在英国日本国大使館にできること・できないこと
What the Japanese Embassy Can and Cannot Do for You
頼れる場面と、頼れない場面がはっきり分かれています。パスポートの発給、逮捕されたときの領事面会、家族への連絡の仲介はできます。一方で、弁護士費用の負担、裁判の通訳、捜査への介入はできません。先に線を知っておくほうが、結果的に頼りになります。
いま危険な状況なら
身に危険がある、犯人がまだその場にいる、けがをしたなら 999。 すでに終わったことの通報は 101(緊急でない警察の窓口)。銀行を名乗る不審な連絡は、いったん切って 159 にかけ直します。
まず、この順番でやってください
- 1
まず命や身の安全に関わるなら、大使館より先に999
大使館は捜査機関でも救急でもありません。危険が進行中なら 999 が先です。
- 2
相談の前に自分の用件が「できること」に入るか確認する
パスポート、証明書、事件事故の相談、逮捕時の面会は対象です。金銭の貸与や法的代理は対象外です。
- 3
平日の日中領事班に電話する(020-7465-6565)
窓口は平日09:30〜16:30。日本語で相談できます。土日と英国の祝日は閉館です。
- 4
夜間・休日で緊急なら大使館の緊急連絡先を使う
邦人の生命に関わる事案には時間外の対応窓口があります。公式サイトの緊急連絡先ページを確認してください。
- 5
平時のうちに在留届(3ヶ月以上)またはたびレジ(短期)を出す
緊急時に大使館から連絡が届くようになります。登録は数分で終わります。
要点
- 窓口
- 在英国日本国大使館 領事班
- 住所
- 101-104 Piccadilly, London W1J 7JT
- 電話
- 020-7465-6565
- 受付
- 平日 09:30〜16:30(土日・英国の祝日は閉館)
- 言語
- 日本語で相談できます
- 手数料
- 証明書等は有料。毎年4月1日改定のため公式ページで確認
海外でトラブルに遭ったとき、「大使館に行けばなんとかしてもらえる」と考えている人は少なくありません。そして実際に相談して、期待していたものと違ったと感じて帰ってくる人もいます。
これは大使館が冷たいからではなく、できることの範囲が制度で決まっているからです。税金で運営されている機関なので、特定の個人のために費用を負担したり、他国の司法に介入したりすることはできません。
ただ、できることも確実にあります。パスポートの発給、逮捕・拘禁されたときの領事面会、家族への連絡の仲介、弁護士や通訳のリストの提供。これらは制度として保障された支援です。
線を先に知っておくと、無駄足を踏まずに済み、使えるところをきちんと使えます。この記事はその線引きの話です。
目次
1. できること
制度として保障されている支援
- パスポートの発給・再発給、帰国のための渡航書の発給
- 各種証明書(在留証明・署名証明など)の発給
- 事件・事故に遭ったときの相談、現地当局への照会
- 弁護士・通訳・病院のリスト(情報)の提供
- 逮捕・拘禁された場合の領事面会、家族への連絡の仲介
- 家族・知人への連絡の仲介(所持金を失ったときなど)
- 災害・事故時の安否確認と情報提供
とくに重要な3つ
1. パスポートの発給・帰国のための渡航書
これは大使館にしかできない仕事です。紛失・盗難のときの手続きはパスポートを失くした・盗まれたにまとめています。
2. 逮捕・拘禁されたときの領事面会
日本人が英国で逮捕された場合、本人が希望すれば領事が面会に行けます。これはウィーン領事関係条約に基づく権利です。
領事は、拘禁されている環境が不当でないかを確認し、家族への連絡を仲介し、弁護士のリストを提供できます。ただし釈放させることはできません。
3. 家族・知人への連絡の仲介
所持金をすべて失った、連絡手段がない——そうした場合に、日本の家族へ連絡を取り、送金や航空券の手配を依頼する仲介ができます。
最後の手段として帰国旅費の貸与が行われることもありますが、これは「親族などによる援助がどうしても得られず、法律の要件を満たす」と判断された場合に限られる例外的な措置です。当てにして計画を立てるものではありません。
実務メモ
- 逮捕された場合、日本国籍であることと領事への連絡希望を、英国の当局にはっきり伝える
- 弁護士・通訳のリストは提供されるが、質の保証や斡旋ではない
- 証明書の発給には手数料がかかる。改定されるので公式ページで確認する
2. できないこと
ここを期待すると行き違いになる
- 弁護士費用・保釈金・訴訟費用の負担や貸付、その保証
- 取り調べや裁判での通訳・翻訳
- 金銭の一般的な貸与・給付(帰国旅費の貸与は例外的な最後の手段)
- 犯罪捜査、犯人の逮捕、事件の捜査への介入
- 医療行為、病院への入院手続きの代行
- 身元保証人になること、住居や仕事の斡旋
- 相手方との示談交渉や、法的な代理
なぜできないのか
金銭の負担・貸付 公費を特定の個人のために支出することになるため、原則としてできません。弁護士費用も保釈金も同じです。
取り調べ・裁判の通訳 領事が通訳をすると、中立性の問題が生じます。刑事手続きにおける通訳は、英国の制度として被疑者・被告人に保障されているので、そちらを使うことになります。
捜査や裁判への介入 他国の司法権に干渉することはできません。「日本人だから穏便に」といった働きかけは、そもそも許されていません。
示談交渉や法的代理 これは弁護士の仕事であり、領事の職務ではありません。
つまり、どういうことか
大使館は手続きと情報の窓口であって、代理人でも保護者でもありません。
この線を知らずに「大使館に行ったのに何もしてくれなかった」と感じるのは、期待の置き場所がずれていたということです。逆に、できることの範囲では確実に動いてくれます。
補足
医療費・入院費も自己負担です
けがや病気で入院した場合も、費用は自己負担です。大使館が立て替えることはありません。
