Netflix Series · 2020–

    ブリジャートン家のロケ地巡り

    Bridgertonグリニッジ + 市内 / 1日

    『ブリジャートン家』が描くのは1810年代の摂政時代ロンドンですが、当時の街並みがそのまま残っている場所はほとんどありません。制作陣が採ったのは、ロンドンとその周辺に散らばる建物を一軒ずつ選び、継ぎ合わせて架空の街を組み立てるという手法でした。

    そのため「ブリジャートン家の外観」と「その室内」は別の建物ですし、王妃の宮殿にいたっては外観と内装がまったく違う場所にあります。ここでは実際に訪ねられるロケ地を、劇中のどの部分に化けたのかと一緒に整理します。

    ランカスター・ハウスは英国政府の迎賓施設で、通常は一般公開されていません。訪問を旅程に組み込む場合は、毎年9月のオープン・ハウス・フェスティバルなど、限られた公開機会を事前に調べる必要があります。

    掲載スポット

    ブリジャートン家の外観

    1. レンジャーズ・ハウス

    Ranger's House

    シリーズを象徴する、あの赤レンガの屋敷です。グリニッジ・パークの西端に立つ18世紀初頭のジョージ王朝様式の邸宅で、イングリッシュ・ヘリテッジが管理しています。

    「ブリジャートン家」として使われているのは外観だけです。玄関前の階段でキャラクターたちが行き交う場面はここで撮られていますが、一歩入った屋内は別のスタジオセットに切り替わります。ドラマの家の内側を探しに行っても見つからない、というのはロケ地巡りでよくある落とし穴です。

    建物自体の見どころは、館内のヴェルナー・コレクション。ダイヤモンド王として財を成したユリウス・ヴェルナーが集めた約700点の個人コレクションで、ルネサンス期の宝飾品、マヨリカ焼、中世の象牙細工などが、当時の邸宅の雰囲気のまま並べられています。

    正面に立つと、劇中でブリジャートン家の玄関前を彩っていた藤の花が実物ではないことにも気づきます。あれは撮影用に取り付けられた造花で、季節を問わず同じ画を撮るための工夫でした。

    エリア
    グリニッジ / ブラックヒース
    最寄り駅
    Cutty Sark(DLR)から徒歩約20分、Blackheath 駅から徒歩約10分
    見学の可否
    イングリッシュ・ヘリテッジの有料施設。開館は季節によって週数日に限られるため、必ず公式サイトで開館日を確認してください。外観は公園側からいつでも見られます。
    ひとこと
    グリニッジ・パークの丘を登れば旧王立天文台と本初子午線。同じ日にまとめて回れます。

    シャーロット王妃の宮殿の内部

    2. ランカスター・ハウス

    Lancaster House

    王妃が社交界の令嬢たちを謁見する、あの豪奢な広間です。バッキンガム宮殿から歩いてすぐの場所にありますが、宮殿そのものではありません。

    1825年、のちのヨーク公フレデリックのために着工された邸宅で、金箔と大理石に覆われた大階段を持つ新古典主義建築です。19世紀にはバッキンガム宮殿よりも豪華だと言われたほどで、ヴィクトリア女王が当時の所有者を訪ねた際に「あなたの宮殿から私の家へ帰ります」と述べたという逸話が残っています。

    現在は英国政府が国際会議や外交儀礼のために使う施設です。オバマ大統領の国賓訪問、コモンウェルス首脳会議、ブレグジット方針を示した「ランカスター・ハウス演説」など、現代史の舞台としても繰り返し登場します。

    映像作品にとっては、宮殿の内部を撮りたいときの定番の代役でもあります。『ザ・クラウン』のバッキンガム宮殿、そして後述する『ダウントン・アビー』の王室の場面も、同じこの建物で撮られています。

    エリア
    セント・ジェームズ
    最寄り駅
    Green Park 駅
    見学の可否
    政府の迎賓施設のため通常は非公開です。毎年9月のオープン・ハウス・フェスティバルなど、限られた機会にのみ一般公開されることがあります。外観は Stable Yard 側の道路から見られます。
    ひとこと
    隣はセント・ジェームズ宮殿、目の前はグリーン・パーク。王室関連の建物が集中する一角です。

    シャーロット王妃の宮殿の外観

    3. ハンプトン・コート宮殿

    Hampton Court Palace

    ランカスター・ハウスが王妃の宮殿の「中身」なら、こちらは「外側」です。馬車が乗りつける正面や庭園の場面で使われています。

    16世紀にウルジー枢機卿が建て、ヘンリー8世が取り上げて拡張した宮殿。チューダー朝の赤レンガ部分と、クリストファー・レンが17世紀末に増築したバロック様式の部分が、一つの建物の中で正面からぶつかり合っているという珍しい構造をしています。庭を挟んで両側に立つと、まるで別の宮殿を見ているようです。

    見どころは、ヘンリー8世の大広間、天井から吊るされた調理器具がそのまま残るチューダー朝の厨房、そして1690年代に植えられた世界最大級のブドウの木。敷地内の生垣迷路は1700年頃に作られ、現存する英国最古のものです。

    摂政時代を描いたドラマがチューダー朝の宮殿を使っている、というのは時代考証としては大胆ですが、映像作品では珍しくない選択です。

    エリア
    リッチモンド・アポン・テムズ(ロンドン南西部)
    最寄り駅
    Hampton Court 駅(Waterloo から約35分)
    見学の可否
    有料の一般公開施設。年間を通じて開いています。庭園のみのチケットもあります。
    ひとこと
    中心部からは離れますが、テムズ川沿いを走る電車が快適です。半日は見ておきたい規模。

