イギリスの詐欺に遭ったら|銀行の返金義務と159の使い方

    Scams in the UK: Getting Your Money Back

    自分で振り込んでしまった場合でも、諦めるのはまだ早いです。2024年10月7日から、だまされて送金した被害にも銀行の返金義務が課されました。上限£85,000、原則5営業日以内。まず銀行に連絡してください。

    2026年8月時点の情報

    いま危険な状況なら

    身に危険がある、犯人がまだその場にいる、けがをしたなら 999。 すでに終わったことの通報は 101(緊急でない警察の窓口)。銀行を名乗る不審な連絡は、いったん切って 159 にかけ直します。

    まず、この順番でやってください

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      いますぐ銀行に連絡して、送金の停止と口座の保護を頼む

      アプリの凍結機能か、カード裏の番号へ。銀行を名乗る電話を受けた直後なら、その電話は切って 159 にかけ直してください。

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      今日中返金を正式に請求する(諦めない)

      だまされて自分で送金した場合でも、2024年10月7日以降の取引なら銀行に返金義務があります。「自分で振り込んだので対象外」と自己判断しないこと。

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      今日中やり取りを保存する

      SMS・メール・チャット・振込先の口座情報・相手の電話番号。消さずにスクリーンショットを取ってください。返金審査の材料になります。

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      数日以内Report Fraud に通報する

      電話 0300 123 2040、またはサイトから。お金を失っていない場合でも通報の価値があります。

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      返金されなければ金融オンブズマンに申し立てる

      銀行の判断に納得できない場合、無料で審査してもらえます。銀行の最終回答から6ヶ月以内が期限です。

    要点

    銀行を名乗る不審な連絡
    切って 159 にかけ直す
    だまされて送金した
    返金の対象になりえます(上限£85,000)
    返金までの期間
    原則5営業日(調査が要る場合は最長35営業日)
    身に覚えのない引き落とし
    13ヶ月以内に申し出れば返金対象
    通報先
    Report Fraud(0300 123 2040)
    納得できないとき
    金融オンブズマン(無料)

    詐欺の被害で最もつらいのは、金額そのものより「自分が愚かだったからだ」と思ってしまうことです。そう思わせる手口だから成功しているのであって、引っかかったことは能力の問題ではありません

    とくに外国で暮らしていると、制度への土地勘がないぶん判断材料が足りません。「英国の銀行はこういう連絡をするものなのかもしれない」と思わせられたら、それで成立してしまいます。母語でない言語で緊迫した電話を受ければ、なおさらです。

    そのうえで、知っておくと結果が変わる制度が英国にはあります。

    ひとつは 159。銀行を名乗る連絡を受けたとき、切ってかけ直す先です。もうひとつが、2024年10月7日に始まった返金の義務化。だまされて自分で送金した被害でも、銀行が返金しなければならなくなりました。

    日本の常識だと「自分で振り込んだ以上どうにもならない」と考えがちです。英国ではそうではありません。まず銀行に連絡してください。

    1. 159 にかけ直す

    銀行を名乗る連絡を受けたときの、唯一の正解

    銀行や警察を名乗る電話・SMSを受けたら、その連絡先には一切かけ直さないでください。SMSに書かれた番号もリンクも、詐欺犯が用意したものです。

    正解は、いったん切って 159 にかけることです。これは主要銀行が参加している短縮番号で、自分の銀行の詐欺対応窓口に安全につながります

    かけ直すときの注意

    同じ端末ですぐかけ直すと、相手が回線を保持していることがあります。かけたつもりが同じ詐欺犯につながる、という手口です。

    • 可能なら別の端末を使う
    • それが無理なら、10分ほど待ってからかける

    見分ける必要はありません

    「本物かどうか見分ける」ことを目指さないでください。プロが作った偽SMSは本物と区別がつきませんし、発信番号は偽装できます。銀行の正規の番号が表示されていても、それは証拠になりません。

    見分けるのではなく、必ずかけ直す。これだけで手口の大半が無効になります。

    覚えておく3つの原則

    • 銀行が暗証番号やパスワードの全体を聞くことはありません
    • 銀行が「安全な口座に資金を移してください」と言うことはありません
    • 警察が「捜査協力のためにお金を引き出してください」と言うことはありません

    ひとつでも当てはまったら、その時点で詐欺が確定します。失礼を気にせず切ってください。

    実務メモ

    • 159 は無料ではなく通常の通話料がかかるが、多くのプランで通話パッケージに含まれる
    • 参加していない銀行もあるので、つながらなければカード裏面の番号にかける
    • 家族が高齢の場合、この番号の存在を共有しておくと効果が大きい

    注意

    急かされたら、それが合図です

    詐欺に共通するのは時間的な圧迫です。「いますぐ手続きしないと口座が凍結される」「30分以内に対応が必要」——正規の金融機関がこういう迫り方をすることはありません。

