つきまとい・ストーカー被害に遭ったら|イギリスでの相談先と対処
Stalking and Harassment: Getting Help in the UK
まず、我慢して耐える必要はありません。イギリスにはストーカー被害の専門窓口があり、警察に通報するかどうかを決める前の段階から相談できます。話せない状況で 999 を呼ぶ方法もあります。安全の確保が最優先で、記録を残すのはその次です。
いま危険な状況なら
身に危険がある、犯人がまだその場にいる、けがをしたなら 999。 すでに終わったことの通報は 101(緊急でない警察の窓口)。銀行を名乗る不審な連絡は、いったん切って 159 にかけ直します。
まず、この順番でやってください
- 1
いま危険なら999 に電話する
声を出せない状況なら、携帯からかけて自動音声のあとに 55 を押します。押さないと通話は切られます。詳しくは本文で説明します。
- 2
まずその場の安全を確保する
人のいる場所、店の中、駅の職員のいる場所へ。自宅にいて不安なら、信頼できる人に連絡して一緒にいてもらうことを考えてください。
- 3
早い段階で専門の窓口に相談する(通報の前でも構いません)
National Stalking Helpline(0808 802 0300)は、警察に届けるかどうか迷っている段階から相談できます。ひとりで判断しなくて大丈夫です。
- 4
できるとき起きたことを記録に残す
日時・場所・内容。メッセージや着信履歴は消さずに保存します。ただし記録のために危険な行動を取らないでください。
- 5
準備ができたら警察に相談する(101 またはオンライン)
ストーカー行為とハラスメントは英国では犯罪です。相談の段階でも受け付けています。
要点
- いま危険
- 999(話せなければ携帯から 55)
- 専門の相談窓口
- National Stalking Helpline(0808 802 0300・無料)
- 24時間の窓口
- Victim Support(0808 168 9111)
- 警察への相談
- 101 またはオンライン
- 法的な位置づけ
- ストーカー行為・ハラスメントは犯罪です
- してほしくないこと
- 相手に直接警告する・ひとりで抱え込む
つきまといや繰り返しの嫌がらせは、一つひとつの出来事が小さく見えることがあります。メッセージが来る、たまたま同じ場所にいる、SNSを見られている。単体では「気のせいかもしれない」と思えてしまう。
だからこそ被害を受けている人ほど、これは相談していいことなのかと迷います。そして迷っているうちに、記録も取らないまま時間が過ぎます。
先に書いておきます。イギリスではストーカー行為もハラスメントも犯罪です。そして通報するかどうかを決める前の段階から相談できる専門の窓口があり、無料です。
この記事は、その相談先につながるまでの道筋と、安全を確保する方法を中心に書いています。順番として、安全の確保 → 相談 → 記録 → 通報を想定しています。記録より安全が先です。
なお、相手に直接警告する、話し合って解決するといった対処はこの記事では扱いません。状況を悪化させることがあり、何が安全かは個別の事情によって大きく変わるためです。そこは専門の窓口と一緒に決めてください。
目次
1. 声を出せないまま 999 を呼ぶ
知っているかどうかで結果が変わる仕組み
相手が近くにいる、電話しているのを気づかれたくない——そういう状況で 999 を呼ぶ方法があります。Silent Solution と呼ばれる仕組みです。
手順(携帯電話から)
- 999 にかける
- オペレーターにつながる。話せるなら、ささやき声でもいいので話すのが最善です
- 話せない場合、咳をする・キーを叩くなどで応答を求められます
- それもできない場合、約20秒の自動音声が流れます
- 音声のあとに 55 を押すと、警察につながります
誤解されている2点
ここが最も重要です。
「無言でかければ警察が来る」——来ません。 55 を押さなければ、通話は切られます。無言のままでは警察に転送されません。
「55 を押せば居場所が分かる」——分かりません。 55 を押しても、警察があなたの位置を追跡できるわけではありません。可能なら、状況や場所を伝える手段(小さな音、短い単語)を探してください。
この2つは、実際に誤解したまま亡くなった事例をきっかけに、警察側が繰り返し周知しているものです。
固定電話からの場合
固定電話は Silent Solution の対象外です。55 の仕組みは使いません。
固定電話からの 999 で、応答がない・緊急かどうか判断できない場合は、警察のオペレーターに転送されます。また受話器を置いても、約45秒は回線が保たれます。その間に取り直せば、警察につながります。
固定電話では発信元の情報が自動的に伝わるため、携帯とは扱いが違います。
注意
話せるなら、話してください
55 は「どうしても声を出せない」ときの最後の手段です。
ささやき声でも、単語だけでも、話せるなら話すほうが確実に助けにつながります。オペレーターは「はい/いいえ」で答えられる質問をしてくれるので、短い返事だけでも状況を伝えられます。
咳をする、受話器を叩く、といった応答も有効です。無音のままにしないでください。
2. 専門の窓口に相談する
警察に届けるかどうかは、あとで決めて構いません
通報するほどのことなのか分からない——この段階で相談できる窓口があります。むしろ、そこを一緒に整理するための窓口です。
National Stalking Helpline
- 電話:0808 802 0300
