IHS(移民健康保険料)とは|イギリスで医療がどこまで無料か

    The Immigration Health Surcharge and What It Covers

    ビザ申請のときに払った年額£1035前後のあの金額が、英国での医療費の正体です。これを払った人は GP も救急も入院も無料。逆に払っていない短期滞在者には請求が来ます。自分がどちら側なのかを、はっきりさせておく話です。

    2026年8月時点の情報

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    要点

    一般の成人
    年額£1035
    学生・YMS(ワーホリ)・18歳未満
    年額£776
    支払い方法
    ビザ申請時に滞在年数ぶんを一括前払い
    免除
    海外からの6ヶ月以下の申請は課金なし
    払うと無料になるもの
    GP・A&E・救急車・入院・専門医
    払っても有料のもの
    処方箋・歯科・眼科(定額の自己負担)

    英国のビザを申請したとき、ビザ代とは別に数十万円を請求されて驚いた人は多いはずです。それが IHS(Immigration Health Surcharge/移民健康保険料) です。

    3年のビザなら年額£1035 × 3年で£3105。日本円にすると数十万円が、申請の時点で一括で飛びます。

    この金額の意味を理解していない人が驚くほど多く、結果として 「保険に入っていないから病院に行けない」と思い込んで受診を我慢するという事態が起きます。実際には逆で、あなたはすでに支払い済みです。使わないほうが損をします。

    この記事では、IHS が何の対価なのか、そして「無料」の範囲がどこまでなのかを整理します。

    1. IHS とは何の対価か

    保険ではなく、利用資格の購入

    IHS は民間の医療保険ではありません。NHS を居住者と同じ条件で使う権利を、前払いで買うものです。

    日本の健康保険が毎月の給与から天引きされるのに対し、IHS はビザ申請の一点で滞在期間ぶんをまとめて払います。分割はできません。

    金額

    対象年額
    一般の成人(Skilled Worker など)£1035
    学生ビザ・その扶養家族£776
    Youth Mobility Scheme(ワーホリ)£776
    申請時点で18歳未満の子ども£776

    扶養家族がいる場合、一人ひとりに同額がかかります。4人家族なら4人分です。

    計算の癖

    • ビザの有効期間ぶんが対象で、6ヶ月単位で切り上げられます
    • 海外からの申請で滞在が6ヶ月以下なら、課金されません
    • 6ヶ月超〜12ヶ月未満は、1年分として課金されます

    つまり7ヶ月のビザでも1年分を払うことになります。

    補足

    ワーホリ(YMS)は割引対象です

    Youth Mobility Scheme は学生と同じ£776の区分です。2年間なら£1552。一般区分だと思って多く見積もっていた人は、予算を組み直せます。

    2. 無料になるもの、ならないもの

    「NHS は無料」は半分だけ正しい

    IHS を払った人(および英国の通常居住者)にとって、以下は無料です。

    無料

    • GP の診察
    • 専門医(consultant)の診察・治療 ※GP の紹介経由
    • A&E(救急外来)
    • 救急車
    • 入院・手術
    • 妊娠・出産に関わる医療
    • 検査(血液検査、レントゲン、MRI など)
    • がん治療をはじめとする専門的治療

    日本のような窓口3割負担はありません。手術を受けても入院しても、請求書は来ません。

    有料(定額の自己負担)

    「NHS は無料」という言葉が独り歩きしていますが、正確には 診療は無料、処方箋と歯科と眼科は定額負担 です。この3つが例外だと覚えておけば足ります。

    そもそも対象外

    • 美容目的の処置
    • 一部の不妊治療(地域の判断による)
    • 私費診療(Private)を自分で選んだ場合

    実務メモ

    • IHS を払っていれば、入院や手術でも請求書は来ない。医療費で破産するという概念が英国にはない。
    • 処方箋・歯科・眼科の3つだけが自己負担。ここを知らないと薬局で驚くことになる。
    • GP の紹介なしに専門医に直接かかることは、原則としてできない。

    3. 自分がどの立場かを確認する

    旅行者・在住者・短期滞在の線引き

    NHS の費用負担は、ビザの種類ではなく 「通常居住者(ordinarily resident)と扱われるか」 で決まります。

    無料で使える人

    • IHS を払って6ヶ月超のビザを持っている人
    • 永住権(ILR)保持者
    • 英国市民

    有料になる人

    • 観光ビザ・ETA での短期滞在者
    • ビザなしで滞在している人
    • IHS の対象外だった短期ビザの保持者

    ただし短期滞在者でも、次のものは常に無料です。

    • A&E での初期の診察・応急処置
    • 111 への電話相談
    • GP の診察(登録すれば旅行者でも無料)
    • 感染症の診断・治療(公衆衛生上の理由から)
    • 性感染症の検査・治療
    • 緊急避妊

    つまり旅行者でも、A&E に運ばれて最初に診てもらう分には請求されません。請求が発生するのは、そのまま入院したり継続的な治療に入ったりした場合です。

    旅行者は民間保険が必須

    短期の旅行で入院・手術が必要になると、数千ポンド単位の請求が来ます。海外旅行保険は、この場面のために入るものです。IHS を払っていない滞在では、保険なしは推奨できません。

    注意

    「NHS を使うとビザに響く」は誤りです

    IHS を払った人が NHS を利用することは、制度が想定している正しい使い方です。利用実績がビザ更新や永住申請に不利に働くことはありません。ただし、IHS 対象外の立場で高額な治療を受け、その費用を未払いのまま放置した場合は、その後のビザ申請が拒否される事由になります。請求が来たら必ず対応してください。

    4. 返金されることがある

    多くの人が取り逃している

    IHS は前払いなので、払いすぎた分が返ってくる場面があります。自動では戻らないことが多く、申請が必要です。

    返金の対象になる主なケース

    • ビザが不許可になった:全額が自動で返金されます
    • 申請を取り下げた:全額返金
    • 申請したより短い期間のビザが出た:差額が返金
    • ビザの期間満了前に英国を離れる:残期間ぶんが返金される場合があります
    • 医療職として英国の医療機関で働いている:職種によっては免除・還付の対象

    最後の点は見落とされがちです。NHS や社会福祉の分野で働く人向けの Health and Care Worker ビザは、IHS が免除されます。

    期間の途中で帰国する場合

    ビザを残したまま英国を離れるだけでは返金されません。ビザを正式に放棄(withdraw)する手続きを取った場合に、未使用期間の返金対象になります。

    数年分を前払いしている人にとっては相応の金額になるので、途中帰国が決まった時点で確認する価値があります。

    実務メモ

    • ビザ不許可のときの IHS は自動返金される。ここは申請不要。
    • 申請より短い期間のビザが出たら、差額が戻る。通知が来なくても自分で確認する。
    • Health and Care Worker ビザは IHS 免除。該当職種なら申請時に確認する。

    よくある質問

    参考・公式情報

    料金・時刻・制度は変更されます。本記事は2026年8月時点の情報です。渡航前に各公式サイトで最新情報をご確認ください。

    本記事は NHS の制度と手続きを説明する情報提供であり、医学的な助言・診断では ありません。症状の判断は必ず医療者に委ねてください。ここで扱う制度は イングランドのものです(スコットランド・ウェールズ・北アイルランドでは 処方箋が無料であるなど、負担の仕組みが異なります)。患者負担額は毎年4月1日に 改定されるため、受診前に NHS の公式ページで最新額をご確認ください。

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