イギリスの詐欺に遭ったら|銀行の返金義務と159の使い方
Scams in the UK: Getting Your Money Back
自分で振り込んでしまった場合でも、諦めるのはまだ早いです。2024年10月7日から、だまされて送金した被害にも銀行の返金義務が課されました。上限£85,000、原則5営業日以内。まず銀行に連絡してください。
いま危険な状況なら
身に危険がある、犯人がまだその場にいる、けがをしたなら 999。 すでに終わったことの通報は 101(緊急でない警察の窓口)。銀行を名乗る不審な連絡は、いったん切って 159 にかけ直します。
まず、この順番でやってください
- 1
いますぐ銀行に連絡して、送金の停止と口座の保護を頼む
アプリの凍結機能か、カード裏の番号へ。銀行を名乗る電話を受けた直後なら、その電話は切って 159 にかけ直してください。
- 2
今日中返金を正式に請求する(諦めない)
だまされて自分で送金した場合でも、2024年10月7日以降の取引なら銀行に返金義務があります。「自分で振り込んだので対象外」と自己判断しないこと。
- 3
今日中やり取りを保存する
SMS・メール・チャット・振込先の口座情報・相手の電話番号。消さずにスクリーンショットを取ってください。返金審査の材料になります。
- 4
数日以内Report Fraud に通報する
電話 0300 123 2040、またはサイトから。お金を失っていない場合でも通報の価値があります。
- 5
返金されなければ金融オンブズマンに申し立てる
銀行の判断に納得できない場合、無料で審査してもらえます。銀行の最終回答から6ヶ月以内が期限です。
要点
- 銀行を名乗る不審な連絡
- 切って 159 にかけ直す
- だまされて送金した
- 返金の対象になりえます(上限£85,000)
- 返金までの期間
- 原則5営業日(調査が要る場合は最長35営業日)
- 身に覚えのない引き落とし
- 13ヶ月以内に申し出れば返金対象
- 通報先
- Report Fraud(0300 123 2040)
- 納得できないとき
- 金融オンブズマン(無料)
詐欺の被害で最もつらいのは、金額そのものより「自分が愚かだったからだ」と思ってしまうことです。そう思わせる手口だから成功しているのであって、引っかかったことは能力の問題ではありません。
とくに外国で暮らしていると、制度への土地勘がないぶん判断材料が足りません。「英国の銀行はこういう連絡をするものなのかもしれない」と思わせられたら、それで成立してしまいます。母語でない言語で緊迫した電話を受ければ、なおさらです。
そのうえで、知っておくと結果が変わる制度が英国にはあります。
ひとつは 159。銀行を名乗る連絡を受けたとき、切ってかけ直す先です。もうひとつが、2024年10月7日に始まった返金の義務化。だまされて自分で送金した被害でも、銀行が返金しなければならなくなりました。
日本の常識だと「自分で振り込んだ以上どうにもならない」と考えがちです。英国ではそうではありません。まず銀行に連絡してください。
目次
1. 159 にかけ直す
銀行を名乗る連絡を受けたときの、唯一の正解
銀行や警察を名乗る電話・SMSを受けたら、その連絡先には一切かけ直さないでください。SMSに書かれた番号もリンクも、詐欺犯が用意したものです。
正解は、いったん切って 159 にかけることです。これは主要銀行が参加している短縮番号で、自分の銀行の詐欺対応窓口に安全につながります。
かけ直すときの注意
同じ端末ですぐかけ直すと、相手が回線を保持していることがあります。かけたつもりが同じ詐欺犯につながる、という手口です。
- 可能なら別の端末を使う
- それが無理なら、10分ほど待ってからかける
見分ける必要はありません
「本物かどうか見分ける」ことを目指さないでください。プロが作った偽SMSは本物と区別がつきませんし、発信番号は偽装できます。銀行の正規の番号が表示されていても、それは証拠になりません。
見分けるのではなく、必ずかけ直す。これだけで手口の大半が無効になります。
覚えておく3つの原則
- 銀行が暗証番号やパスワードの全体を聞くことはありません
- 銀行が「安全な口座に資金を移してください」と言うことはありません
- 警察が「捜査協力のためにお金を引き出してください」と言うことはありません
ひとつでも当てはまったら、その時点で詐欺が確定します。失礼を気にせず切ってください。
実務メモ
- 159 は無料ではなく通常の通話料がかかるが、多くのプランで通話パッケージに含まれる
- 参加していない銀行もあるので、つながらなければカード裏面の番号にかける
- 家族が高齢の場合、この番号の存在を共有しておくと効果が大きい
注意
急かされたら、それが合図です
詐欺に共通するのは時間的な圧迫です。「いますぐ手続きしないと口座が凍結される」「30分以内に対応が必要」——正規の金融機関がこういう迫り方をすることはありません。
