ITV Drama & Films · 2010–2015 / 劇場版

    ダウントン・アビーのロケ地巡り

    Downton Abbeyロンドン発の日帰り + 市内

    『ダウントン・アビー』のロケ地巡りは、他の2作品とは事情が違います。物語の中心である屋敷も村もロンドンにはなく、ロンドンを起点にした日帰り旅行として組み立てる必要があるためです。

    一方で、劇中でクローリー家が「ロンドンへ行く」場面に使われた建物は、当然ながら実際にロンドンにあります。ここでは日帰りで行く郊外のロケ地と、市内で歩いて回れるロケ地を分けて紹介します。

    ハイクレア城の公開日は年間60〜70日程度に限られ、事前予約制です。人気の日程は数か月前に売り切れます。ここを目当てにするなら、旅程の中でも最初に押さえるべき予約です。

    掲載スポット

    ダウントン・アビー(グランサム伯爵家の本邸)

    1. ハイクレア城

    Highclere Castle

    シリーズと劇場版を通じて、屋敷の外観と主要な部屋の撮影に使われた本物のカントリーハウスです。ハンプシャー州、ロンドンの西約110キロに位置し、現在もカーナヴォン伯爵家が実際に暮らしています。

    現在の姿になったのは1840年代。国会議事堂を設計したチャールズ・バリーが手がけたもので、外観のシルエットが議事堂とどこか似ているのはそのためです。

    この城には、ドラマとは別の有名な物語があります。第5代カーナヴォン伯爵は、ツタンカーメン王墓の発掘に資金を出した人物でした。1922年、考古学者ハワード・カーターとともに「王家の谷」で無傷の王墓を発見し、20世紀最大の考古学的発見として世界を沸かせます。しかし伯爵はその翌年、カイロで蚊に刺された傷から敗血症を起こして急死しました。ここから「ツタンカーメンの呪い」という伝説が生まれています。

    その縁で、城の地下にはエジプト展示室が設けられており、発掘当時の記録や副葬品の複製が公開されています。ダウントンを見に来て、思いがけず考古学史に足を踏み入れることになる場所です。

    エリア
    ハンプシャー州ニューベリー近郊(ロンドンから約110km)
    最寄り駅
    Paddington 駅から Newbury 駅まで約1時間、そこからタクシーで約20分
    見学の可否
    年間60〜70日程度の限定公開。事前予約制で、人気の日程は早期に売り切れます。城・庭園・エジプト展示室で券種が分かれています。
    ひとこと
    公開日は夏季に集中します。日程が合わない場合は、庭園のみ公開の日やイベント日を狙う手もあります。

    ダウントン村

    2. バンプトン村

    Bampton, Oxfordshire

    蜂蜜色の石造りの家が並ぶ、オックスフォードシャー西部のコッツウォルズの村。劇中で村人たちが暮らす「ダウントン村」は、ほぼこの村そのままです。

    主な対応関係は次の通りです。

    • セント・メアリー教会 — 劇中の「聖ミカエル・諸天使教会」。マシューとメアリーの結婚式など、節目の場面はここで撮影されました。
    • 旧バンプトン図書館(チャーチゲート・ハウス脇) — ダウントンのコテージ病院の外観。
    • チャーチゲート・ハウス — イソベル・クローリーの家。

    村がロケ地に選ばれたのは、電線や現代的な看板が少なく、エドワード朝の画面を作るために消すものが少なかったからだと言われます。実際に歩いてみると、通りの幅も建物の高さも100年前からほとんど変わっていないことが分かります。

    観光地化された村ではないので、住民の生活の場であることを忘れずに歩きたい場所です。

    エリア
    オックスフォードシャー州(ロンドンから約120km)
    最寄り駅
    Paddington 駅から Oxford 駅まで約1時間、そこからバスまたはタクシーで約40分
    見学の可否
    村は自由に歩けます。教会は通常開いていますが、礼拝中は見学を控えてください。公共交通の本数が少ないため、レンタカーかツアー利用が現実的です。
    ひとこと
    同じコッツウォルズのバーフォードやバイブリーと組み合わせると、1日で回る価値のある行程になります。

    グランサム・ハウス(クローリー家のロンドン邸宅)の内部

    3. バシルドン・パーク

    Basildon Park

    一家が「ロンドンの家」に滞在する場面で使われた屋敷。実際にはバークシャー州にあり、ナショナル・トラストが管理しています。

    1770年代に建てられたパッラーディオ様式の邸宅ですが、この建物の見どころは一度死にかけてから蘇ったという来歴にあります。20世紀に入って所有者を失い、両大戦では兵舎として使われ、戦後は屋根が抜け、内装の一部は売り払われて海を渡りました。1950年代には解体寸前でした。

    これを買い取ったのがイリフ卿夫妻です。夫人は流出した装飾品を各地から買い戻し、失われた部分は同時代の他の館から救い出した部材で埋めて、20年以上かけて館を復元しました。今見ている壮麗な内装は、そうやって集め直されたものです。

    ドラマの豪奢な室内が、実は破壊と収集の産物である──というのは、この館を知ったうえで見ると味わいが変わります。

    エリア
    バークシャー州(ロンドンから約70km)
    最寄り駅
    Paddington 駅から Reading 駅まで約30分、そこからタクシーで約20分
    見学の可否
    ナショナル・トラストの有料公開施設。開館日は季節により異なります。