- 対応時間:月・水 9:30〜20:00/火・木・金 9:30〜16:00
- ストーカー被害の専門窓口。安全計画や法的な選択肢の相談に乗ってくれます。通話料無料。
- https://www.suzylamplugh.org/
Paladin(National Stalking Advocacy Service)
- 電話:020 3866 4107
- 対応時間:平日(時間は公式サイトで確認)
- 危険度が高い事案の伴走支援。専門の担当者(ISAC)が付き、警察や裁判所とのやり取りを支えます。
- https://www.paladinservice.co.uk/
Victim Support
- 電話:0808 168 9111
- 対応時間:24時間・年中無休
- 犯罪被害全般の相談窓口。警察に通報していなくても使えます。
- https://www.victimsupport.org.uk/
National Domestic Abuse Helpline
- 電話:0808 2000 247
- 対応時間:24時間・年中無休
- 元パートナーや同居していた相手が関わる場合。通訳の手配を頼めます。
- https://www.nationaldahelpline.org.uk/
どこにかければいいか
迷ったら、National Stalking Helpline から始めてください。ストーカー被害を専門に扱っていて、危険度の見立てと安全計画まで相談できます。
対応時間外で、いま話を聞いてほしい場合は Victim Support(0808 168 9111)が24時間対応しています。
相手が元パートナーや同居していた人である場合は、National Domestic Abuse Helpline(0808 2000 247)も選択肢になります。こちらも24時間で、通訳の手配を頼めます。
英語での相談が不安な場合
通訳の手配を頼める窓口があります。電話がつながったら「I need a Japanese interpreter」と伝えてください。
また、電話ではなくフォームやメールで相談を受け付けている団体もあります。文章のほうが伝えやすければ、そちらを使って構いません。
相談したら通報させられるのでは、という不安
相談は通報ではありません。専門の窓口は、あなたの意思を尊重したうえで選択肢を示す立場です。「まだ警察には言いたくない」という前提でも相談できます。
ただし、命に関わる危険があると判断された場合の対応は団体の方針によります。気になる場合は、相談の冒頭でその点を確認して構いません。
実務メモ
- 対応時間は変わることがあるので、公式サイトで確認してからかけると確実
- 電話が難しければ、フォームやメールでの相談を受け付けている団体もある
- 大学や職場にハラスメントの相談窓口があれば、そちらも並行して使える
3. 記録を残す
ただし、記録のために危険を冒さないこと
一つひとつは小さく見える出来事も、並べると全体像が見えます。警察や専門窓口が危険度を判断するとき、この記録が根拠になります。
何を残すか
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 日時 | いつ起きたか(おおよそで構いません) |
| 場所 | どこで |
| 何があったか | 事実を淡々と。感じたことも書いてよい |
| 証拠 | メッセージ、着信履歴、写真、目撃者 |
消さないでください
不快なメッセージやSNSの投稿は、見たくなくても消さないでください。スクリーンショットを撮り、元のデータも残しておきます。
ブロックする場合も、ブロックする前に記録を取ってから。ブロックすると履歴にアクセスできなくなることがあります。
保存する場所
記録は、相手に見られない場所に置いてください。
- 相手が知らないメールアドレスに送っておく
- クラウドに保存し、パスワードを変更しておく
- 信頼できる人に預ける
端末を共有していたり、パスワードを知られている可能性がある場合は、まずそこを変えるところからになります。
記録のために危険なことをしない
ここが重要です。証拠を取るために、相手に近づいたり、待ち伏せしたり、直接対決したりしないでください。
- 相手を撮影しようとして接近する
- 「証拠を取るため」に会いに行く
- 挑発的な返信をして反応を引き出す
いずれも状況を悪化させ、身を危険にさらします。記録は、安全が確保されている範囲でだけ取るものです。
十分な記録がないことを理由に、相談をためらう必要もありません。記録がなくても相談はできます。
補足
デジタルの安全も確認してください
位置情報の共有、共有アカウント、パスワードを知られている端末——思い当たることがあれば、専門窓口に相談するときに伝えてください。
自分で全部やろうとすると、かえって相手に気づかれることがあります(設定変更が通知される場合など)。何から手をつけるべきかを、支援団体と一緒に決めるのが安全です。
4. 警察に相談・通報する
ストーカー行為もハラスメントも犯罪です
英国では、つきまといや繰り返しの嫌がらせは犯罪として扱われます。「民事の問題だから警察は動かない」というものではありません。
連絡先
| 状況 | 連絡先 |
|---|---|
| いま危険がある、相手がその場にいる | 999 |
| 話せないが緊急(携帯から) | 999 →自動音声のあと 55 |
| 相談したい、過去の出来事を届けたい | 101 またはオンライン |
通報の手順そのものは警察に届け出る(crime reference number)にまとめています。通報は無料です。
伝えるとよいこと