だからこそ、旅行者には海外旅行保険が実質的に必須になります。在住者で IHS を払っている人は NHS を使えますが、その範囲は医療・NHS ガイドで確認してください。
3. 連絡の仕方
平日の窓口と、時間外の緊急連絡
領事班(通常の相談・手続き)
在英国日本国大使館 101-104 Piccadilly, London W1J 7JT 電話 020-7465-6565 受付 平日 09:30〜16:30
最寄りはグリーンパーク駅、ピカデリー沿いです。土日と英国の祝日(Bank Holiday)は閉館しています。日本の祝日にも閉まることがあるので、両方のカレンダーに注意してください。
行く前に電話をする
窓口に行く前に電話することを強く勧めます。
- 自分の用件に必要な書類が確定する
- 当日中に終わるのか、日数がかかるのかが分かる
- そもそも大使館の担当かどうかが分かる
平日しか動けない手続きで出直しになるのは重いので、電話の5分を惜しまないでください。
時間外・緊急の場合
邦人の生命・身体に関わる重大な事案については、時間外の緊急連絡の窓口があります。公式サイトの緊急連絡先ページで確認してください。
ただし、緊急の定義は「命に関わる」水準です。パスポートを失くした、財布を盗まれたといった用件は、平日の窓口で扱われます。
英国の緊急通報が先
繰り返しになりますが、危険が進行中の場面では 999 が先です。大使館は救急でも警察でもありません。
事故に遭った、犯罪に巻き込まれた——まず英国の緊急通報を使い、状況が落ち着いてから大使館に連絡する、という順番になります。
実務メモ
- 祝日は英国と日本の両方の暦を確認する。日本の祝日にも閉まることがある
- 電話は混み合うことがあるので、時間に余裕をもってかける
- 手続きによってはオンライン申請に対応している。公式サイトで確認する
4. 在留届とたびレジ
登録していると、緊急時に連絡が届く
どちらも登録は数分で、無料です。
| 制度 | 対象 | 何のため |
|---|---|---|
| 在留届 | 3ヶ月以上滞在する人(義務) | 所在の把握、緊急時の連絡 |
| たびレジ | 短期の旅行者(任意) | 現地の安全情報、緊急時の連絡 |
在留届は義務です
外国に3ヶ月以上滞在する日本人には、在留届の提出が法律で定められています。罰則が科される性質のものではありませんが、出しておくべきものです。
住所が変わったとき、帰国するときにも届け出が必要になります。
何の役に立つか
- テロ・災害・大規模な事故が起きたとき、安否確認の対象になる
- 緊急の連絡(渡航情報、退避情報)が届く
- 家族が日本から連絡を取ろうとしたときの手がかりになる
平時には何の実感もありませんが、必要になる場面では他に代えがありません。
登録は外務省のオンライン在留届から行えます。
帰国時の届け出も忘れずに
在留届を出したまま帰国すると、記録上は英国にいることになります。帰国時には帰国届を出してください。
ヒント
家族と情報を共有しておく
緊急時に効くのは、実は家族が持っている情報です。
- パスポート番号と有効期限
- 滞在先の住所と連絡先
- 加入している保険の会社名と証券番号
- 現地の連絡先(勤務先・学校)
これらを日本の家族と共有しておくと、本人が動けない状況になったときに手続きが進みます。クラウドの共有フォルダに入れておくだけで十分です。
5. 結局どこに相談すればいいのか
用件ごとの対応表
迷ったときの目安です。
| 用件 | 相談先 |
|---|---|
| 身に危険がある、犯罪が進行中 | 999 |
| 終わった盗難の届出 | 101(届出の手順) |
| 詐欺の被害 | 0300 123 2040(詐欺に遭ったら) |
| 銀行を名乗る不審な連絡 | 159 |
| パスポートの紛失・盗難 | 大使館(渡航書の取り方) |
| 逮捕・拘禁された | 大使館(領事面会) |
| 体調を崩した | 101 ではなく 111(医療ガイド) |
| 地下鉄・バスの落とし物 | TfL(落とし物を探す) |
| 保険の請求 | 保険会社(請求の手順) |
| 家主とのトラブル | 自治体・Shelter 等(住まいガイド) |
| 職場とのトラブル | ACAS 等(労働問題ガイド) |
大使館が担当するのは、日本国民としての身分に関わる部分——パスポート、証明書、身柄の保護、家族との連絡——だと考えると整理しやすくなります。
生活上のトラブル(住まい、仕事、消費者被害)は、英国側の専門機関のほうが実効性があることがほとんどです。大使館はそれらの情報提供はできますが、代わりに交渉することはできません。
よくある質問
参考・公式情報
- Metropolitan Police - Report a crime
- Metropolitan Police - Report lost or found property
- Transport for London - Lost property
- Stop Scams UK - STOP, HANG UP, CALL 159
- Report Fraud - UK's home for reporting cyber crime & fraud
- City of London Police - Report Fraud launches
- FCA - Fraudulent payments(返金ルール)
- 外務省 - 海外安全ホームページ
- 在英国日本国大使館 - 旅券(パスポート)
- 在英国日本国大使館 - 緊急連絡先
料金・時刻・制度は変更されます。本記事は2026年8月時点の情報です。渡航前に各公式サイトで最新情報をご確認ください。
本記事は手続きの流れを説明する情報提供であり、法的な助言ではありません。 警察・大使館・保険会社の運用や手数料は改定されることがあります (領事手数料は 毎年4月1日 に改定されます)。実際に手続きをする前に、各機関の公式ページで最新の 必要書類と金額をご確認ください。事件性のある被害や、身の安全に関わる 状況では、まず警察に相談してください。