ドクターマーチンDr. Martens

    靴・レザー
    1960年創業
    ノーサンプトンシャー州ウォラストン

    作業靴として売り出され、その頑丈さゆえに反体制の象徴になった。空気入りソールを考えたのは、足を折ったドイツ人の軍医だった。

    ドクターマーチン

    画像: Nick-D / CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons

    価格の目安

    £60〜250

    旗艦店

    ドクターマーチン カムデン店

    最寄り: Camden Town 駅(徒歩約3分)

    ドクターマーチンの特徴

    ドクターマーチンの本質は、安いのに壊れないという一点です。ここから他のすべてが派生しています。

    高級靴ではありません。£150 前後という価格は、英国の革靴としてはむしろ安い部類です。それでいて数年から十数年履ける。この価格と耐久性の比が、労働者にもパンクスにも学生にも選ばれた理由でした。

    AirWair ソール ソールの中に空気を密閉した気室があり、そこで衝撃を逃がします。厚いだけのゴム底とは違い、沈んでから戻る。1日歩き回っても脚に来にくく、観光で酷使する靴としてかなり合理的です。

    履くほど自分の形になる 新品は硬く、履き慣らしに数週間かかります。これは欠点として説明されがちですが、裏を返せば足の形に馴染んでいくということです。買った直後が最も履きにくく、そこから良くなり続ける靴は多くありません。

    意味を後から着せ替えられてきた 郵便配達員 → スキンヘッズ → パンク → グランジ → ブリットポップ。ブランドが物語を用意したのではなく、着る側が勝手に意味を足していったという経歴を持ちます。特定の文脈に固定されていないので、今から履いても誰かの真似にはなりません。

    ロゴは踵にある

    このブランドの記号は、胸でも側面でもなくにあります。

    黄と黒のヒールループAirWair、そしてその下に "With Bouncing Soles"(弾むソールとともに)という一文。この字は創業者ビル・グリッグス本人の手書きをそのまま起こしたものです。

    もう一つが黄色いウェルトステッチ——ソールの縁をぐるりと1周する黄色い糸です。1960年代半ばに入り、以来この靴の見分け方そのものになりました。遠目に足元を見て黄色い線が1本走っていれば、それはドクターマーチンです。

    どちらも飾りとして足された記号ではありません。ヒールループは靴を引き上げるための実用の輪で、ステッチはアッパーとソールを縫い留めている糸です。機能している部品に色を付けただけで記号になっている、という点がこのブランドらしいところです。

    偽物を見分けるときも、まずこの2つが見られます。

    ドクターマーチンの歴史

    始まりは1945年のバイエルンです。ドイツ人の軍医クラウス・マルテンスが、スキーで足首を骨折しました。療養中、支給された軍靴が硬くて履けない。そこで放置されていた工場からゴムを調達し、自分のために靴を作ります。

    空気を閉じ込めたソール

    彼が考えたのは、ソールの中に空気を密閉した層を作ることでした。ゴムを溶着して閉じた気室をいくつも作り、そこに衝撃を逃がす。厚いだけのゴム底とは違い、沈み込んでから戻る。

    これがのちに AirWair の名で呼ばれるソールです。当初の客は近所の年配の女性たちで、その履き心地が評判になって注文が増えていきました。

    イギリスに渡る

    1959年、マルテンスと共同開発者は特許を売る相手を探し、業界誌に広告を出します。これに反応したのが、イングランド・ノーサンプトンシャーのウォラストンで靴を作っていたグリッグス社でした。

    グリッグスは特許を買ったうえで、いくつも手を入れています。

    • 甲の形をイギリス人の足に合わせて作り直した
    • ソールの縁に黄色いステッチを入れた
    • 踵に AirWair のループを付けた
    • 溝の入った独特のソール形状を採用した

    そして1960年4月1日に最初の8ホールブーツを発売します。だから型番が 1460 です。日付がそのまま名前になっている。

    客が勝手に変わっていった

    当初の想定客は郵便配達員、警官、工場労働者でした。安くて壊れない作業靴です。

    それが1960年代後半、まずスキンヘッズが履き始めます。以降、パンク、2トーン、グランジ、そしてブリットポップと、次々に別の集団に持ち去られていきました。共通していたのは思想ではなく、「安いのに壊れないこと」でした。

    ブランドが用意した物語ではなく、着る側が勝手に意味を足していったという点で、この靴はかなり珍しい経歴を持っています。

    ロンドンでの買い方

    日本との価格差がはっきり出るブランドのひとつです。同じ 1460 でも本国価格のほうが明確に安く、セール期にはさらに下がります。

    どこで買うか

    カムデン・タウンが定番です。直営店があるうえ、周辺の店でも扱いがあり、街の雰囲気ごとブランドの出自に合っています。コヴェント・ガーデンやオックスフォード・ストリート周辺にも店があります。

    サイズの選び方

    ここが最も重要です。

    • UK表記で、ハーフサイズがありません。 迷ったら小さいほうを選ぶのが定説です(革が伸びるため)
    • 革が硬く、履き慣らしに数週間かかります
    • 定番の 1460(8ホール)と 1461(3ホール)は、同じ表記でも履き心地が変わります
    UK目安(cm)
    UK 5約 24
    UK 6約 25
    UK 7約 26
    UK 8約 27

    あくまで目安です。実際に履いて選べること自体が、現地で買う最大の利点なので、この表は「当たりをつける」用途だけに使ってください。

    試着には厚手の靴下を持っていくこと。実際に履くときの状態に近づけないと、店では大丈夫だったのに帰国後に踵が当たる、ということが起きます。

    Made in England は別枠

    ノーサンプトンシャー製の限られたモデルが Made in England として残っています。価格は倍近くになりますが、革の質と作りが違い、本国でしか選択肢が揃いません

    通常ラインとは売り場が分かれていることが多いので、狙うなら店員に直接聞くのが早いです。

    カムデン・ハイストリートの店舗。周辺の店でも扱いがあり、比較しながら選べる。

    カムデン・ハイストリートの店舗。周辺の店でも扱いがあり、比較しながら選べる。

    画像: Mark Hillary / CC BY 2.0, via Wikimedia Commons

    ひとこと: 履き始めは必ず踵が当たります。厚手の靴下を持って試着に行くと、実際に履くときの感覚に近い状態で判断できます。

    公式アカウントより

    Dr. Martens の公式アカウントの投稿です。

    何を買えばいいか

    長く定番として残っているものを中心に選びました。価格は変わります。目安として見てください。

    • 1460 8ホールブーツ

      1460 8ホールブーツ

      1460 Original

      1960年4月1日発売。型番が発売日そのものを指している原型。

      £150〜180

    • 1461 3ホールシューズ

      1461 Oxford

      ブーツより合わせやすく、スーツケースの負担も小さい。

      £130〜160

    • Made in England ライン

      Made in England

      ノーサンプトンシャー製。価格は倍近いが、日本では選択肢がほぼない。

      £230〜

    主な店舗・アウトレット

    営業時間は載せていません。変わりやすく、古い情報を頼りに行くと閉まっていることがあるためです。 行く前に公式サイトで確認してください。

    • 旗艦店

      ドクターマーチン カムデン店

      Camden High Street, London NW1

      Camden Town 駅(徒歩約3分)

      周辺の店でも扱いがあり、比較しながら選べる。街の雰囲気ごとブランドの出自に合っている。

    • 直営店

      ドクターマーチン コヴェント・ガーデン店

      Covent Garden 駅

      観光の動線上。カムデンまで行く時間がないならここ。

    よくある質問

    Dr. Martens 公式サイト →

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