    シリーズ2 レディ・ダンベリーの舞踏会

    4. サイオン・ハウス グレート・コンサバトリー

    Syon House & The Great Conservatory

    西ロンドンに残る、ノーサンバランド公爵家のロンドン邸宅。首都に残る唯一の公爵家の大邸宅とされています。

    もとは1547年に修道院跡地に建てられた館ですが、現在の姿を決定づけたのは18世紀です。1760年代、第1代ノーサンバランド公爵が建築家ロバート・アダムに内装を任せ、新古典主義の室内装飾の代表作と呼ばれる一連の部屋が生まれました。外観の質素な四角い箱と、中に入った瞬間の色彩の豊かさの落差が、この館の見どころです。

    ドラマで舞踏会の会場になったグレート・コンサバトリーは、館ではなく庭にある巨大な温室です。1820年代にチャールズ・ファウラーが設計したもので、鉄とガラスで大空間を覆う建築としては先駆的な存在でした。後の万国博覧会の水晶宮に影響を与えたとも言われます。ガラス張りのドームの下で行われる舞踏会という絵は、この建物なしには成立しませんでした。

    エリア
    ブレントフォード(ロンドン西部)
    最寄り駅
    Syon Lane 駅、または Gunnersbury 駅からバス
    見学の可否
    有料の一般公開施設。館と庭園で公開期間が異なり、館は春から秋の週数日に限られます。事前に公式サイトで確認を。
    ひとこと
    隣接するロンドン・ミュージアム・オブ・ウォーターアンドスチームなど、この一帯は産業遺産が集まっています。

    摂政時代のロンドンの街路 / 式典の場面

    5. 旧王立海軍学校とペインテッド・ホール

    Old Royal Naval College & The Painted Hall

    グリニッジの川沿いに広がる、左右対称の壮大な建物群。世界遺産「海事都市グリニッジ」の中核で、ドラマでは石畳の街路や馬車の走る場面として繰り返し登場します。

    もとは1690年代に傷病兵となった水兵のための施設として、クリストファー・レンの設計で建てられました。当初は宮殿にする計画もありましたが、そこから川の眺めが遮られることを嫌ったメアリー2世の意向で、建物を二つに割って中央に視線の通り道を残す配置になりました。この「真ん中が空いている」という不自然な設計が、結果として映像に映えるあの広い石畳の空間を生んでいます。

    必見はペインテッド・ホールです。画家ジェームズ・ソーンヒルが1707年から約19年をかけて天井と壁を埋め尽くした空間で、「イギリスのシスティーナ礼拝堂」と呼ばれます。もともとは食堂として設計されましたが、あまりに豪華すぎて水兵たちの日常の食事には使われなくなった、という経緯があります。

    エリア
    グリニッジ
    最寄り駅
    Cutty Sark(DLR)徒歩約5分
    見学の可否
    敷地と芝生は無料で通り抜けできます。ペインテッド・ホールは有料(チケットは1年間有効)。
    ひとこと
    テムズ川のリバーボートで中心部から向かうと、船から見上げる正面の構図がそのまま劇中の画になります。

    屋内の階段・広間の場面

    6. クイーンズ・ハウス

    Queen's House

    旧王立海軍学校の二棟のあいだ、視線の通り道の突き当たりに立つ白い建物です。1616年にイニゴー・ジョーンズが設計した、イギリス初の本格的な古典主義建築として建築史に必ず登場します。

    当時のイギリスは、まだ木組みと切妻屋根の建物が当たり前でした。そこにイタリアのパッラーディオ様式を持ち込んだこの真っ白な直方体は、同時代の人々の目にはほとんど宇宙船のように映ったはずです。以後300年の英国建築の方向を決めた一棟と言っていい存在です。

    内部で目を引くのがチューリップ階段。中心に支柱を持たない自立式の螺旋階段としてはイギリス初のもので、下から見上げた渦巻きの構図は写真によく使われます。

    館内は国立海洋博物館の一部として運営される美術館で、海洋画のコレクションを収蔵しています。入場は無料です。

    エリア
    グリニッジ
    最寄り駅
    Cutty Sark(DLR)徒歩約8分
    見学の可否
    入場無料。特別展のみ有料の場合があります。
    ひとこと
    旧王立海軍学校、国立海洋博物館、旧王立天文台と徒歩圏内にまとまっています。

    劇場・オペラハウスの場面

    7. ハックニー・エンパイア

    Hackney Empire

    東ロンドンに残るエドワード朝の劇場。1901年、当時ミュージックホール建築を量産していた建築家フランク・マッチャムの設計で開場しました。

    ミュージックホールとは、19世紀の労働者階級の娯楽として発展した大衆演芸場のことです。チャップリンやスタン・ローレルが初期に立った舞台でもあり、イギリスの大衆芸能がここから映画へ流れ出していった現場と言えます。

    戦後はテレビ局のスタジオ、その後ビンゴホールへと転用され、取り壊し寸前まで追い込まれた時期もありました。1980年代に市民運動によって劇場として再生され、現在も現役で公演を行っています。ドラマでは、その豪奢な内装が摂政時代の劇場として使われました。

    エリア
    ハックニー(ロンドン東部)
    最寄り駅
    Hackney Central 駅、Hackney Downs 駅
    見学の可否
    現役の劇場です。内部を見るには公演チケットを購入するのが確実。外観はいつでも見られます。
    ひとこと
    周辺はロンドンでも独特の空気を持つエリア。ブロードウェイ・マーケット(土曜)と組み合わせると回りやすいです。

    ほかの作品のロケ地