    急かされていると感じたら、それ自体が詐欺の証拠だと考えてください。本物の用件なら、あとからかけ直しても何も失われません。

    一度電話を切って冷静になる時間を取ることが、最も効果のある対策です。

    2. だまされて送金した場合の返金

    「自分で振り込んだから無理」ではありません

    英国では 2024年10月7日 から、いわゆる APP詐欺(Authorised Push Payment=だまされて自分で送金してしまう詐欺)について、銀行に返金の義務が課されています。

    これは日本の制度にない考え方で、知らないまま諦めてしまう人が多い部分です。

    制度の概要

    項目内容
    対象2024年10月7日以降の送金(Faster Payments・CHAPS)
    上限£85,000
    期限原則5営業日以内(調査が要る場合は最長35営業日)
    自己負担銀行が最大 £100 を差し引ける場合があります

    対象になる詐欺の型は幅広く、偽の請求、なりすまし、投資詐欺、恋愛詐欺、購入詐欺などが含まれます。

    断られることもあります

    無条件ではありません。銀行が「利用者に重大な不注意があった」と証明できる場合や、被害者が詐欺に加担していた場合は、返金を拒めます。

    ただし立証する責任は銀行の側にあります。「不注意だったのでは」と言われて引き下がる必要はありません。

    身に覚えのない引き落とし(不正利用)

    自分で送金したのではなく、カードや口座を勝手に使われた場合は別のルールです。こちらはより強く保護されています。

    • 13ヶ月以内に申し出れば返金の対象
    • 原則として翌営業日の終わりまでに返金される
    • カードの紛失・盗難に伴う負担は最大 £35 まで

    クレジットカードなら Section 75

    クレジットカードで £100 を超える買い物をして商品が届かない、あるいは業者が倒産した場合は、Section 75 によりカード会社が販売業者と連帯して責任を負います。

    デビットカードの場合は Section 75 の対象外ですが、チャージバックを申請できることがあります。

    実務メモ

    • 銀行への連絡は電話とアプリのチャット、どちらでもよいが、記録が残る方法を選ぶ
    • 「返金を正式に請求します」と明示的に伝える。相談ではなく請求として扱わせる
    • 断られた場合は、その理由を書面で出すよう求める。オンブズマンに出すときに使う

    ヒント

    納得できなければ、金融オンブズマンへ

    銀行が返金を拒否し、その判断に納得できない場合、Financial Ombudsman Service(金融オンブズマン) に無料で申し立てられます。

    • 費用は無料
    • まず銀行に苦情を出し、その最終回答(final response)から6ヶ月以内に申し立てる
    • 銀行が8週間以内に回答しない場合も申し立てられる

    第三者機関の判断で覆ることは実際にあります。銀行の最初の回答が最終結論ではありません。

    3. よくある手口

    在英日本人が実際に遭っているもの

    銀行・配送業者を名乗るSMS

    「口座が停止されました」「関税の支払いが必要です」というSMSにリンクが貼られ、開くと本物そっくりの画面が出ます。Royal Mail や DPD を名乗る配送料の請求は特に多く、金額が小さい(数ポンド)ぶん警戒が緩みます。

    狙いは少額の決済ではなく、入力させたカード情報です。

    偽の警察・入国管理

    「あなたの身分証が犯罪に使われている」「ビザに問題がある」と電話をかけ、不安を煽って送金させます。在留資格に不安のある人ほど効く手口で、留学生や新規渡英者が狙われます。

    英国の警察や入国管理が、電話で罰金の支払いを求めることはありません。

    部屋探しの前金詐欺

    内見の前に「保証のためデポジットを送ってほしい」と言われるもの。物件の写真は実在する別の物件から流用されています。内見前に送金しないが原則です。

    住まい探しの詐欺は住まい探しガイドでも扱っています。

    偽の求人・仕事の斡旋

    「登録料」「ビザ手続き費用」を先に求める求人。正規の雇用主が求職者に費用を請求することはありません。

    両替・現金の受け渡し

    路上で好条件の両替を持ちかけられるもの。渡されるのは偽札か、金額が足りません。両替は必ず正規の店舗で。

    電話を切らせない手口

    「このまま切らずに銀行に確認してください」と言われるパターン。回線が保持され、銀行にかけたつもりが詐欺犯につながります。必ず一度切って、別の端末か10分後に 159 へ。

    実務メモ

    • リンクは踏まず、公式アプリを自分で開いて確認する習慣にする
    • 「知らない番号からの着信は出ない」と決めてしまうのも有効。用件があれば留守電に残る
    • 被害に遭った話を周囲に共有する。恥ずかしがると同じ手口が広がる

    4. 通報する

    Action Fraud は Report Fraud に変わりました

    詐欺の通報先は、通常の窃盗とは別です。イングランド・ウェールズ・北アイルランドでは Report Fraud が窓口になります。

    名称の変更について

    2025年12月4日に、それまでの Action FraudReport Fraud に置き換わりました(運営は City of London Police)。

    日本語で書かれた情報はまだ旧名のものが多いので、検索で Action Fraud に行き着いても問題ありません。電話番号は同じで、旧サイトも新サイトへ転送されます。

