イギリスの処方箋料を下げる方法|1品目£9.90を頭打ちにする
Cutting NHS Prescription Costs with a PPC
イングランドの処方箋は1品目 £9.90。「1回」ではなく「1品目」なので、3種類出れば3倍です。年に12品目を超えるなら、前払い証(PPC)で年£114.50に頭打ちにできます。そして無料になる条件も、思っているより広い。
いま緊急なら
意識がない・呼吸が苦しい・大量出血・胸の痛みなど生命に関わる状態なら 999。 緊急かどうか判断がつかないときは 111(24時間・無料・通訳を頼めます)。
要点
- 1品目あたり
- £9.90(イングランド)
- PPC 3ヶ月
- £32.05/4品目以上で得
- PPC 12ヶ月
- £114.50/12品目以上で得
- 改定時期
- 毎年4月1日
- スコットランド等
- 処方箋は全面的に無料
- 電話窓口
- 0300 330 1341
英国の医療は診察が無料である一方、処方箋には定額の自己負担があります。イングランドでは 1品目 £9.90。
ここで最初につまずくのが、これが「処方箋1枚あたり」ではなく 「薬1品目あたり」 だという点です。GP が3種類の薬を出せば £29.70。薬局の窓口で提示された金額に驚くのは、たいていこの誤解が原因です。
ただし、この負担には 上限を設ける仕組み が用意されています。PPC(前払い証)です。年に12品目を超える人なら、確実に得をします。
そして、そもそも 無料になる条件 も日本語圏ではあまり知られていません。順に見ていきます。
目次
1. 課金の仕組み
「1回」ではなく「1品目」
処方された薬の 品目数 × £9.90 が窓口での支払額です。
| 処方内容 | 支払額 |
|---|---|
| 抗生物質のみ | £9.90 |
| 抗生物質+鎮痛剤 | £19.80 |
| 血圧薬+コレステロール薬+胃薬 | £29.70 |
薬の種類や実際の薬価は関係ありません。安い薬でも高価な薬でも同額です。月に£300する薬でも £9.90、£2の薬でも £9.90。
つまり高価な薬を常用している人ほど、この制度の恩恵は大きくなります。
市販薬のほうが安いことがある
逆に、安い薬では 薬局で普通に買ったほうが安い ケースが生じます。パラセタモールは市販だと数十ペンスで買えるので、処方箋で £9.90 払うのは損です。
処方された品目の中に市販で安く買えるものが混じっていたら、薬局で「これは市販で買います」と伝えて構いません。薬剤師も普通にそう案内してくれます。
改定時期
患者負担額は 毎年4月1日 に改定されます。£9.90 という金額は2025年・2026年と2年連続で据え置かれましたが、これは政治判断による例外で、恒久的なものではありません。
実務メモ
- 薬局で金額を提示されたら、品目数を確認する。市販で安く買える品目が混じっていることがある。
- 高価な薬ほど定額制の恩恵は大きい。薬価と自己負担額は無関係。
- 毎年4月に改定される。年度替わりに金額が変わっていないか確認する。
2. PPC(前払い証)で頭打ちにする
常用薬があるなら、ほぼ確実に得
Prescription Prepayment Certificate(PPC) は、期間中の処方箋が何品目でも定額になる前払い証です。
| 種類 | 金額 | 損益分岐 |
|---|---|---|
| 3ヶ月 | £32.05 | 4品目以上で得 |
| 12ヶ月 | £114.50 | 12品目以上で得 |
12ヶ月版は 10回の分割払い(Direct Debit) にもできます。一括で払えない場合でも使えます。
具体的にいくら得か
毎月1品目を受け取る人(年12品目)なら、通常 £118.80。PPC なら £114.50 なので、ほぼ同額です。
毎月2品目なら年24品目で £237.60。PPC との差は £123.10 の節約になります。
毎月3品目なら年36品目で £356.40。差額は £241.90。
常用薬が2種類以上ある時点で、PPC を買わない理由はありません。
買い方
- オンライン(最も速い。即日から有効にできます)
- 電話 0300 330 1341
- 一部の薬局の窓口
購入時に開始日を指定できます。過去に遡って適用することも可能(申請から一定期間内)なので、最近まとめて払った覚えがある人は確認する価値があります。
注意
PPC はイングランドでのみ意味を持ちます。スコットランド・ウェールズ・北アイルランドは処方箋が無料なので、そもそも不要です。
ヒント
HRT を使っている人には専用の PPC があります
更年期障害のホルモン補充療法(HRT)については、通常の PPC とは別の専用証明書があり、年間で1回分の処方箋料程度の負担で済みます。対象の薬を継続している場合、通常の PPC より圧倒的に安くなります。GP か薬剤師に確認してください。
