ロンドンでスリ・ひったくりに遭ったら|最初の30分にやること

    What to Do Right After a Theft in London

    盗まれたものは、残念ながらほとんど戻ってきません。それでも最初の30分の動き方で、被害がここで止まるか、この先さらに膨らむかが決まります。順番はひとつだけ覚えてください。カードを止める、スマホを遠隔でロックする、警察に届け出る。この順です。

    2026年8月時点の情報

    いま危険な状況なら

    身に危険がある、犯人がまだその場にいる、けがをしたなら 999。 すでに終わったことの通報は 101(緊急でない警察の窓口)。銀行を名乗る不審な連絡は、いったん切って 159 にかけ直します。

    まず、この順番でやってください

    1. 1

      5分以内カードを止める

      銀行アプリの「カードを凍結」が最速です。アプリが使えないなら、誰かのスマホを借りて銀行に電話します。非接触決済は暗証番号なしで連続して使われます。

    2. 2

      15分以内スマホを遠隔でロックし、紛失モードにする

      iPhone は iCloud.com、Android は Google の「デバイスを探す」から。パソコンでも他人の端末のブラウザでもできます。消去は最後の手段で、まずロックです。

    3. 3

      30分以内携帯会社に連絡して SIM を止める

      SIM が生きていると、SMS の認証コードを受け取られて銀行やメールに入られる恐れがあります。カードを止めただけでは足りません。

    4. 4

      今日中警察に届け出て crime reference number を受け取る

      犯人がその場にいる・けがをしたなら 999。すでに終わったことなら 101 かオンラインで。保険請求にこの番号が要ります。

    5. 5

      数日以内保険会社に連絡する

      クレジットカード付帯の保険も含めて確認します。多くの保険が「被害から◯日以内の通報」を条件にしているので、後回しにすると請求できなくなります。

    要点

    まず止めるもの
    銀行カード → スマホ → SIM の順
    警察への通報先
    進行中なら999、終わったことなら101かオンライン
    通報の費用
    無料
    保険請求に必要
    crime reference number(警察の受理番号)
    銀行を名乗る不審な電話
    いったん切って 159 にかけ直す
    絶対にやらないこと
    位置情報を頼りに自分で取り返しに行く

    ロンドンは、凶悪犯罪に巻き込まれる可能性という意味では安全な都市です。ただし窃盗、とくにスマートフォンのひったくりは日常的に起きています。電動バイクで背後から近づき、走りながら手元の端末をもぎ取っていく手口が典型です。抵抗する間もなく、数秒で終わります。

    被害に遭った直後、多くの人が最初にやってしまうのが「探す」ことです。周りを見回し、来た道を戻り、地面を確認する。気持ちはわかりますが、その15分が最も高くつきます

    理由は非接触決済です。英国のカードは、少額なら暗証番号なしで連続して使えます。盗んだ側はそれを知っていて、すぐ近くの店で試します。つまり盗まれた瞬間から、被害額は時間に比例して増え続けている。まず止めるべきは、失われた物ではなく出血のほうです。

    この記事は、その止血の順番を書いたものです。

    1. カードを止める(最優先)

    非接触決済は暗証番号なしで連続して使える

    銀行アプリの「カードを凍結(freeze)」が最速です。電話より速く、待たされません。Monzo、Starling、Revolut、HSBC、Barclays、Lloyds——主要な銀行はどれもアプリ内にこの機能を持っています。

    スマホごと盗まれてアプリが使えない場合は、誰かのスマホを借りて銀行に電話します。カフェの店員でも、駅のスタッフでも、事情を話せばまず貸してくれます。遠慮する場面ではありません。

    凍結と解約の違い

    操作効果いつ使うか
    凍結(freeze)一時停止。あとで解除できる「落としたかも」の段階
    紛失・盗難の届出カード番号が無効になり再発行盗まれたと確定したとき

    迷ったらまず凍結です。あとから戻せる操作を先にやるのが原則で、出てきたら解除すればいいだけです。

    日本のカードも止める

    英国の口座だけ止めて安心してしまう人がいますが、財布ごと盗まれたなら日本のカードも同時に止めてください。日本のカード会社は海外からの緊急連絡窓口を持っていて、多くは24時間・コレクトコールで受け付けています。番号はカード裏面にありますが、そのカードが手元にない状況なので、渡英前に番号を控えておくのが本当は正解です。

    実務メモ

    • 銀行アプリの凍結機能の場所を、平時のうちに一度開いて確認しておく
    • 日本のカード会社の海外緊急連絡先を、紙かクラウドのメモに控えておく
    • Apple Pay / Google Pay に入れたカードは、端末をロックすれば同時に止まる