    スコットランドは対象外です。スコットランドでの被害は Police Scotland(101) に通報してください。

    お金を失っていなくても通報する

    「気づいて送金しなかった」場合でも通報の価値があります。手口の情報が集まることで、同じ詐欺の被害が抑えられます。被害額ゼロでも受け付けています。

    999 を使う場面

    詐欺は原則として 0300 123 2040 ですが、いま危険がある場合は 999 です。

    • 詐欺犯が自宅に来ている、来ようとしている
    • 現金を取りに来ると言われている(courier fraud)
    • 身の安全に不安がある

    この場合はためらわず 999 にかけてください。

    補足

    通報しても、返金は自動的には始まりません

    Report Fraud への通報と、銀行への返金請求は別の手続きです。通報したから返金される、ということはありません。

    返金を動かすのは銀行への連絡です。通報を先にして安心してしまい、銀行への連絡が遅れるのが最も避けたい流れなので、順番は「銀行 → 通報」で覚えてください。

    5. そのあとにやること

    二次被害を防ぐ

    詐欺の被害に遭った人の情報は、「だまされやすい人のリスト」として使い回されることがあります。一度被害に遭うと、別の手口で再び接触されることがあるので、後始末が重要です。

    情報を渡してしまった場合

    渡したものやること
    カード番号カードの再発行
    オンラインバンキングのパスワード変更。他のサービスで同じものを使っていればそちらも
    住所・生年月日などの個人情報信用情報機関への警告登録を検討
    端末に何かをインストールさせられた端末の初期化を検討

    遠隔操作アプリを入れさせられた場合は特に注意が必要です。銀行アプリの操作を見られている可能性があるので、別の端末から手続きしてください。

    「返金してあげる」という二次詐欺

    被害者に対して「返金手続きを代行します」と接触してくる詐欺があります。手数料を求められたら詐欺です。

    正規の返金は銀行と金融オンブズマンを通じて行われ、どちらも被害者に費用を請求しません。

    記録を残す

    返金の交渉が長引くことがあるので、時系列のメモを作っておくと有利です。

    • いつ、誰から、どんな連絡があったか
    • いつ、いくら送金したか
    • いつ銀行に連絡し、誰が何と答えたか

    ひとりで抱えない

    詐欺の被害は、金銭以上に精神的な打撃が大きいものです。Report Fraud には被害者向けの支援窓口があり、Victim Support など無料で相談できる団体もあります。

    「自分が悪かった」と考えて誰にも言わないことが、最も回復を遅らせます。

    よくある質問

    参考・公式情報

    料金・時刻・制度は変更されます。本記事は2026年8月時点の情報です。渡航前に各公式サイトで最新情報をご確認ください。

    本記事は手続きの流れを説明する情報提供であり、法的な助言ではありません。 警察・大使館・保険会社の運用や手数料は改定されることがあります (領事手数料は 毎年4月1日 に改定されます)。実際に手続きをする前に、各機関の公式ページで最新の 必要書類と金額をご確認ください。事件性のある被害や、身の安全に関わる 状況では、まず警察に相談してください。

    ほかのトラブル対応ガイド

    Theftスリ・ひったくりに遭った直後にやること最初の30分で決まります。カードを止める順番、スマホを遠隔ロックする手順、そして絶対にやってはいけない「位置情報を頼りに自分で取り返しに行く」こと。
    Passportパスポートを失くした・盗まれた帰国できなくなるわけではありません。警察の届出証明を取り、大使館で「帰国のための渡航書」を出してもらう道があります。必要書類と順番を、締切から逆算して。
    Lost Property落とし物を探す(地下鉄・バス・タクシー)盗まれたのではなく置き忘れたなら、探す場所は警察ではありません。TfL の遺失物センターは保管3ヶ月。バスは最初の3日だけ営業所に直接聞くほうが早い、という分岐まで。
    Stalkingつきまとい・ストーカー被害に遭ったら我慢して耐えるものではありません。通報するか決める前から相談できる専門窓口があります。声を出せないまま999を呼ぶ方法と、安全を確保してから記録を取る順番。
    Crime Reference警察に届け出る(crime reference number)物が戻らなくても届け出る理由があります。保険請求も、大使館の渡航書も、この番号がないと進みません。999 と 101 とオンラインの使い分けを、はっきりさせます。
    Insurance保険に請求する(旅行保険・カード付帯)請求が通らない理由は、補償の中身ではなく手続きの順番にあります。受理番号を待つと期限を過ぎる、という落とし穴と、免責額を先に計算すべき理由。
    Embassy大使館にできること・できないことパスポートの発給と領事面会はできます。弁護士費用の負担と裁判の通訳はできません。線を先に知っておくほうが、いざというとき確実に頼れます。