英国 家族・配偶者ビザガイド|£29,000の証明と、関係の真実性の立証
UK Family Visa (Partner and Spouse)
英国人または定住者のパートナーとして英国で暮らすためのルートです。審査は「英国側の収入」と「関係が本物であること」の2軸で行われ、後者の準備は交際期間中から始まっています。審査に約12週間かかる点も、他ルートと大きく異なります。
このビザの概要
- 誰が申請できるか
- 英国市民・定住者(ILR保持者)等の配偶者/婚約者/未婚パートナー
- 最低所得(英国側)
- 年£29,000。子どもの人数で増額されません
- 貯蓄での代替
- £88,500(6ヶ月以上保持)
- 申請料
- 英国外から £2,064/英国内から £1,407
- IHS
- 年£1,035(付与期間分を前払い)
- 付与される期間
- 2年9ヶ月 → 更新で2年6ヶ月
- **審査期間**
- **約12週間**(英国外から)
- 永住まで
- **5年**(この期間はカウントされます)
家族ビザ(配偶者・パートナービザ)の審査は、2つのまったく異なる軸で行われます。
- お金 — 英国側のパートナーに年収 £29,000、または貯蓄 £88,500 があること
- 関係の真実性 — 「本物の、継続的な関係」であることを証拠で示せること
日本人が苦戦しがちなのは2つめです。英国の審査官は偽装結婚を警戒しており、「愛し合っています」という主張ではなく、共同名義の契約書、往復の渡航記録、継続的な連絡の記録といった生活の痕跡で判断します。
そして厄介なことに、これらの証拠は交際期間中にしか集められません。申請の直前に「そういえば証拠が要る」と気づいても、過去に遡って作ることはできません。
もう1点、実務上の落とし穴があります。
審査期間が約12週間。他のルート(約3週間)の4倍です
結婚式、出産、転居、仕事の退職——予定があるなら、ここから逆算してください。
このページは、その2軸の準備を具体的に整理します。
目次
1. 誰が申請できるか
「英国側のパートナー」の資格が先に決まります
英国側のパートナーが、次のいずれかであること
- 英国市民(British citizen)
- ILR(永住権)保持者
- EU Settlement Scheme の settled status 保持者
- 難民・人道保護の地位を持つ人
- 一部の長期滞在許可を持つ人
**Skilled Worker などの一時的なビザで滞在している人のパートナーは、この「家族ビザ」ではなく、そのビザの扶養家族(dependant)として申請します。**要件も費用も異なるので、混同しないでください。
申請者側の関係の区分
| 区分 | 要件 |
|---|---|
| 配偶者(spouse)/シビルパートナー | 法的に有効な婚姻・シビルパートナーシップ |
| 未婚パートナー(unmarried partner) | 2年以上、夫婦同様に同居していること |
| 婚約者(fiancé(e))/将来のシビルパートナー | 入国後6ヶ月以内に英国で結婚する意思 |
未婚パートナーの「2年間の同居」は厳格です
事実婚として申請する場合、2年以上の同居を証明する必要があります。「交際して2年」ではなく「同居して2年」です。
証明には、両者の名前が記載された書類、または同じ住所宛の書類が使われます。
- 共同名義の賃貸契約書
- 同じ住所宛の公共料金の請求書、銀行明細
- 住民票(日本の場合。認証翻訳が必要)
**遠距離恋愛の期間は、この2年に算入されません。**遠距離だった場合は、結婚してから配偶者として申請する方が確実です。
婚約者ビザの注意点
婚約者ビザ(fiancé(e) visa)で入国した場合、6ヶ月間は就労できません。英国で結婚し、その後に配偶者ビザへ切り替えて初めて働けるようになります。申請料も2回分かかるため、日本で先に結婚してから配偶者ビザで渡英する方が、時間もお金も節約できるのが一般的です。
実務メモ
- 日本で結婚した場合、日本の婚姻届受理証明書に加えて、英訳(認証翻訳)が必要です。在英日本国大使館でも英文の証明書を取得できます。
- 婚約者ビザを選ぶのは、「英国で挙式したい」など明確な理由がある場合に限られます。多くのケースでは、先に結婚してしまう方が合理的です。
2. 最低所得 £29,000 をどう証明するか
満たすのは申請者ではなく、英国側のパートナーです
基本ルール
英国側のパートナーに、年間 £29,000 以上の収入があること。
**2024年4月11日以降の新規申請に適用される基準です。**それ以前から同じパートナーで申請を続けている方には、旧基準(£18,600)の経過措置が適用される場合があります。
**重要:子どもの人数によって金額は上がりません。**旧制度では子ども1人につき加算がありましたが、現在は一律です。
認められる収入源(カテゴリ別)