3. 無料になる条件
思っているより範囲が広い
以下に該当する人は、処方箋料が 全額無料 です。PPC も必要ありません。
年齢
- 16歳未満
- 16〜18歳で全日制の教育を受けている
- 60歳以上
状態
- 妊娠中、または過去12ヶ月以内に出産した(要 maternity exemption certificate)
- 特定の慢性疾患がある(糖尿病、甲状腺機能低下症、てんかん、がんの治療中など。要 medical exemption certificate)
- 継続的な身体障害により外出が困難
所得・給付
- Universal Credit を受給していて一定の所得要件を満たす
- Income Support、Pension Credit などの受給者
- NHS Low Income Scheme(HC2証明書)の対象
学生・低所得者は確認する価値がある
NHS Low Income Scheme は見落とされがちです。所得と貯蓄が一定以下であれば、処方箋・歯科・眼科の費用が全額または一部免除されます。留学生も対象になり得ます。
HC1 という申請書を提出すると、全額免除の HC2 か一部免除の HC3 が発行されます。学生で収入が限られている人は、一度計算してみる価値があります。
免除証明書は必ず取得する
妊娠中や対象の慢性疾患があっても、証明書を持っていないと窓口では請求されます。GP に申請書をもらって手続きしてください。自動では発行されません。
実務メモ
- 妊娠したら maternity exemption certificate を GP で申請する。出産後12ヶ月まで有効。
- 糖尿病や甲状腺疾患などは medical exemption certificate の対象。該当するなら必ず申請する。
- 留学生でも NHS Low Income Scheme の対象になり得る。HC1 で申請できる。
注意
免除の虚偽申告には罰金があります
窓口で「免除対象です」と申告して薬を受け取ると、後日 NHSBSA が資格を照合します。対象でなかった場合、処方箋料に加えて最大£100の追加負担が課されます。悪意がなくても対象になるため、自分が免除に該当するか不確かなときは、正直に払うか、事前に確認してください。
4. イングランド以外は無料
同じ英国でも制度が違う
処方箋料は英国全体で統一されていません。
| 地域 | 処方箋料 |
|---|---|
| イングランド | £9.90/品目 |
| スコットランド | 無料 |
| ウェールズ | 無料 |
| 北アイルランド | 無料 |
イングランドだけが有料です。この差は政治的な選択の結果で、他の3地域は自治政府の判断で自己負担を廃止しています。
判定されるのは「どこで受け取るか」ではない
登録している GP がどこにあるかで決まります。イングランドの GP に登録している人は、スコットランドの薬局で受け取っても支払いが必要です。
逆にスコットランドの GP に登録していれば、イングランドで受け取る場合も無料になる扱いがあります(薬局によっては説明が必要になります)。
旅行のついでに無料の地域で薬をもらう、という抜け道は成立しません。
引っ越したら変わる
エディンバラやカーディフに引っ越して現地の GP に登録すれば、その時点から処方箋は無料になります。ロンドンから移る人にとっては、地味に効く生活費の差です。
実務メモ
- 処方箋料の有無は、登録している GP の所在地で決まる。受け取る薬局の場所ではない。
- スコットランド・ウェールズ・北アイルランドに引っ越すと処方箋は無料になる。
よくある質問
参考・公式情報
- NHS - Register with a GP surgery
- NHS - Get help with prescription costs
- NHSBSA - Prescription prepayment certificate (PPC)
- NHS - Understanding NHS dental charges
- GOV.UK - Pay for UK healthcare as part of your immigration application
- GOV.UK - NHS entitlements: migrant health guide
料金・時刻・制度は変更されます。本記事は2026年8月時点の情報です。渡航前に各公式サイトで最新情報をご確認ください。
本記事は NHS の制度と手続きを説明する情報提供であり、医学的な助言・診断では ありません。症状の判断は必ず医療者に委ねてください。ここで扱う制度は イングランドのものです(スコットランド・ウェールズ・北アイルランドでは 処方箋が無料であるなど、負担の仕組みが異なります)。患者負担額は毎年4月1日に 改定されるため、受診前に NHS の公式ページで最新額をご確認ください。