英国のいま
デボンの保護区で希少アリの巣が盗まれる、アリは保護動物の表に載らず
イングランドで最後の生息地から、いちばん珍しいアリの巣が丸ごと掘り取られました。保護団体は野鳥の卵を盗むのと同じ重さの犯罪だと訴えますが、英国の法律は虫をそう扱っていません。法が守っているのは、アリよりもむしろアリの住んでいた土です。
公開文 ジャスト・ロンドン編集部約2分で読めます
2026年11月5日時点の報道と公式発表をもとに書いています。出典は本文のリンク先です。
- 世相・ニュース

この記事の要点
- 2026年11月2日、デボン野生生物トラストが、チャドリー・ナイトン・ヒース保護区からナローヘッデッド・アントの巣が1つ掘り取られたと発表しました。警察が捜査しています。
- イングランドでこのアリがいるのはこの保護区だけで、直近の調査では巣が142個。1つの巣に1,000〜5,000匹がいて、女王は25年生きることもあります。
- このアリは1981年野生生物・田園法の保護動物の表(第5表)に載っていません。窃盗法でも野生の生き物は原則として盗めないため、問えるのは主に保護区を傷めた罪です。
- 警察の捜査に期限はなく、第5表の次の見直しの日程も公表されていません。トラストは近くの別の土地にも巣を増やす計画です。
- 野鳥の卵は1個でも取れば罪になりますが、虫は表に載るまで法の外にいます。
ニュース
泥棒、イングランド最後のアリの砦を襲う
デボン野生生物トラストは2026年11月2日、Thieves strike at ant’s last English strongholdと発表しました。デボン州南部の保護区チャドリー・ナイトン・ヒースで、ナローヘッデッド・アント(学名 Formica exsecta)の巣が1つ、丸ごと掘り取られていたという内容です。
見つかったのは10月半ばです。定期の見回りで、巣があったはずの場所がくぼみになり、スコップで掘った跡が残っていました。
- このアリがイングランドでいるのはこの保護区だけ。ほかはスコットランドに少しいるだけです
- 保護区の巣は、直近の調査で142個(2026年11月の発表時点)
- 1つの巣には1,000〜5,000匹がいて、女王アリは25年生きることもあります
- 保護区は特別科学的関心地区(SSSI)に指定されています
トラストはデボン・コーンウォール警察に届け出て、情報を求めています。警察の担当者は「SSSIは法律で守られており、傷めるのは犯罪です」とコメントしました。トラストと無脊椎動物の保護団体Buglifeは、国の資金で3か年の回復計画を今年の夏に始めたばかりでした。
論考
アリは盗めないが、アリの住む土は盗める
ここからは私見です。トラストの担当者はこの件を「野鳥の卵を盗むのと同じくらい重い犯罪」と呼びました。法律の扱いは違います。
野鳥の卵は、どの鳥のものでも取れば犯罪です。1981年野生生物・田園法の第1条で、最長6か月の拘禁もありえます。ところが昆虫が守られるのは、同じ法律の第5表に名前が載った約48種だけ。大半はチョウとガで、アリは1種も入っていません。
では窃盗罪はどうか。窃盗法第4条は、飼われていない野生の生き物は原則として盗めないと定めています。一方で、他人の土地の一部を切り取って持ち去るのは窃盗になりえます。素直に読めば、法が守るのはアリではなく、アリの住む土です。
残るのはSSSIを傷めた罪です。罰金に上限はありませんが、犯人が「そこがSSSIだと知っていた」証明が要ります。示せなければ上限は£2,500です。
この先の節目は、はっきりしません。警察の捜査に期限はなく、第5表の次の見直しの日程も公表されていません。トラストの計画では、近くの別の土地にも新しい巣をつくります。その土地がSSSIでなければ、新しい巣を守るのは土の窃盗だけです。
第5表に載れば、売ることも禁じられます。代わりにトラスト自身も、巣を移すたびに許可が要ります。手続きの手間と、巣ごと持ち去られる損失。どちらが重いかは、イングランド全体で142個という数字が答えている気がします。