在英国日本国大使館にできること・できないこと

    What the Japanese Embassy Can and Cannot Do for You

    頼れる場面と、頼れない場面がはっきり分かれています。パスポートの発給、逮捕されたときの領事面会、家族への連絡の仲介はできます。一方で、弁護士費用の負担、裁判の通訳、捜査への介入はできません。先に線を知っておくほうが、結果的に頼りになります。

    2026年8月時点の情報

    いま危険な状況なら

    身に危険がある、犯人がまだその場にいる、けがをしたなら 999。 すでに終わったことの通報は 101(緊急でない警察の窓口)。銀行を名乗る不審な連絡は、いったん切って 159 にかけ直します。

    まず、この順番でやってください

    1. 1

      まず命や身の安全に関わるなら、大使館より先に999

      大使館は捜査機関でも救急でもありません。危険が進行中なら 999 が先です。

    2. 2

      相談の前に自分の用件が「できること」に入るか確認する

      パスポート、証明書、事件事故の相談、逮捕時の面会は対象です。金銭の貸与や法的代理は対象外です。

    3. 3

      平日の日中領事班に電話する(020-7465-6565)

      窓口は平日09:30〜16:30。日本語で相談できます。土日と英国の祝日は閉館です。

    4. 4

      夜間・休日で緊急なら大使館の緊急連絡先を使う

      邦人の生命に関わる事案には時間外の対応窓口があります。公式サイトの緊急連絡先ページを確認してください。

    5. 5

      平時のうちに在留届(3ヶ月以上)またはたびレジ(短期)を出す

      緊急時に大使館から連絡が届くようになります。登録は数分で終わります。

    要点

    窓口
    在英国日本国大使館 領事班
    住所
    101-104 Piccadilly, London W1J 7JT
    電話
    020-7465-6565
    受付
    平日 09:30〜16:30(土日・英国の祝日は閉館)
    言語
    日本語で相談できます
    手数料
    証明書等は有料。毎年4月1日改定のため公式ページで確認

    海外でトラブルに遭ったとき、「大使館に行けばなんとかしてもらえる」と考えている人は少なくありません。そして実際に相談して、期待していたものと違ったと感じて帰ってくる人もいます。

    これは大使館が冷たいからではなく、できることの範囲が制度で決まっているからです。税金で運営されている機関なので、特定の個人のために費用を負担したり、他国の司法に介入したりすることはできません。

    ただ、できることも確実にあります。パスポートの発給、逮捕・拘禁されたときの領事面会、家族への連絡の仲介、弁護士や通訳のリストの提供。これらは制度として保障された支援です。

    線を先に知っておくと、無駄足を踏まずに済み、使えるところをきちんと使えます。この記事はその線引きの話です。

    1. できること

    制度として保障されている支援

    • パスポートの発給・再発給、帰国のための渡航書の発給
    • 各種証明書(在留証明・署名証明など)の発給
    • 事件・事故に遭ったときの相談、現地当局への照会
    • 弁護士・通訳・病院のリスト(情報)の提供
    • 逮捕・拘禁された場合の領事面会、家族への連絡の仲介
    • 家族・知人への連絡の仲介(所持金を失ったときなど)
    • 災害・事故時の安否確認と情報提供

    とくに重要な3つ

    1. パスポートの発給・帰国のための渡航書

    これは大使館にしかできない仕事です。紛失・盗難のときの手続きはパスポートを失くした・盗まれたにまとめています。

    2. 逮捕・拘禁されたときの領事面会

    日本人が英国で逮捕された場合、本人が希望すれば領事が面会に行けます。これはウィーン領事関係条約に基づく権利です。

    領事は、拘禁されている環境が不当でないかを確認し、家族への連絡を仲介し、弁護士のリストを提供できます。ただし釈放させることはできません。

    3. 家族・知人への連絡の仲介

    所持金をすべて失った、連絡手段がない——そうした場合に、日本の家族へ連絡を取り、送金や航空券の手配を依頼する仲介ができます。

    最後の手段として帰国旅費の貸与が行われることもありますが、これは「親族などによる援助がどうしても得られず、法律の要件を満たす」と判断された場合に限られる例外的な措置です。当てにして計画を立てるものではありません。