    劇場版 バッキンガム宮殿の内部

    4. ランカスター・ハウス

    Lancaster House

    劇場版で国王夫妻がダウントンを訪れる物語の、王室側の場面。バッキンガム宮殿の内部として撮影されたのがこの建物です。

    『ブリジャートン家』でシャーロット王妃の宮殿の内装に使われていたのとまったく同じ建物で、英国の時代劇において「宮殿の中」を撮りたいときの事実上の標準ロケ地になっています。バッキンガム宮殿そのものを撮影に貸し出すことは基本的にないため、金箔の大階段と豪奢な広間を備えたこの館に需要が集中する、という構図です。

    同じ部屋が、ある作品では1810年代の王妃の謁見室になり、別の作品では1920年代のジョージ5世の宮殿になる。ロケ地を知ってから見ると、そういう「使い回し」が見えるようになります。

    エリア
    セント・ジェームズ(ロンドン市内)
    最寄り駅
    Green Park 駅
    見学の可否
    英国政府の迎賓施設のため通常は非公開。毎年9月のオープン・ハウス・フェスティバルなど、限られた機会にのみ公開されます。

    グランサム・ハウスの外観

    5. ブリッジウォーター・ハウス

    Bridgewater House

    クローリー家のロンドンの邸宅「グランサム・ハウス」の外観に使われた建物。グリーン・パークのすぐそば、クリーヴランド・ロウに面して立っています。

    設計したのはチャールズ・バリー。ハイクレア城を設計したのと同じ建築家です。屋敷の外観と一家の本邸が、意図せず同じ建築家の手による建物で統一されている、という偶然があります。

    19世紀半ばにブリッジウォーター伯爵家のために建てられ、当時この家が所蔵していた美術コレクションは、個人の所蔵としてはロンドン随一と言われました。現在は個人所有のオフィスとして使われており、内部の見学はできません。

    すぐ隣がランカスター・ハウス、その先がセント・ジェームズ宮殿。歩いて数分の範囲に、ダウントンのロンドン関連ロケ地が固まっています

    エリア
    セント・ジェームズ(ロンドン市内)
    最寄り駅
    Green Park 駅
    見学の可否
    個人所有の建物で内部見学は不可。公道から外観のみ見られます。

    シリーズ5 ヨークの街路

    6. ミドル・テンプル

    Middle Temple Lane & Hall

    シティとウェストミンスターのあいだ、テムズ川に向かって下る石畳の一角。劇中ではヨークの街として撮影されました。

    ここはインズ・オブ・コート、すなわち法廷弁護士(バリスター)を養成し、資格を与える四つの法曹院のひとつです。中世以来、独自の自治権を持つ区域として、ロンドンのただ中にありながら別の統治下に置かれてきました。今も現役の法律事務所が軒を連ねています。

    ミドル・テンプル・ホールは1570年代に完成した食堂で、二重ハンマービーム構造の木造天井が当時のまま残っています。ここで1602年、シェイクスピアの『十二夜』が上演記録に残る最初の公演を迎えました。作者自身が出演していた可能性も指摘されています。ホールの長テーブルは、エリザベス1世が寄贈したという伝承のあるオーク材です。

    ガス灯の名残りと石畳が続くこの区画は、車の入らない静けさもあって、19世紀の画面を撮るには理想的な場所になっています。

    エリア
    テンプル(シティ西端)
    最寄り駅
    Temple 駅、Blackfriars 駅
    見学の可否
    路地と中庭は平日の日中であれば通り抜けできます。ミドル・テンプル・ホールの内部は公開日が限られるため、事前に確認が必要です。
    ひとこと
    隣接するテンプル教会は、円形の身廊を持つテンプル騎士団の12世紀の教会。合わせて訪ねる価値があります。

    シリーズ最終話 再会の場面

    7. ザ・リッツ

    The Ritz London

    ピカデリーに面した1906年開業のホテル。シリーズ最終話でイーディスとバーティが再会する場面が、ここのレストランで撮影されました。

    創業者セザール・リッツは、ホテル業の常識をいくつも書き換えた人物です。客室ごとに専用の浴室を備えるという当時としては破格の設計、電話の各室設置、そして「淑女が同伴者なしで公の場で食事をしてよい」空間としてホテルのレストランを開いたことなど、現在の高級ホテルの標準の多くがここから始まりました。建物自体も、鉄骨造にポートランド石を貼るというロンドンでは初期の工法で建てられています。

    現在も名物はアフタヌーンティーで、パーム・コートで一日に何回かに分けて供されます。要予約で、男性はジャケットとネクタイ着用が必須という明確なドレスコードがあり、当日ふらりと立ち寄れる場所ではありません。数か月前から予約が埋まります。

    エリア
    ピカデリー / セント・ジェームズ
    最寄り駅
    Green Park 駅
    見学の可否
    営業中のホテル。外観は自由に見られます。アフタヌーンティーやレストランの利用は要予約・ドレスコードあり。
    ひとこと
    ブリッジウォーター・ハウス、ランカスター・ハウスとは徒歩数分。ダウントンの市内ロケ地はこの一帯に集中しています。

    ほかの作品のロケ地