急かされていると感じたら、それ自体が詐欺の証拠だと考えてください。本物の用件なら、あとからかけ直しても何も失われません。
一度電話を切って冷静になる時間を取ることが、最も効果のある対策です。
2. だまされて送金した場合の返金
「自分で振り込んだから無理」ではありません
英国では 2024年10月7日 から、いわゆる APP詐欺(Authorised Push Payment=だまされて自分で送金してしまう詐欺)について、銀行に返金の義務が課されています。
これは日本の制度にない考え方で、知らないまま諦めてしまう人が多い部分です。
制度の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 2024年10月7日以降の送金(Faster Payments・CHAPS) |
| 上限 | £85,000 |
| 期限 | 原則5営業日以内(調査が要る場合は最長35営業日) |
| 自己負担 | 銀行が最大 £100 を差し引ける場合があります |
対象になる詐欺の型は幅広く、偽の請求、なりすまし、投資詐欺、恋愛詐欺、購入詐欺などが含まれます。
断られることもあります
無条件ではありません。銀行が「利用者に重大な不注意があった」と証明できる場合や、被害者が詐欺に加担していた場合は、返金を拒めます。
ただし立証する責任は銀行の側にあります。「不注意だったのでは」と言われて引き下がる必要はありません。
身に覚えのない引き落とし(不正利用)
自分で送金したのではなく、カードや口座を勝手に使われた場合は別のルールです。こちらはより強く保護されています。
- 13ヶ月以内に申し出れば返金の対象
- 原則として翌営業日の終わりまでに返金される
- カードの紛失・盗難に伴う負担は最大 £35 まで
クレジットカードなら Section 75
クレジットカードで £100 を超える買い物をして商品が届かない、あるいは業者が倒産した場合は、Section 75 によりカード会社が販売業者と連帯して責任を負います。
デビットカードの場合は Section 75 の対象外ですが、チャージバックを申請できることがあります。
実務メモ
- 銀行への連絡は電話とアプリのチャット、どちらでもよいが、記録が残る方法を選ぶ
- 「返金を正式に請求します」と明示的に伝える。相談ではなく請求として扱わせる
- 断られた場合は、その理由を書面で出すよう求める。オンブズマンに出すときに使う
ヒント
納得できなければ、金融オンブズマンへ
銀行が返金を拒否し、その判断に納得できない場合、Financial Ombudsman Service(金融オンブズマン) に無料で申し立てられます。
- 費用は無料
- まず銀行に苦情を出し、その最終回答(final response)から6ヶ月以内に申し立てる
- 銀行が8週間以内に回答しない場合も申し立てられる
第三者機関の判断で覆ることは実際にあります。銀行の最初の回答が最終結論ではありません。
3. よくある手口
在英日本人が実際に遭っているもの
銀行・配送業者を名乗るSMS
「口座が停止されました」「関税の支払いが必要です」というSMSにリンクが貼られ、開くと本物そっくりの画面が出ます。Royal Mail や DPD を名乗る配送料の請求は特に多く、金額が小さい(数ポンド)ぶん警戒が緩みます。
狙いは少額の決済ではなく、入力させたカード情報です。
偽の警察・入国管理
「あなたの身分証が犯罪に使われている」「ビザに問題がある」と電話をかけ、不安を煽って送金させます。在留資格に不安のある人ほど効く手口で、留学生や新規渡英者が狙われます。
英国の警察や入国管理が、電話で罰金の支払いを求めることはありません。
部屋探しの前金詐欺
内見の前に「保証のためデポジットを送ってほしい」と言われるもの。物件の写真は実在する別の物件から流用されています。内見前に送金しないが原則です。
住まい探しの詐欺は住まい探しガイドでも扱っています。
偽の求人・仕事の斡旋
「登録料」「ビザ手続き費用」を先に求める求人。正規の雇用主が求職者に費用を請求することはありません。
両替・現金の受け渡し
路上で好条件の両替を持ちかけられるもの。渡されるのは偽札か、金額が足りません。両替は必ず正規の店舗で。
電話を切らせない手口
「このまま切らずに銀行に確認してください」と言われるパターン。回線が保持され、銀行にかけたつもりが詐欺犯につながります。必ず一度切って、別の端末か10分後に 159 へ。
実務メモ
- リンクは踏まず、公式アプリを自分で開いて確認する習慣にする
- 「知らない番号からの着信は出ない」と決めてしまうのも有効。用件があれば留守電に残る
- 被害に遭った話を周囲に共有する。恥ずかしがると同じ手口が広がる
4. 通報する