    実務メモ

    • 逮捕された場合、日本国籍であることと領事への連絡希望を、英国の当局にはっきり伝える
    • 弁護士・通訳のリストは提供されるが、質の保証や斡旋ではない
    • 証明書の発給には手数料がかかる。改定されるので公式ページで確認する

    2. できないこと

    ここを期待すると行き違いになる

    • 弁護士費用・保釈金・訴訟費用の負担や貸付、その保証
    • 取り調べや裁判での通訳・翻訳
    • 金銭の一般的な貸与・給付(帰国旅費の貸与は例外的な最後の手段)
    • 犯罪捜査、犯人の逮捕、事件の捜査への介入
    • 医療行為、病院への入院手続きの代行
    • 身元保証人になること、住居や仕事の斡旋
    • 相手方との示談交渉や、法的な代理

    なぜできないのか

    金銭の負担・貸付 公費を特定の個人のために支出することになるため、原則としてできません。弁護士費用も保釈金も同じです。

    取り調べ・裁判の通訳 領事が通訳をすると、中立性の問題が生じます。刑事手続きにおける通訳は、英国の制度として被疑者・被告人に保障されているので、そちらを使うことになります。

    捜査や裁判への介入 他国の司法権に干渉することはできません。「日本人だから穏便に」といった働きかけは、そもそも許されていません。

    示談交渉や法的代理 これは弁護士の仕事であり、領事の職務ではありません。

    つまり、どういうことか

    大使館は手続きと情報の窓口であって、代理人でも保護者でもありません

    この線を知らずに「大使館に行ったのに何もしてくれなかった」と感じるのは、期待の置き場所がずれていたということです。逆に、できることの範囲では確実に動いてくれます

    補足

    医療費・入院費も自己負担です

    けがや病気で入院した場合も、費用は自己負担です。大使館が立て替えることはありません。

    だからこそ、旅行者には海外旅行保険が実質的に必須になります。在住者で IHS を払っている人は NHS を使えますが、その範囲は医療・NHS ガイドで確認してください。

    3. 連絡の仕方

    平日の窓口と、時間外の緊急連絡

    領事班(通常の相談・手続き)

    在英国日本国大使館 101-104 Piccadilly, London W1J 7JT 電話 020-7465-6565 受付 平日 09:30〜16:30

    最寄りはグリーンパーク駅、ピカデリー沿いです。土日と英国の祝日(Bank Holiday)は閉館しています。日本の祝日にも閉まることがあるので、両方のカレンダーに注意してください。

    行く前に電話をする

    窓口に行く前に電話することを強く勧めます。

    • 自分の用件に必要な書類が確定する
    • 当日中に終わるのか、日数がかかるのかが分かる
    • そもそも大使館の担当かどうかが分かる

    平日しか動けない手続きで出直しになるのは重いので、電話の5分を惜しまないでください。

    時間外・緊急の場合

    邦人の生命・身体に関わる重大な事案については、時間外の緊急連絡の窓口があります。公式サイトの緊急連絡先ページで確認してください。

    ただし、緊急の定義は「命に関わる」水準です。パスポートを失くした、財布を盗まれたといった用件は、平日の窓口で扱われます。

    英国の緊急通報が先

    繰り返しになりますが、危険が進行中の場面では 999 が先です。大使館は救急でも警察でもありません。

    事故に遭った、犯罪に巻き込まれた——まず英国の緊急通報を使い、状況が落ち着いてから大使館に連絡する、という順番になります。

    実務メモ

    • 祝日は英国と日本の両方の暦を確認する。日本の祝日にも閉まることがある
    • 電話は混み合うことがあるので、時間に余裕をもってかける
    • 手続きによってはオンライン申請に対応している。公式サイトで確認する

    4. 在留届とたびレジ

    登録していると、緊急時に連絡が届く

    どちらも登録は数分で、無料です。

    制度対象何のため
    在留届3ヶ月以上滞在する人(義務所在の把握、緊急時の連絡
    たびレジ短期の旅行者(任意)現地の安全情報、緊急時の連絡

    在留届は義務です

    外国に3ヶ月以上滞在する日本人には、在留届の提出が法律で定められています。罰則が科される性質のものではありませんが、出しておくべきものです。

    住所が変わったとき、帰国するときにも届け出が必要になります。

    何の役に立つか

    • テロ・災害・大規模な事故が起きたとき、安否確認の対象になる
    • 緊急の連絡(渡航情報、退避情報)が届く
    • 家族が日本から連絡を取ろうとしたときの手がかりになる

