イギリスの免税は使えない|2021年に廃止された制度と、残った抜け道
No More Tax-Free Shopping in Britain
空港で書類にスタンプをもらって20%戻る、という手続きは今のイギリスに存在しません。2021年1月に廃止されたためです。それでも現地で買うほうが安い理由と、唯一残っている2つの例外について整理します。
要点
- 現在の制度
- 旅行者向けVAT還付は無い(2021年1月に廃止)
- VAT税率
- 標準20%。表示価格に含まれている
- 空港の免税店
- これは別物。保安検査後の店舗は従来どおり
- 残った例外
- 日本の住所へ店から直送する場合のみVATがかからない
- 北アイルランド
- 扱いが異なる。イングランドとは別の規則
イギリスで買い物をする前に、ひとつだけ片付けておくべき誤解があります。
イギリスの旅行者向け免税制度は、2021年1月に廃止されました。 店で書類を作ってもらい、空港の窓口でスタンプを受け、20%が戻ってくる——この手続きは、現在のイギリスには存在しません。
これは細かい注意ではなく、予算の組み方そのものを変える話です。£500 の買い物に対して「£100 戻ってくる」と見込んでいたなら、その £100 は最初から存在しません。表示価格をそのまま支払う前提で計算を組み直す必要があります。
ややこしいのは、廃止から5年が経った今も、日本語で書かれた古い記事が大量に残っていることです。「イギリス 免税」で検索すると、還付書類の書き方を解説したページが今でも上位に出てきます。それらは2020年以前の情報です。
そのうえで、現地で買うことに意味がなくなったわけではありません。理由が免税ではなくなった、というだけです。
目次
1. 何が廃止されたのか
VAT Retail Export Scheme、2021年1月1日をもって終了
廃止されたのは VAT Retail Export Scheme(付加価値税小売輸出制度)という仕組みです。イギリス国外に居住する旅行者が、持ち帰る商品にかかった付加価値税の還付を受けられる制度でした。
流れはこうでした。店で「Tax Free の書類を」と申し出て、パスポートを見せて書類を作ってもらう。空港で税関にその書類と商品を提示してスタンプをもらい、窓口またはカード口座で還付を受ける。この一連の手続きが、2021年1月1日をもって終了しました。
イギリス政府が挙げた廃止の理由は、制度の運用コストが高いこと、不正利用に弱いこと、そして恩恵が高額商品を買う一部の旅行者と高級店に偏っていたことでした。
廃止後、小売業界と観光業界からは一貫して再導入を求める声が出ています。英国小売協会(BRC)や VisitBritain は、制度廃止が観光消費を年間で数十億ポンド規模で押し下げたとする試算を示し、撤回を求めてきました。しかし2026年8月時点で、再導入は実現していません。
議論そのものは続いているので、将来的に変わる可能性はあります。ただし「議論されている」ことと「使える」ことは別です。旅程を組む時点では、免税は無いものとして計算してください。
実務メモ
- 廃止は2021年1月1日。それ以前の日本語記事は今も検索に残っている
- 再導入の議論は続いているが、2026年8月時点で実現していない
- 予算は表示価格をそのまま払う前提で組む
注意
古い記事に注意
「イギリス 免税」で検索すると、還付書類の書き方を解説した2020年以前のページが今でも上位に出ます。 手順が詳しく書かれているほど古い記事である可能性が高い、と考えて構いません。
2. それでも現地が安い理由
免税ではなく、元の定価差とセール
免税が無くなっても、イギリスで買うほうが安いものは多く残っています。理由が変わっただけです。
理由1: 本国価格そのものが安い。 イギリス発のブランドは、日本では輸入コストと販売代理店の利益が上乗せされます。バブアー、ドクターマーチン、チャーチのような靴とアウターは、この差が大きく出るカテゴリです。ニールズヤード レメディーズのように、日本の半額に近い価格で並ぶブランドもあります。
理由2: セール期の下げ幅が大きい。 イギリスのセールは年2回が本番です。
- 6月下旬〜7月: 夏物のセール
- 12月26日(ボクシング・デー)から: 年末年始のセール
この時期は主要ブランドが一斉に下げるので、同じ品の価格が平常時と大きく変わります。旅程が近いなら、買う予定のものだけ時期をずらす価値があります。
