英国の労働契約・就業規則の基本|written statement・試用期間・解雇と退職

    UK Employment Contracts: Written Statements, Probation & Dismissal

    雇用開始時に受け取るべきwritten statementの中身、試用期間中に知っておくべきこと、解雇・退職時の通知期間や権利について、ロンドンで働く日本人向けに整理しました。

    日本の雇用契約と大きく異なる点のひとつが、英国では口頭での合意やメールのやり取りだけで雇用がスタートすることも珍しくないことです。しかし、書面での契約内容の受け取りは法律上の権利であり、これを理解しておくことは、後々のトラブル(給与未払い、不当な解雇、シフトの一方的な変更など)から自分を守るうえで重要です。

    この記事では、雇用契約に関する基本的な権利と、試用期間・解雇・退職の場面で確認すべきポイントを整理します。

    1. written statement(雇用条件の書面)を受け取る権利

    2020年4月6日以降、雇用主からwritten statement of employment particulars(雇用条件を記載した書面)を受け取る権利は、従業員(employee)だけでなく労働者(worker)にも適用されるday 1の権利です。試用期間中であっても、雇用開始日、または開始日より前に交付されなければなりません。

    初日までに記載が必要な主な項目(principal statement)

    • 雇用主・労働者の氏名
    • 雇用開始日、および継続勤務が始まった日
    • 給与の金額・支払い頻度・支払い方法
    • 労働時間、および曜日ごとの労働時間がどう変動しうるか
    • 勤務地(複数拠点がある場合はその旨)
    • 職務内容の簡単な説明
    • 有給休暇の権利
    • 試用期間の有無とその内容

    雇用開始から2か月以内に追加で提供が必要な項目

    • 病気休暇・傷病手当の取り扱い
    • 年金制度に関する情報
    • 通知期間(notice period)
    • 苦情申し立て(grievance)・懲戒(disciplinary)手続きの案内先

    書面が交付されないこと自体を理由に解雇された場合、勤続期間に関わらず**自動的に不当解雇(automatically unfair dismissal)**とみなされる可能性があります。

    2. 試用期間(probation period)の注意点

    試用期間は英国の制定法上の制度ではなく、契約上の取り決めです。つまり、試用期間の長さや条件は会社ごとに異なり、written statementに明記されているかどうかを必ず確認する必要があります。

    一般的な実務慣行として押さえておきたい点:

    • 試用期間の長さは3〜6か月程度が一般的ですが、法律上の上限・下限はありません
    • 試用期間中は通知期間(notice period)が短く設定されていることが多く(例: 1週間)、必ず契約書で確認が必要です
    • 試用期間中の解雇であっても、差別(Equality Act 2010が保護する事由によるもの)や、賃金請求権の行使を理由とする解雇は違法です。勤続期間の長さに関わらず主張できます
    • 試用期間を延長する場合、契約書にその根拠となる条項があるか、または本人の同意があるかを確認しましょう

    3. 通知期間(notice period)の法定最低ライン

    雇用主・労働者のどちらが契約を終了する場合でも、一定の通知期間(notice)を置く必要があります。契約書に記載がない場合や、記載された期間が以下の法定最低ラインを下回る場合は、法定の最低ラインが適用されます。

    継続勤務期間雇用主から労働者への法定最低通知期間
    1か月未満通知不要
    1か月〜2年未満1週間
    2年〜12年未満勤続1年ごとに1週間(例: 5年なら5週間)
    12年以上12週間(上限)

    労働者から雇用主への通知期間は、契約書に定めがなければ最低1週間が目安ですが、多くの契約では「1か月前通知」などより長い期間が定められています。必ず自分の契約書の該当条項を確認してください。

    4. 解雇・整理解雇(redundancy)で確認すべき権利

    不当解雇(unfair dismissal)の申立ては、原則として継続勤務2年以上でなければ資格を得られません(2026年時点の制度)。ただし、差別を理由とする解雇や、最低賃金・有給休暇などの法定権利を主張したことを理由とする解雇は、勤続期間に関わらず争うことができます。

    制度変更の予定について:Employment Rights Act(雇用主のセクハラ防止義務等を含む一連の法改正)により、不当解雇の申立て資格要件は2027年1月1日から継続勤務6か月に短縮される予定です。2026年時点ではまだ施行されていないため、現行の2年ルールが適用されます。最新の施行状況はgov.ukで確認してください。

    整理解雇(redundancy)の場合は、継続勤務2年以上であれば法定整理解雇手当(statutory redundancy pay)を受け取る権利があります。金額は年齢・勤続年数・週給(上限あり)に応じて計算され、gov.ukの計算ツールで試算できます。

    退職する場合は、契約書に定められた通知期間を守ったうえで書面(メールでも可)で意思表示するのが一般的です。有給休暇の未消化分は、退職時に金銭精算される権利があります。

    5. 契約内容に疑問があるときの相談先

    契約書の内容が不明確、または実際の労働条件と食い違っている場合は、以下の窓口が利用できます。

    1. Acas(0300 123 1100):契約・解雇・懲戒手続きなど、雇用に関するあらゆる相談を無料で受け付けています。
    2. Citizens Advice:契約書の読み方や、次に取るべき手続きについて、対面・オンラインで相談できます。
    3. Employment Tribunal:交渉で解決しない場合の最終手段。多くの請求はまずAcasのEarly Conciliationを経る必要があります。実際の申立て手順はサービスチャージ未払いで審判所に申立てた記録で公開しています。

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