- 繰り返し起きていること(回数と期間)
- 記録している出来事の一覧
- 相手を知っているか、知らないか
- どの程度怖いと感じているか
最後の点は遠慮しないでください。恐怖を感じている事実は、警察が危険度を判断するうえで重要な情報です。「大げさに思われるかも」と控えめに言う必要はありません。
保護のための仕組み
英国には、有罪判決を待たずに加害者の行動を制限できる仕組み(Stalking Protection Order)があります。警察が裁判所に申し立てるもので、違反すれば刑事罰の対象になります。
制度は見直しが続いており、2026年の法改正では、裁判所が刑事手続きの中で自ら命令を出せるようにする、オンラインで相手が誰か分からない場合に警察が身元を開示できるようにする、といった変更が盛り込まれています。施行の時期は規定によって異なるため、いま自分の件で何が使えるかは、警察か専門窓口に確認してください。
対応に納得できない場合
警察の対応が不十分だと感じたら、専門の支援団体に相談してください。Paladin(National Stalking Advocacy Service) のような団体は、警察とのやり取りに伴走してくれます。
「一度断られたから終わり」ではありません。担当者を変えてもらう、上位の職員に相談する、支援団体を通じて申し入れる、といった道があります。
実務メモ
- 通報時に crime reference number を受け取り、控えておく
- 通訳の手配を頼める。費用は自己負担ではない
- オンラインでの通報なら、文章を落ち着いて用意できる
5. 在英日本人として気をつけたいこと
在留資格や言葉を理由に、我慢しないために
ビザへの影響を心配しなくてよい
被害を届け出たことが、在留資格に不利に働くことはありません。
「ビザに影響するのでは」「面倒を起こしたと思われるのでは」という不安から通報をためらう人がいますが、犯罪の被害者になることと、在留資格の審査は別のことです。
不安がある場合は、専門窓口に相談するときにその点も伝えてください。ビザの状況を踏まえた助言をしてくれる団体もあります。
言葉の壁は理由になりません
通訳の手配は、警察でも支援団体でも頼めます。費用は自己負担ではありません。
「うまく説明できないから」と諦めないでください。事実を短く伝えられれば十分です。
職場・学校で起きている場合
雇用主や教育機関には、ハラスメントに対応する義務があります。社内の相談窓口、人事、学生課などに相談できます。
職場でのトラブル全般は労働問題ガイドも参照してください。ただし、身の危険を感じる状況では、職場の手続きを待たずに警察や専門窓口に相談してください。
住まいに関わる場合
同居人や近隣の住人が関わる場合、住まいそのものを変える必要が出ることがあります。契約の途中で出る方法については住まい探しガイドが参考になります。
危険が差し迫っている場合は、自治体の housing options 窓口に緊急の住まいの相談ができます。支援団体を通じて相談するほうがスムーズなことが多いです。
ひとりで抱えないでください
被害を受けている人ほど、「自分の受け止め方が過剰なのでは」と考えがちです。その判断を、ひとりでしなくて大丈夫です。
専門の窓口は、まさにその判断を一緒にするために存在しています。相談することに、資格も条件も要りません。
ヒント
日本の家族・大使館に伝えておくこともできます
事件性のある被害に遭っている場合、在英国日本国大使館に相談することもできます。できることの範囲はありますが、状況の共有や、日本の家族との連絡の仲介はできます。
範囲については大使館にできること・できないことにまとめています。ただし、緊急時は大使館より先に 999 です。
よくある質問
参考・公式情報
- Metropolitan Police - Report a crime
- Metropolitan Police - Report lost or found property
- Transport for London - Lost property
- Stop Scams UK - STOP, HANG UP, CALL 159
- Report Fraud - UK's home for reporting cyber crime & fraud
- City of London Police - Report Fraud launches
- FCA - Fraudulent payments(返金ルール)
- 外務省 - 海外安全ホームページ
- 在英国日本国大使館 - 旅券(パスポート)
- 在英国日本国大使館 - 緊急連絡先
- IOPC - Make Yourself Heard(Silent Solution の公式案内)
- Suzy Lamplugh Trust - National Stalking Helpline
- GOV.UK - Report a stalker
- GOV.UK - Crime and Policing Act 2026: stalking factsheet
料金・時刻・制度は変更されます。本記事は2026年8月時点の情報です。渡航前に各公式サイトで最新情報をご確認ください。
本記事は手続きの流れを説明する情報提供であり、法的な助言ではありません。 警察・大使館・保険会社の運用や手数料は改定されることがあります (領事手数料は 毎年4月1日 に改定されます)。実際に手続きをする前に、各機関の公式ページで最新の 必要書類と金額をご確認ください。事件性のある被害や、身の安全に関わる 状況では、まず警察に相談してください。