    注意

    「銀行です」という電話がかかってきたら、それは詐欺かもしれません

    盗難の直後は、詐欺の側にとって狙いやすいタイミングです。混乱していて、銀行からの連絡を待っているからです。

    銀行が電話で暗証番号やパスワードの全体を聞くことはありません。また「安全な口座に資金を移してください」と言うこともありません。これは詐欺の典型的な文句です。

    不審に思ったら、いったん電話を切ってください。そのうえで 159 にかけ直します。これは主要銀行が参加している短縮番号で、自分の銀行の詐欺対応窓口に安全につながります。かけ直すときは、できれば別の端末を使ってください(同じ回線が保持されている場合があるため、同じ端末なら10分ほど待ってからかけます)。

    2. スマホを遠隔でロックする

    消去より先に、まずロックと紛失モード

    スマホが盗まれた場合、失うのは端末という物ではありません。その中にある認証情報です。メール、銀行アプリ、SMS の認証コード。ここを塞ぐのが本題です。

    手順

    • iPhone: 別の端末やパソコンのブラウザで iCloud.com にサインイン →「探す」→ 該当端末 →「紛失としてマーク」
    • Android: google.com/android/find にサインイン → 該当端末 →「デバイスを保護」

    紛失モードにすると、画面がロックされ、連絡先メッセージを表示できます。Apple Pay / Google Pay も同時に無効化されます。

    消去は最後にする

    「データを消したい」と思うのは自然ですが、遠隔消去すると位置情報の追跡もできなくなります。警察に届け出るときに最後の位置情報が手がかりになることがあるので、ロックを先にして、消去は諦めがついてからで構いません。

    SIM を止める

    端末をロックしても、SIM カードが生きていれば抜き取って別の端末で使えます。SMS の認証コードを受け取られると、銀行やメールアカウントに入られる恐れがあります。

    携帯会社に連絡して SIM を停止してください。eSIM の場合も同じです。日本の番号を海外で使っている場合は、日本のキャリアに連絡します。

    実務メモ

    • 「探す」機能は平時に有効化しておかないと、盗まれてから有効にはできない
    • SMS 以外の二段階認証(認証アプリ)を使っていると、端末を失ったときの復旧が難しくなるので、回復コードを別の場所に保管しておく
    • パソコンを持っていない旅行者は、ホテルのフロントや図書館の端末からでもアクセスできる

    注意

    位置情報が表示されても、自分で取りに行かないでください

    「探す」で端末の位置が地図に出ると、取り返しに行きたくなります。これは絶対にやめてください

    盗難品が集められている場所である可能性が高く、相手は複数で、刃物を持っていることもあります。物を取り返そうとして重傷を負う、あるいは命を落とす事例が実際に起きています。

    位置情報は警察に伝える情報です。自分で使う情報ではありません。通報時に「端末の位置がここに表示されている」と伝えてください。

    3. 警察に届け出る

    物は戻らなくても、番号は要る

    「届け出ても戻ってこないなら意味がない」と考えて、通報を省く人がいます。これは後で必ず困ります。

    理由は単純で、保険請求に警察の受理番号(crime reference number)が要るからです。海外旅行保険も、クレジットカード付帯の保険も、この番号がない請求は受け付けません。パスポートを一緒に盗まれた場合は、大使館での手続きにも警察の届出証明が必要になります。

    どこに連絡するか

    状況連絡先
    犯人がまだその場にいる、けがをした、身に危険がある999
    すでに終わった盗難の通報101 またはオンライン
    詐欺の被害0300 123 2040(Report Fraud)

    日本語圏で知られていないのが 101 の存在です。「盗まれた=999」と思って電話し、緊急ではないと判断されて話が進まない、という経験談をよく聞きます。すでに終わったことの通報は 101、これが正しい入口です。

    通報は無料です

    警察への通報に費用はかかりません。オンライン・電話・警察署の窓口、どの方法でも無料です。「番号を取るのにお金がかかる」という誤解が広まっていますが、事実ではありません。

    オンラインで通報した場合、警察から連絡が来るまでの目安は24時間です。crime reference number は、報告が正式な crime report として受理された段階で発行されます。

    詳しい手順は、警察に届け出る(crime reference number)にまとめています。

    実務メモ

    • 通報の前に、盗まれた物のリストとおおよその金額をメモしておくと手続きが早い
    • 英語に不安があれば、通訳の手配を頼める。費用は自己負担ではない
    • crime reference number は控えを取り、写真に撮ってクラウドに保存しておく

    4. 保険に請求する

    期限のあるものから順に片づける

    保険には通報期限があります。「被害から24時間以内に警察に届け出ること」「◯日以内に保険会社に連絡すること」といった条件が付いているのが一般的で、これを過ぎると支払われません。

    確認する保険は1つではない

    • 海外旅行保険(旅行者の場合)
    • クレジットカード付帯保険(そのカードで旅行代金を払っていれば対象になることがある)
    • 家財保険 / contents insurance(在住者の場合。自宅外での携行品も対象のことがある)
    • 携帯電話の保険(端末単体で入っているもの)