Action Fraud は Report Fraud に変わりました
詐欺の通報先は、通常の窃盗とは別です。イングランド・ウェールズ・北アイルランドでは Report Fraud が窓口になります。
- 電話:0300 123 2040
- サイト:https://www.reportfraud.police.uk/
名称の変更について
2025年12月4日に、それまでの Action Fraud が Report Fraud に置き換わりました(運営は City of London Police)。
日本語で書かれた情報はまだ旧名のものが多いので、検索で Action Fraud に行き着いても問題ありません。電話番号は同じで、旧サイトも新サイトへ転送されます。
スコットランドは対象外です。スコットランドでの被害は Police Scotland(101) に通報してください。
お金を失っていなくても通報する
「気づいて送金しなかった」場合でも通報の価値があります。手口の情報が集まることで、同じ詐欺の被害が抑えられます。被害額ゼロでも受け付けています。
999 を使う場面
詐欺は原則として 0300 123 2040 ですが、いま危険がある場合は 999 です。
- 詐欺犯が自宅に来ている、来ようとしている
- 現金を取りに来ると言われている(courier fraud)
- 身の安全に不安がある
この場合はためらわず 999 にかけてください。
補足
通報しても、返金は自動的には始まりません
Report Fraud への通報と、銀行への返金請求は別の手続きです。通報したから返金される、ということはありません。
返金を動かすのは銀行への連絡です。通報を先にして安心してしまい、銀行への連絡が遅れるのが最も避けたい流れなので、順番は「銀行 → 通報」で覚えてください。
5. そのあとにやること
二次被害を防ぐ
詐欺の被害に遭った人の情報は、「だまされやすい人のリスト」として使い回されることがあります。一度被害に遭うと、別の手口で再び接触されることがあるので、後始末が重要です。
情報を渡してしまった場合
| 渡したもの | やること |
|---|---|
| カード番号 | カードの再発行 |
| オンラインバンキングのパスワード | 変更。他のサービスで同じものを使っていればそちらも |
| 住所・生年月日などの個人情報 | 信用情報機関への警告登録を検討 |
| 端末に何かをインストールさせられた | 端末の初期化を検討 |
遠隔操作アプリを入れさせられた場合は特に注意が必要です。銀行アプリの操作を見られている可能性があるので、別の端末から手続きしてください。
「返金してあげる」という二次詐欺
被害者に対して「返金手続きを代行します」と接触してくる詐欺があります。手数料を求められたら詐欺です。
正規の返金は銀行と金融オンブズマンを通じて行われ、どちらも被害者に費用を請求しません。
記録を残す
返金の交渉が長引くことがあるので、時系列のメモを作っておくと有利です。
- いつ、誰から、どんな連絡があったか
- いつ、いくら送金したか
- いつ銀行に連絡し、誰が何と答えたか
ひとりで抱えない
詐欺の被害は、金銭以上に精神的な打撃が大きいものです。Report Fraud には被害者向けの支援窓口があり、Victim Support など無料で相談できる団体もあります。
「自分が悪かった」と考えて誰にも言わないことが、最も回復を遅らせます。
よくある質問
参考・公式情報
- Metropolitan Police - Report a crime
- Metropolitan Police - Report lost or found property
- Transport for London - Lost property
- Stop Scams UK - STOP, HANG UP, CALL 159
- Report Fraud - UK's home for reporting cyber crime & fraud
- City of London Police - Report Fraud launches
- FCA - Fraudulent payments(返金ルール)
- 外務省 - 海外安全ホームページ
- 在英国日本国大使館 - 旅券(パスポート)
- 在英国日本国大使館 - 緊急連絡先
料金・時刻・制度は変更されます。本記事は2026年8月時点の情報です。渡航前に各公式サイトで最新情報をご確認ください。
本記事は手続きの流れを説明する情報提供であり、法的な助言ではありません。 警察・大使館・保険会社の運用や手数料は改定されることがあります (領事手数料は 毎年4月1日 に改定されます)。実際に手続きをする前に、各機関の公式ページで最新の 必要書類と金額をご確認ください。事件性のある被害や、身の安全に関わる 状況では、まず警察に相談してください。