イギリスで体調を崩したとき、どこに行くか|111と999の使い分け

    Where to Go When You Are Ill in the UK

    英国の医療は「救急車か、我慢か」の二択ではありません。間に 111 という電話相談があります。24時間・無料・通訳を頼めて、必要なら当日の診察枠まで手配してくれる。この番号を知っているかどうかで、A&E で6時間待つか、1時間で解決するかが変わります。

    2026年8月時点の情報

    いま緊急なら

    意識がない・呼吸が苦しい・大量出血・胸の痛みなど生命に関わる状態なら 999。 緊急かどうか判断がつかないときは 111(24時間・無料・通訳を頼めます)。

    要点

    生命に関わる
    999(救急車)/A&E に直行
    緊急だが命に別状はない
    111(24時間・無料・通訳可)
    数日待てる
    GP に予約
    軽い不調
    薬局(Pharmacy)で薬剤師に相談
    A&E の待ち時間
    軽症だと4〜8時間は珍しくない
    費用
    IHS を払っていれば救急も含めて無料

    日本では、具合が悪ければ近所の内科に行き、ひどければ救急外来に行く。判断はだいたいこの二択で足ります。

    英国は違います。行き先が4段階に分かれていて、間違った段に行くと、時間を大量に失うか、必要な治療が遅れます

    そして日本語圏で決定的に知られていないのが、111 という番号の存在です。救急車を呼ぶほどではない、でも GP の予約は来週しか空いていない——この谷間を埋めるためだけに用意された仕組みで、24時間つながり、無料で、通訳も頼めます。

    多くの日本人が、この番号を知らないまま A&E(救急外来)に自力で行き、軽症と判定されて6時間待たされます。あるいは逆に、我慢すべきでない症状を我慢します。この記事は、その判断を一枚の地図にするためのものです。

    1. 行き先は4つある

    まずこの地図を頭に入れる

    状態行き先費用目安
    生命に関わる999 / A&E無料意識障害・呼吸困難・大量出血・胸の痛み・脳卒中の兆候
    緊急だが命に別状はない111無料高熱が続く・激しい痛み・判断がつかない
    数日待てるGP無料長引く不調・持病・health check
    軽い不調薬局薬代のみ風邪・軽い皮膚炎・膀胱炎など

    迷ったら 111 に電話する。 これが最も外れの少ない選択です。オペレーターが症状を聞き取り、行き先を指定してくれます。判断を自分で背負う必要がありません。

    注意

    この症状なら迷わず 999

    胸の痛み・締めつけ(心筋梗塞)、顔の片側が下がる/腕が上がらない/言葉が出ない(脳卒中)、呼吸ができない意識がない止まらない出血痙攣が続く。これらは判断を保留せず、その場で 999 を呼んでください。英国の救急車は無料です。

    2. 111 ── 知らないと損をする番号

    24時間・無料・通訳あり

    111 は、緊急ではあるが命に関わるとは言い切れない場面のための窓口です。夜間も休日も、24時間つながります。

    何をしてくれるのか

    電話をすると、訓練を受けたオペレーターが症状を順番に聞いていきます。決められた手順に沿った質問なので、こちらは聞かれたことに答えるだけで構いません。

    そのうえで、次のいずれかに振り分けられます。

    • 自宅で様子を見る方法を指示される
    • 薬局で買える薬を案内される
    • GP の当日枠、または翌日枠をその場で予約してくれる
    • Urgent Treatment Centre への受診を指示される
    • A&E に行くよう指示される(優先度の情報が引き継がれることがあります)
    • 救急車を手配される

    つまり、自分で行き先を判断しなくていいのがこの仕組みの本質です。

    英語に不安があるとき

    通訳を頼めます。電話がつながったら、まず "I need a Japanese interpreter." と伝えてください。通訳が回線に入るまで少し待つことになりますが、費用はかかりません。

    英語で説明しきる自信がないことを理由に電話をためらう必要はありません。

    オンライン版もある

    111 のオンライン版(111.nhs.uk)もあり、質問に答えていくと同じように行き先を示してくれます。電話が苦手な人はこちらから始めても構いません。ただし緊急度が高い場合は電話のほうが確実です。

    実務メモ

    • 111 は救急車の代わりではなく、行き先の交通整理をする窓口。緊急度が高いと判断されればそのまま救急車を手配してくれる。
    • 通訳は無料。「I need a Japanese interpreter」の一言だけ覚えておけばよい。
    • GP が閉まっている夜間・休日こそ 111 の本領。「明日まで我慢するか」で悩む必要がない。

    3. A&E(救急外来)の実態

    行けば早く診てもらえる、わけではない

    A&E(Accident & Emergency)は、日本の救急外来にあたります。24時間開いており、費用は無料です。

    ただし 重症度の順に診る(triage) ため、軽症で行くと待ち時間が長くなります。4時間、混雑時は8時間を超えることも珍しくありません。夜通し待合室にいることになります。

    なぜそうなるのか

    英国の A&E は慢性的に混雑しており、その原因の一つが「GP の予約が取れないから A&E に来る」人の流入です。制度側もそれを認識していて、だからこそ 111 や Urgent Treatment Centre で受け皿を分散させようとしています。

    自分が軽症だと思う場合、A&E は最も遅い選択肢です。

    中間の選択肢:Urgent Treatment Centre

    A&E ほど重くないが、GP を待てない——という層のために Urgent Treatment Centre(UTC) があります。骨折の疑い、切り傷の縫合、捻挫、発熱などに対応します。

    A&E より待ち時間が短いことが多く、111 に電話すると、この UTC を案内されることが頻繁にあります。近所の UTC の場所を、元気なうちに一度調べておくと役に立ちます。

    A&E に行くときに持っていくもの

    • パスポートまたは在留資格がわかるもの(なくても診てもらえます)
    • NHS number(わかれば)
    • 常用薬のリスト(成分名がわかるとよい)
    • 携帯の充電器(待ち時間が長いため、実用上これが効きます)

    実務メモ

    • A&E は重症度順。軽症での「早く診てほしい」は叶わない。
    • 近所の Urgent Treatment Centre を元気なうちに調べておく。夜中に検索する羽目にならずに済む。
    • 身分証がなくても A&E は診る。緊急の治療を書類不備で断ることはない。

    補足

    救急車も A&E も、IHS を払っていれば無料です

    ビザ申請時に IHS(移民健康保険料)を払っている人は、救急車・A&E・入院を含めて居住者と同じ条件で使えます。「お金がないから呼べない」と考える必要はありません。詳しくは IHS と、自分がどこまで無料か を参照してください。

    4. 軽い不調は薬局で終わることが多い

    GP を待たなくていい範囲

    英国の薬局(Pharmacy/Chemist)は、日本のドラッグストアより踏み込んだ役割を持っています。薬剤師に無料で相談でき、予約も要りません。

    Boots や Superdrug といったチェーンのほか、街角の独立系薬局にも必ず薬剤師がいます。多くの店に相談用の小部屋があり、人前で症状を話す必要はありません。

    さらに Pharmacy First という仕組みにより、一定の症状については薬剤師が GP を介さずに処方薬まで出せるようになっています。対象は副鼻腔炎、中耳炎、扁桃炎、帯状疱疹、虫刺され、単純性の膀胱炎など。

    つまり、これらの症状で GP の予約を待つ必要はありません。

    薬局で解決しやすいもの

    • 風邪、喉の痛み、咳
    • 頭痛、生理痛
    • 胃もたれ、下痢、便秘
    • 軽い皮膚のかゆみ、湿疹
    • 花粉症
    • 軽い切り傷、やけど

    日本の常備薬に当たるもの

    日本の市販薬はそのままの名前では見つかりません。成分で探すことになります。

    日本での用途英国での探し方
    解熱鎮痛Paracetamol(アセトアミノフェン)/Ibuprofen
    胃薬Antacid、Gaviscon
    下痢止めImodium(Loperamide)
    花粉症Antihistamine(Cetirizine、Loratadine)
    のど飴・トローチStrepsils

    薬剤師に症状を伝えれば、適切なものを選んでくれます。詳しくは 薬局で買う・処方箋を受け取る で扱います。

    実務メモ

    • 薬局の相談は無料で予約不要。GP の予約が取れないときの最初の一手として使える。
    • Pharmacy First の対象症状なら、薬剤師が処方薬まで出せる。GP を経由しなくていい。
    • 日本の市販薬は成分名で探す。商品名は通じない。

    5. 受診時に困らないための備え

    英語より、準備の問題

    英語力そのものよりも、準備しているかどうかで診察の質が変わります。診察時間が短いためです。

    事前にメモしておくこと

    • いつから(since when)
    • どこが(where)
    • どんな痛みか(sharp / dull / burning / throbbing)
    • 痛みの強さを10段階で
    • 悪化・改善する条件
    • 常用薬(成分名で)
    • アレルギー

    これを紙かスマホのメモに箇条書きしておき、診察の冒頭で渡すか読み上げるのが最も効率的です。英語の会話力より、この一枚のほうが効きます。

    通訳を頼む権利がある

    GP でも 111 でも A&E でも、通訳の手配を依頼できます。費用は患者負担ではありません。家族や友人に通訳させる必要はなく、むしろ医療上は専門の通訳が望ましいとされています。

    予約時に「通訳が必要」と伝えておくと、当日の手配が確実になります。

    症状を伝える最低限の表現

    日本語英語
    〜が痛みますI have a pain in my ...
    熱がありますI have a temperature / fever
    息が苦しいI'm short of breath
    3日前からですIt started three days ago
    薬を飲んでいますI'm taking medication for ...
    アレルギーがありますI'm allergic to ...

    ただし、言えなくても診てもらえます。 通訳を頼むか、メモを見せれば足ります。言葉を理由に受診をためらうのが、最も避けたい失敗です。

    実務メモ

    • 症状メモを英語で用意しておけば、会話力の不足はほぼ埋まる。
    • 通訳は無料で頼める権利。遠慮する場面ではない。
    • 常用薬は成分名で控える。日本の商品名は英国では通じない。

    よくある質問

    参考・公式情報

    料金・時刻・制度は変更されます。本記事は2026年8月時点の情報です。渡航前に各公式サイトで最新情報をご確認ください。

    本記事は NHS の制度と手続きを説明する情報提供であり、医学的な助言・診断では ありません。症状の判断は必ず医療者に委ねてください。ここで扱う制度は イングランドのものです(スコットランド・ウェールズ・北アイルランドでは 処方箋が無料であるなど、負担の仕組みが異なります)。患者負担額は毎年4月1日に 改定されるため、受診前に NHS の公式ページで最新額をご確認ください。

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