    平時には何の実感もありませんが、必要になる場面では他に代えがありません。

    登録は外務省のオンライン在留届から行えます。

    帰国時の届け出も忘れずに

    在留届を出したまま帰国すると、記録上は英国にいることになります。帰国時には帰国届を出してください。

    ヒント

    家族と情報を共有しておく

    緊急時に効くのは、実は家族が持っている情報です。

    • パスポート番号と有効期限
    • 滞在先の住所と連絡先
    • 加入している保険の会社名と証券番号
    • 現地の連絡先(勤務先・学校)

    これらを日本の家族と共有しておくと、本人が動けない状況になったときに手続きが進みます。クラウドの共有フォルダに入れておくだけで十分です。

    5. 結局どこに相談すればいいのか

    用件ごとの対応表

    迷ったときの目安です。

    用件相談先
    身に危険がある、犯罪が進行中999
    終わった盗難の届出101届出の手順
    詐欺の被害0300 123 2040詐欺に遭ったら
    銀行を名乗る不審な連絡159
    パスポートの紛失・盗難大使館渡航書の取り方
    逮捕・拘禁された大使館(領事面会)
    体調を崩した101 ではなく 111医療ガイド
    地下鉄・バスの落とし物TfL落とし物を探す
    保険の請求保険会社請求の手順
    家主とのトラブル自治体・Shelter 等(住まいガイド
    職場とのトラブルACAS 等(労働問題ガイド

    大使館が担当するのは、日本国民としての身分に関わる部分——パスポート、証明書、身柄の保護、家族との連絡——だと考えると整理しやすくなります。

    生活上のトラブル(住まい、仕事、消費者被害)は、英国側の専門機関のほうが実効性があることがほとんどです。大使館はそれらの情報提供はできますが、代わりに交渉することはできません。

    よくある質問

    参考・公式情報

    料金・時刻・制度は変更されます。本記事は2026年8月時点の情報です。渡航前に各公式サイトで最新情報をご確認ください。

    本記事は手続きの流れを説明する情報提供であり、法的な助言ではありません。 警察・大使館・保険会社の運用や手数料は改定されることがあります (領事手数料は 毎年4月1日 に改定されます)。実際に手続きをする前に、各機関の公式ページで最新の 必要書類と金額をご確認ください。事件性のある被害や、身の安全に関わる 状況では、まず警察に相談してください。

    ほかのトラブル対応ガイド

    Theftスリ・ひったくりに遭った直後にやること最初の30分で決まります。カードを止める順番、スマホを遠隔ロックする手順、そして絶対にやってはいけない「位置情報を頼りに自分で取り返しに行く」こと。
    Passportパスポートを失くした・盗まれた帰国できなくなるわけではありません。警察の届出証明を取り、大使館で「帰国のための渡航書」を出してもらう道があります。必要書類と順番を、締切から逆算して。
    Lost Property落とし物を探す(地下鉄・バス・タクシー)盗まれたのではなく置き忘れたなら、探す場所は警察ではありません。TfL の遺失物センターは保管3ヶ月。バスは最初の3日だけ営業所に直接聞くほうが早い、という分岐まで。
    Stalkingつきまとい・ストーカー被害に遭ったら我慢して耐えるものではありません。通報するか決める前から相談できる専門窓口があります。声を出せないまま999を呼ぶ方法と、安全を確保してから記録を取る順番。
    Scams詐欺に遭ったら(銀行の返金義務)自分で振り込んでしまっても、諦めるのはまだ早い。2024年10月から銀行に返金義務が課されました。上限£85,000。そして159という、知らないと損をする番号の話。
    Crime Reference警察に届け出る(crime reference number)物が戻らなくても届け出る理由があります。保険請求も、大使館の渡航書も、この番号がないと進みません。999 と 101 とオンラインの使い分けを、はっきりさせます。
    Insurance保険に請求する(旅行保険・カード付帯)請求が通らない理由は、補償の中身ではなく手続きの順番にあります。受理番号を待つと期限を過ぎる、という落とし穴と、免責額を先に計算すべき理由。