった