英国の仕立ての型を守りながら、色でそれを裏切る。多色のストライプは、その態度がそのまま柄になったもの。

価格の目安
£80〜1,200
旗艦店
ポール・スミス アルベマール・ストリート店
最寄り: Green Park 駅(徒歩約5分)
ポール・スミスの面白さは、保守的な服に、見えない場所だけ遊びを仕込むという一点に尽きます。
外から見ると、輪郭は極めて正統です。肩の作り、身頃の絞り、ラペルの返り。サヴィル・ロウの仕立ての型をそのまま踏襲していて、黙っていれば真面目なスーツに見えます。
ところが上着を脱ぐと裏地が花柄だったり、カフスを折ると内側だけ色が違ったりする。"Classic with a Twist" と呼ばれるこの姿勢が、ブランドの中身そのものです。
日本人の体格に合いやすい 英国ブランドの中では比較的細身の作りで、サイズ展開も小さい方から揃っています。バブアーやバーバリーが「中に着込む前提」で大きめに出るのに対し、こちらは素で着る前提の寸法です。
入口の価格が低い スーツやジャケットは £600 以上しますが、ソックス £15、財布 £90 から入れます。ストライプの入った小物は、それだけでブランドが伝わるので、土産としての費用対効果が高いブランドです。
店そのものが目的地になる ノッティング・ヒルの店は建物全体がショッキングピンクに塗られていて、買い物と関係なく写真を撮りに来る人がいます。
このブランドには見分けやすい記号が2つあります。
多色のストライプ(Signature Stripe)は、細い色の帯を並べたもの。財布でもソックスでも、これが入っていればポール・スミスだと分かります。
もう一つがシマウマです。2007年に、コミック調の絵としてTシャツにプリントされたのが始まりで、そこからブランド全体の記号に昇格しました。主に若い層に向けた PS Paul Smith のラインで使われています。
なぜシマウマなのか。縞(ストライプ)を持つ動物だからです。ブランドの信条である "Classic with a Twist" を、動物1匹で言い直したような記号になっている。ストライプという看板を、生き物の姿を借りてもう一度出しているわけです。
買うときの実用的な意味もあります。店頭でシマウマが付いていれば、それはたいてい PS Paul Smith ライン——本流よりカジュアルで価格も低い。予算を抑えたいならシマウマを目印にすると早く探せます。

シマウマのモチーフ。縞を持つ動物として、ストライプの記号をもう一度言い直している。
ポール・スミス本人は、もともとプロの自転車競技選手を目指していました。服にはまったく興味がなく、15歳で学校を出て地元の衣料倉庫で働き始めたのも、自転車に乗る時間が欲しかったからだといいます。

創業者ポール・スミス本人。
17歳のときの自転車事故で、半年近く入院します。競技選手の道はそこで絶たれました。退院後、療養中に知り合った友人たちに連れられて行ったパブに、美術学校の学生が集まっていた。そこで初めてバウハウスやウォーホルの話を聞き、服とデザインの世界に入っていきます。
1970年、ノッティンガムに開いた最初の店はわずか3平方メートルほどの部屋でした。窓もなく、週2日しか開けていない。それでも他の店が置かないものを置いたことで客がつき、1976年にパリでコレクションを発表して国外に広がります。
彼の服が英国的とされるのは、サヴィル・ロウに連なる仕立ての型を土台に置いているからです。肩の作り、身頃の絞り方、ラペルの返り。輪郭そのものは保守的といっていいほど正統です。
そのうえで、裏地に予想外の色を入れる。ボタンだけを変える。スーツの内側だけが花柄になっている。"Classic with a Twist" と呼ばれるこの姿勢が、多色のストライプという分かりやすい記号に結晶しました。
ストライプは当初、正式な柄として発表されたものではなく、あくまで遊びの位置づけでした。今ではブランドを指す記号として単独で通用します。バーバリーのチェックと同じで、周縁にあったものが中心になったという経緯をたどっています。