    複数に入っている場合、同じ損害を二重に請求することはできませんが、どれが最も条件がよいかを比べる価値はあります。

    用意するもの

    書類どこで手に入るか
    crime reference number警察
    被害品のリストと金額自分で作成
    購入証明(レシート・注文履歴)メールの購入履歴、クレカ明細
    パスポートの記録旅行者の場合、渡航の証明として

    購入証明は、メールの注文履歴を検索するのが最も早いことが多いです。「Amazon 注文」「領収書」などで受信箱を検索してください。

    免責額に注意

    保険には免責額(excess)があります。免責が £100 で、盗まれたのが £80 の財布なら、請求しても支払いはゼロです。手間に見合うかを先に計算してください

    実務メモ

    • 被害品リストは、思い出した順ではなく金額の大きい順に書くと保険会社とのやり取りが早い
    • 現金の盗難は補償対象外か、上限が非常に低いことが多い
    • 在住者は、家財保険に「携行品(personal possessions)」の特約が付いているか確認する

    5. 次に同じ目に遭わないために

    被害の大半は、3つの習慣で防げる

    対策は無数にありますが、実効性が高いものは多くありません。ロンドンの窃盗の手口は限られているので、そこだけ塞げば大半は防げます

    効果の大きい3つ

    1. 歩きながらスマホを見ない(とくに車道側)。電動バイクによるひったくりは、手に持っている端末を狙います。立ち止まって建物側で見るだけで、狙われる確率が大きく変わります
    2. 飲食店でテーブルにスマホを置かない、椅子の背にバッグを掛けない。地図やメニューの上にスマホを置き、それごと持ち去る手口があります
    3. リュックは混雑した場所では前に抱える。地下鉄の車内、オックスフォード通り、マーケット

    分散して持つ

    財布ひとつに全部入れていると、それを失った時点で詰みます。カードは2枚に分け、別の場所に入れる。パスポートの原本は宿の金庫に置き、コピーか写真を持ち歩く。現金も分散する。

    これは盗難を防ぐ対策ではなく、盗まれたあとの被害を小さくする対策です。防ぎきれない前提に立つほうが現実的です。

    平時にやっておくこと

    • スマホの「探す」機能を有効にする
    • 銀行アプリの凍結機能の場所を確認する
    • 日本のカード会社の緊急連絡先を控える
    • パスポートの写真を撮ってクラウドに保存する
    • 外務省のたびレジに登録する(在住者は在留届)

    どれも5分で終わりますが、盗まれてからでは一つもできません

    ヒント

    予防の詳細は旅の実用情報にまとめています

    狙われやすい場所、具体的な手口、無認可ミニキャブの見分け方などは、ロンドン旅行の実用情報の「治安とスリ対策」で詳しく扱っています。

    この記事は「起きてしまったあと」に絞っているので、これから渡英する人はそちらを先に読んでください。

    よくある質問

    参考・公式情報

    料金・時刻・制度は変更されます。本記事は2026年8月時点の情報です。渡航前に各公式サイトで最新情報をご確認ください。

    本記事は手続きの流れを説明する情報提供であり、法的な助言ではありません。 警察・大使館・保険会社の運用や手数料は改定されることがあります (領事手数料は 毎年4月1日 に改定されます)。実際に手続きをする前に、各機関の公式ページで最新の 必要書類と金額をご確認ください。事件性のある被害や、身の安全に関わる 状況では、まず警察に相談してください。

    ほかのトラブル対応ガイド

    Passportパスポートを失くした・盗まれた帰国できなくなるわけではありません。警察の届出証明を取り、大使館で「帰国のための渡航書」を出してもらう道があります。必要書類と順番を、締切から逆算して。
    Lost Property落とし物を探す(地下鉄・バス・タクシー)盗まれたのではなく置き忘れたなら、探す場所は警察ではありません。TfL の遺失物センターは保管3ヶ月。バスは最初の3日だけ営業所に直接聞くほうが早い、という分岐まで。
    Stalkingつきまとい・ストーカー被害に遭ったら我慢して耐えるものではありません。通報するか決める前から相談できる専門窓口があります。声を出せないまま999を呼ぶ方法と、安全を確保してから記録を取る順番。
    Scams詐欺に遭ったら(銀行の返金義務)自分で振り込んでしまっても、諦めるのはまだ早い。2024年10月から銀行に返金義務が課されました。上限£85,000。そして159という、知らないと損をする番号の話。
    Crime Reference警察に届け出る(crime reference number)物が戻らなくても届け出る理由があります。保険請求も、大使館の渡航書も、この番号がないと進みません。999 と 101 とオンラインの使い分けを、はっきりさせます。
    Insurance保険に請求する(旅行保険・カード付帯)請求が通らない理由は、補償の中身ではなく手続きの順番にあります。受理番号を待つと期限を過ぎる、という落とし穴と、免責額を先に計算すべき理由。
    Embassy大使館にできること・できないことパスポートの発給と領事面会はできます。弁護士費用の負担と裁判の通訳はできません。線を先に知っておくほうが、いざというとき確実に頼れます。