| 収入源 | 必要な証明期間 |
|---|---|
| 雇用(同じ雇用主で6ヶ月以上) | 直近6ヶ月の給与明細と銀行明細 |
| 雇用(6ヶ月未満/転職直後) | 直近12ヶ月の収入合計で判定 |
| 自営業 | 直近の完了した会計年度(確定申告書 SA302 等) |
| 年金 | 受給証明 |
| 不動産収入・投資収益 | 直近12ヶ月分 |
| 現金貯蓄 | 後述 |
組み合わせることも可能ですが、組み合わせのルールは複雑で、自営業と貯蓄の併用など一部の組み合わせは認められません。
貯蓄で代替する場合
収入が足りない場合、現金貯蓄 £88,500 で代替できます。
- 6ヶ月以上、継続して保持していること
- 即座に引き出せる形であること(定期預金・投資は不可)
- 申請者・パートナーいずれかの名義、または共同名義
収入と貯蓄を組み合わせる計算式
不足分を貯蓄で埋める場合、次の式で計算します。
必要な貯蓄 = £16,000 + (£29,000 − 年収)× 2.5
例:年収 £20,000 の場合 £16,000 + (£29,000 − £20,000)× 2.5 = £16,000 + £22,500 = £38,500
申請者(日本側)の収入は、原則カウントされません
英国外から申請する場合、申請者本人の日本での収入は算入できません。英国側のパートナーの収入だけで判定されます。
例外は、申請者がすでに英国で就労許可を持って働いている場合(英国内からの申請・更新時)です。
実務メモ
- 英国側のパートナーが日本に住んでいる場合、「英国に戻って年収£29,000以上の職に就くことが確定している」ことを示せば、その内定で判定される場合があります(確定した job offer が必要)。
- 自営業の証明は書類が多く、会計年度の区切りにも左右されます。該当する場合は、早い段階で会計士に相談してください。
補足
£38,700への引き上げは、実施されていません
2023年末に「最低所得を段階的に £38,700 まで引き上げる」という方針が発表され、多くの記事がそれを前提に書かれました。
**この引き上げは実施されず、停止されています。**2026年8月時点の基準は £29,000 のままです。
古い記事を読んで諦めてしまった方は、現行基準で改めて検討してください。
3. 関係の真実性をどう立証するか
証拠は、交際期間中にしか集められません
英国の審査官は、偽装結婚(sham marriage)の可能性を必ず検討します。求められるのは感情の表明ではなく、関係が実在し、継続していることを示す客観的な記録です。
提出すべき証拠のカテゴリ
1. 関係の法的証明
- 婚姻証明書、シビルパートナーシップ証明書(+認証翻訳)
- 未婚パートナーの場合、2年以上の同居を示す書類
2. 同居・生活の共有
- 共同名義の賃貸契約書(最も強い証拠)
- 共同名義の銀行口座、公共料金の契約
- 同じ住所宛に届いた、双方の名前の郵便物(発行元が異なるものを複数)
3. 会い続けてきた記録
- 航空券の半券、搭乗券、パスポートの入出国スタンプ
- ホテルの予約確認、旅行の記録
- 一緒に写っている写真(時系列に沿って、場所と日付を添えて)
4. 継続的な連絡
- メッセージアプリの履歴(全期間ではなく、時期を分散させた抜粋)
- 通話記録
- 交際期間全体にわたって連絡が続いていることを示す配置にする
5. 双方の家族・友人との関係
- 家族と一緒に写った写真
- 結婚式の記録、招待状
- 家族・友人からの支援の手紙(署名・連絡先入り)
遠距離だった場合こそ、証拠が重要です
同居していない期間が長いほど、「会い続けてきた」「連絡を取り続けてきた」記録の重要性が上がります。
- 渡航のたびに搭乗券を保存する
- パスポートのスタンプは消さない(自動化ゲートでスタンプが押されない場合、航空券の記録で補う)
- メッセージ履歴は、定期的にエクスポートして保存する
証拠の出し方
- 時系列に整理する(審査官が関係の流れを追えるように)
- 量より質。同種の書類を100枚出すより、異なる種類の証拠を揃える方が有効
- 写真には日付・場所・写っている人の説明を添える
- 日本語の書類には認証翻訳を添える(翻訳者の氏名・連絡先・正確性の宣言・署名・日付)
ヒント
いま交際中の方へ:今日から残せる記録があります
家族ビザを将来検討する可能性があるなら、今この瞬間から証拠を蓄積してください。申請時に過去へ遡って作ることはできません。
- 渡航のたびに搭乗券・予約確認メールをフォルダに保存する
- メッセージ履歴を定期的にエクスポートしておく
- 一緒に写った写真を、日付がわかる形で保管する
- 同居を始めたら、契約はできる限り共同名義にする
- 公共料金は、それぞれの名前で1つずつ契約しておくと同居の証明になる
数年後の自分を助けるのは、この地道な蓄積だけです。