理由3: 日本に入っていない品がある。 価格の話ではありませんが、本店限定のブレンドや、日本の店舗では扱わないラインは、現地でしか買えません。
逆に、現地でもさほど安くならないものもあります。紅茶やコスメは日本の並行輸入品と大きく変わらないことがあり、期待した差が出ません。「イギリスだから何でも安い」ではなく、カテゴリごとに差が違うと考えてください。
実務メモ
- アパレル・靴・食器は差が大きい。紅茶やコスメは差が小さいことがある
- セールは6月下旬〜7月と、12月26日から
- 日本の価格を控えていくと、店頭で比較できる
3. 空港の免税店は別の話
廃止されたのは「街で買って還付を受ける」制度だけ
ここが最も混同されやすい点です。廃止されたのは、街の店で買った商品について後から税の還付を受ける制度であって、空港の免税店(Duty Free)ではありません。
空港の保安検査を通過した後(制限エリア内)にある免税店は、従来どおり営業しています。 ここでの購入は最初から税抜き価格で、還付手続きも不要です。ヒースローの各ターミナルには、酒、香水、菓子、化粧品の免税店が入っています。
つまり構図はこうなります。
| 街の店 | 空港の制限エリア内 | |
|---|---|---|
| 表示価格 | VAT込み | VAT抜き |
| 還付手続き | 制度が無い | 不要(最初から税抜き) |
| 品揃え | 広い | 限られる |
実務上の使い分けは明確です。品揃えと選ぶ楽しさを取るなら街、税を避けたいなら空港。ただし空港の免税店は品揃えが限られ、免税でも街の価格と大差ないことがあります。 酒とタバコは差が出やすい一方、菓子や雑貨は街のスーパーのほうが安いことも珍しくありません。
液体物の扱いという点でも空港には利点があります。制限エリア内で買った香水や酒は、100ml超でもそのまま機内に持ち込めます。 街で買うと預け荷物に入れる必要があるので、ジョー マローンのような香水を買うなら、空港で買うほうが荷造りは楽になります。
実務メモ
- 空港の免税店は健在。廃止されたのは街での還付制度だけ
- 免税でも街のスーパーより高いものがある。菓子や雑貨は特に
- 制限エリア内で買った液体は100ml超でも機内に持ち込める
ヒント
香水を買うなら空港が楽
街で買った100ml超の香水は預け荷物に入れる必要があります。 保安検査後の免税店で買えばそのまま機内に持ち込めるうえ、割れる心配も減ります。買い忘れの回収先としても使えます。
4. 残っている2つの例外
日本への直送と、北アイルランド
完全に手段が無いわけではありません。2つだけ例外があります。
例外1: 店から日本の住所へ直送してもらう。
商品をイギリス国外へ直接発送する場合、輸出扱いになるため英国のVATがかかりません。 ハロッズやセルフリッジズのような大型店、一部のブランド直営店がこの配送に対応しています。
ただし手放しで得になるわけではありません。
- 日本側で輸入時に消費税がかかります(課税価格が一定額を超える場合)
- 品目によっては関税もかかります
- 国際送料が別途必要で、重い品ほど高くつきます
- 手元に届くまで時間がかかり、その場で持ち帰れません
送料と日本側の税を足すと、英国VATの20%を上回ることが普通にあります。高額で軽いもの(宝飾品など)でのみ検討する価値がある、という理解が実態に近い。店頭で見積もりを出してもらってから判断してください。
例外2: 北アイルランドは扱いが違う。
北アイルランド(ベルファストなど)は、ブレグジット後の取り決めにより物品の扱いがイングランド・スコットランド・ウェールズと異なります。旅行者向けの制度についても別の規則が適用される場合があります。
ただしロンドン中心の旅行では関係しません。ロンドンで買った商品について、北アイルランド経由で何らかの還付を受ける、といったことはできません。ベルファストを訪れる予定がある場合のみ、現地の最新情報を確認してください。
実務メモ
- 直送はVATが外れるが、送料と日本側の税で相殺されることが多い
- 検討する価値があるのは高額で軽いものだけ
- 北アイルランドは別規則。ロンドン旅行には関係しない
補足
直送は必ず見積もりを取ってから
「VATが20%外れる」と聞くと得に見えますが、国際送料と日本側の消費税・関税を足すと逆転することが普通にあります。 店頭で総額の見積もりを出してもらい、持ち帰る場合と比べてから決めてください。
よくある質問
参考・公式情報
料金・時刻・制度は変更されます。本記事は2026年8月時点の情報です。渡航前に各公式サイトで最新情報をご確認ください。