The Guitar Player

    ギターを弾く女

    Must See

    ヨハネス・フェルメール, 1672年頃

    ケンウッド・ハウス

    ギターを弾く女

    画像: Johannes Vermeer / Public domain, via Wikimedia Commons

    作品の概要

    フェルメールの女性たちのなかで、これほど開けっぴろげな表情はめずらしい。 手紙を読む女も、牛乳を注ぐ女も、自分の世界に沈み込んで静かです。ところがこの女性は、口元をほころばせ、画面の外の誰かのほうを向いて、ギターをかき鳴らしています。

    まず、構図を見てください。 女性は画面の左端に寄せられ、右半分は大きく空いています。フェルメールの絵は、ふつうもっと釣り合いがとれている。この傾きが、演奏のさなかの一瞬、音が鳴っている時間を画面に持ち込んでいます。

    次に、ギターの弦を見てください。 飾りのついた響き穴まで細かく描き込まれた楽器のなかで、弦だけがぼやけています。弦が震えているように見えるのです。

    光と視線を見てください。 光は右から、画面に描かれていない窓から差し込んでいます。女性がその右のほうへ顔を向けていることで、彼女が誰かに向かって弾いていることが分かる。聴き手は、画面の外にいるのです。

    描かれた楽器は、当時の新しいものでした。 17世紀のオランダでは、それまでのリュートに代わってギターが流行し始めていました。オコジョの毛皮で縁取った黄色い上着、真珠の首飾り、背後の風景画。フェルメールが繰り返し使った小道具のなかに、流行の楽器が加わっています。

    1974年、この絵は盗まれました。 犯人は政治的な要求を突きつけ、2か月半ほど行方が分からないままでした。見つかったのはロンドン市内の教会の墓地。湿気にさらされていたにもかかわらず、ほぼ無傷でした。

    フェルメールが亡くなる数年前、最晩年の作品のひとつです。

    ここがポイント

      • フェルメールには珍しい、開けっぴろげな表情。画面の外の聴き手に向かって弾いている
      • 女性は左端に寄せられ、右半分が空いている。この傾きが演奏中の一瞬を画面に持ち込む
      • 細かく描かれた楽器のなかで、弦だけがぼやけている。弦が震えているように見える
      • 1974年に盗まれ、2か月半後にロンドン市内の教会の墓地で見つかった