4. 英語要件と、その他の必要書類
英語のレベルは段階的に上がります
英語要件は3段階
| 申請の段階 | 必要なレベル |
|---|---|
| 初回申請 | CEFR A1 |
| 更新(2年9ヶ月後) | CEFR A2 |
| 永住(ILR)申請時 | CEFR B1 + Life in the UK テスト |
A1 は入門レベルで、UKVI 承認の SELT(Secure English Language Test)を受験して証明します。日本国内にも試験会場があります。
免除されるケース
- 英語圏の大学で学位を取得した
- 65歳以上
- 心身の障害により受験が困難な場合
その他の必要書類
- 有効なパスポート
- CAS に相当するものはありません(学校スポンサーが不要なため)
- 住居の証明 — 家族が住むのに十分な広さがあり、過密(overcrowding)に該当しないこと。賃貸契約書、間取り、大家の同意書など
- 結核(TB)検査証明 — 日本は対象国ではないため、日本在住の方は不要です
- 犯罪経歴証明書 — 通常は不要
住居要件の注意点
「十分な住居」は法定の過密基準で判定されます。パートナーの実家に同居する場合でも、その家が基準を満たすことを証明する必要があります。大家(または持ち家なら本人)の同意書を添えてください。
5. 費用と申請の流れ
審査に約12週間。逆算してください
費用
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 申請料(英国外から) | £2,064 |
| 申請料(英国内から・切替/更新) | £1,407 |
| IHS(年額) | £1,035 |
| 生体情報登録 | £19.20 |
総額の例:英国外から初回申請(本人のみ)
初回は2年9ヶ月が付与されるため、IHS は3年分を前払いします。
- 申請料:£2,064
- IHS:£1,035 × 3年 = £3,105
- 生体情報登録:£19.20
- 合計:約£5,188.20
永住までに初回+更新の2回申請するため、5年間の総額は100万円を大きく超えます。ここに永住申請(£3,226)が加わります。
流れ
- 収入または貯蓄の要件を満たす状態を作る(6ヶ月〜12ヶ月の実績が必要)
- 英語試験(A1)を受験
- 関係の証拠を時系列に整理する
- オンライン申請
- 申請料と IHS を支払う
- 本人確認と書類提出(ビザ申請センター)
- 結果を待つ — 約12週間
- 承認後90日以内に入国
急ぐ場合
Priority(£500)が利用できる場合があります。ただし家族ビザは書類が多く審査が複雑なため、優先審査でも標準期間を超えることがあります。制度上も「短縮を保証するものではない」とされています。
永住(ILR)まで
5年です。家族ビザの期間はフルにカウントされます。
- 初回:2年9ヶ月
- 更新:2年6ヶ月
- 合計 5年3ヶ月 → 5年経過時点で ILR を申請
ILR には Life in the UK テストと CEFR B1 が必要です。申請料は £3,226。
その後、ILR 取得から12ヶ月(英国市民の配偶者の場合)で市民権(帰化)の申請資格が得られます。
実務メモ
- 審査期間12週間は「標準」であり、繁忙期や追加確認があるとさらに延びます。渡航予定日から最低4ヶ月は逆算してください。
- 申請中もパスポートはビザ申請センターに預けたままになります。この間、他国への渡航が必要なら、パスポート返却オプションの有無を事前に確認してください。
- 更新(extension)は英国内から行います。期限が切れる前に必ず申請してください。1日でもオーバーステイすると、永住までの連続性が断たれる可能性があります。
よくある質問
参考・公式情報
- GOV.UK: UK family visa(配偶者・パートナー)
- GOV.UK: UK family visa – 財政要件
- GOV.UK: UK family visa – 必要書類
- GOV.UK: Immigration health surcharge(医療サーチャージ)
- GOV.UK: Visa decision waiting times(審査期間)
- GOV.UK: Indefinite leave to remain(永住権)
料金・時刻・制度は変更されます。本記事は2026年8月時点の情報です。渡航前に各公式サイトで最新情報をご確認ください。
本記事は情報提供を目的としたもので、法的助言ではありません。英国移民法は 頻繁に改正され、個別の事情によって適用される規則が変わります。実際の申請にあたっては 必ず GOV.UK の最新情報を確認し、複雑な事案(過去の却下歴・オーバーステイ・ 犯罪歴がある場合など)では OISC 登録アドバイザーまたは事務弁護士にご相談ください。