多色のストライプ(Signature Stripe)。ブランドを指す記号として単独で通用する。
日本での展開が大きいブランドですが、本国のほうが品揃えの幅が広く、価格も下がります。特にセール期の差は大きくなります。

ロンドン市内の店舗。店ごとに扱うラインが違うので、探しものがあるなら複数回る価値がある。
ロンドンには複数の店があり、それぞれ扱うラインが違います。片方で見つからなかったものが、もう片方にはある。
アヴェリー・ロウ23番地のセール・ショップは、前シーズン品を最大70%引きで出す独立したアウトレットです。Bond Street 駅から徒歩5分、メイフェアの旗艦店からも歩ける距離にあります。
メンズが中心で、2階にスーツとタイ。店は小さく、在庫は行ったときの運次第です。ただし定価の店と同じ日に回れるので、寄る手間はほとんどかかりません。定価で買う前に一度覗く価値があります。
ノッティング・ヒルの店は、建物全体がショッキングピンクに塗られています。通称ピンク・ハウス。街の目印になっていて、買い物というより写真を撮りに行く場所として扱われています。
ポートベロー・マーケットからそう遠くないので、土曜の市に行くならそのまま足を伸ばせます。外観だけなら数分で済むので、旅程に組み込む負担が小さいのも利点です。
スーツやジャケットは価格も荷物も重くなります。小物から入るのが現実的で、財布・ソックス・シャツあたりが定番です。ストライプの入った小物は £100 前後から選べ、土産としても分かりやすく収まります。
ひとこと: ノッティング・ヒルのピンクの建物は写真の名所です。ポートベロー・マーケットと同じ日に回すと効率よく済みます。
Paul Smith の公式アカウントの投稿です。
長く定番として残っているものを中心に選びました。価格は変わります。目安として見てください。
ブランドの記号が最も分かりやすく出る小物。価格帯も土産に収まる。
£90〜200
最も軽く、最も安い入口。数足まとめても荷物にならない。
£15〜25
外は無地で、カフスの裏だけが柄。この作りが最も分かりやすい一枚。
£150〜250
営業時間は載せていません。変わりやすく、古い情報を頼りに行くと閉まっていることがあるためです。 行く前に公式サイトで確認してください。
9 Albemarle Street, Mayfair, London W1S 4HH
Green Park 駅(徒歩約5分)
中心となる大型店。フォーマル寄りのラインが最も揃う。
Westbourne House, 122 Kensington Park Road
Notting Hill Gate 駅
建物全体がショッキングピンク。ポートベロー・マーケットから歩けるので、外観だけなら数分で寄れる。
23 Avery Row, Mayfair, London W1K 4AX
Bond Street 駅(徒歩約5分)
前シーズン品を最大70%引きで出す独立アウトレット。メンズ中心で2階にスーツとタイ。店は小さく在庫は運次第だが、旗艦店から徒歩圏なので併せて回れる。

ファッション · 1856年創業
トレンチコートという衣服そのものを作った会社。あのチェックは裏地として生まれたもので、最初は表に出るものではなかった。

ファッション · 1952年創業
ウィンブルドンを3連覇した選手が作ったポロシャツ。月桂樹の冠は、労働者階級の子が入れなかったクラブの記章だった。

ファッション · 1971年創業
パンクの服を作った店が、そのまま英国を代表するブランドになった。王冠に土星の環を足したロゴは「体制の外を回る」という意味。

ファッション · 1992年創業
サヴィル・ロウで仕立てを覚えた男が作った、最も攻撃的な英国ブランド。ドクロのスカーフは2003年の海賊がテーマのコレクションから来ている。

ファッション · 2011年創業
オデーサ出身の元法学生がロンドンで始めたブランド。売れ残りの生地を作り直すことを、環境対策ではなく手法として選んでいる。

靴・レザー · 1960年創業
作業靴として売り出され、その頑丈さゆえに反体制の象徴になった。空気入りソールを考えたのは、足を折ったドイツ人の軍医だった。