ロンドンのデパート|買う店ではなく、見る店として行く
London Department Stores: Go to Look, Not to Buy
ハロッズ、リバティ、フォートナム&メイソン、セルフリッジズ。ロンドンのデパートは建物と売り場そのものが観光地で、何も買わずに出てきても成立します。店ごとの見どころと、日曜に6時間しか開けられない法律について。
要点
- 日曜の営業
- 法律により最大6時間。10〜18時の間に限られる
- 対象
- 売場面積 280m² 超の大型店すべて(イングランドとウェールズ)
- 入場料
- 全店無料。買わずに出てよい
- 見どころ最優先
- リバティの木造建築と、ハロッズのフードホール
- 服装
- ハロッズも含め、指定なし。普段着で入れる
ロンドンのデパートを「買い物の場所」として紹介すると、話の半分が抜けます。ハロッズもリバティも、買い物客より見物客のほうが多い店です。実際、何も買わずに1時間歩き回って出てくる人が大勢いて、それは正しい使い方です。
理由は単純で、建物と売り場そのものが見どころだからです。リバティは1920年代に難破した軍艦の木材で建てられたチューダー様式の建築で、中央が吹き抜けになっています。ハロッズのフードホールは天井と壁がヴィクトリア朝のタイル装飾で埋まっていて、食品を売る場所としては明らかに過剰です。入場無料の美術館だと思えば、費用対効果はかなり良い。
そのうえで、行く前に知っておくべき制度がひとつあります。日曜だけ、これらの店は6時間しか開けられません。 個々の店の方針ではなく法律です。日曜の午前中に行って閉まっていた、という失敗はこれが原因です。
目次
1. 日曜は6時間しか開かない(法律)
個店の都合ではなく、1994年の日曜取引法
イングランドとウェールズでは、売場面積が 280平方メートルを超える店は、日曜に6時間しか営業できません。 しかもその6時間は10時から18時の間に収める必要があります。1994年の日曜取引法(Sunday Trading Act 1994)による規定です。
結果として、主要デパートの日曜はおおむね 11時30分〜18時 や 12時〜18時 といった形に落ち着きます。開店の30分ほど前から「ブラウジング(見るだけ)」で入れる店もありますが、その間は会計ができません。
つまり実務上こうなります。
- 日曜の午前中にデパートは開いていない。 10時に着いても入れない
- 日曜は使える時間が平日の半分以下になる
- 複数のデパートを日曜にはしごするのは、時間的にかなり厳しい
イースター・サンデーとクリスマスは、大型店は終日閉店です。 これも法律で決まっていて、例外がありません。この2日にロンドンにいる場合、デパートは旅程から外してください。
なおスコットランドにはこの規制がありません。 エディンバラやグラスゴーでは日曜も通常営業です。同じイギリスでも扱いが違います。
小さな店(280平方メートル以下)は対象外なので、日曜も普通に開いています。ボンド・ストリートのブティックやコヴェント・ガーデンの個人店は、この制限を受けません。
実務メモ
- 日曜にデパートへ行くなら、昼以降に予定を組む
- イースター・サンデーとクリスマスは大型店が終日閉まる
- スコットランドは規制対象外。ロンドンだけの話ではない点に注意
注意
日曜午前は、デパートが選択肢から消える
法律による制限なので、店に問い合わせても変わりません。日曜の午前中は市場(コロンビア・ロードなど)や美術館に充て、デパートは午後に回す。 これが唯一の対処法です。
2. リバティ — 建物がいちばんの見どころ
軍艦の木材で建てられたチューダー様式
建築だけを目的に行ってよい店です。 ロンドンのデパートで1軒だけ選ぶなら、買い物をしない人にはここを勧めます。
現在の建物は1924年に完成したもので、2隻の軍艦を解体した木材が使われています。外観はチューダー様式の木組みで、リージェント・ストリートの近代的な街並みの中で明らかに浮いています。中に入ると、木造の吹き抜けが最上階まで貫いていて、各階が回廊のように吹き抜けを囲んでいます。 床も手すりも木で、歩くと軋みます。デパートというより古い邸宅の中にいる感覚に近い。
売り場で有名なのはリバティ・プリントです。花柄を中心とした細かいプリント生地で、1着分の生地から、スカーフ、ポーチ、文具、ハンカチまで展開されています。土産という観点では、生地そのものより小物のほうが現実的です。ハンカチやカードケースなら £15〜30 程度で、軽く、かさばらず、柄で「リバティのもの」だと分かります。
3階(イギリス式には2nd floor)の生地売り場は、買わなくても見る価値があります。壁一面にプリント生地のロールが並ぶ光景は、この店でしか見られません。
最寄りはオックスフォード・サーカス駅で、リージェント・ストリートとカーナビー・ストリートの間にあります。カーナビー・ストリートと合わせて回ると動線が短くて済みます。
実務メモ
- 買わなくてよい。建物の吹き抜けと生地売り場だけで元が取れる
- 土産にするなら生地より小物。ハンカチやポーチが £15〜30
- オックスフォード・サーカス駅から徒歩。カーナビー・ストリートが隣接
3. ハロッズ — フードホールだけ見て出てもいい
服装の指定はない。普段着で入れる
ナイツブリッジにある、ロンドンで最も名前の知られたデパートです。売り場面積が巨大で、全フロアを見ようとすると半日が消えます。時間がないなら、地上階のフードホールだけ見て出るのが効率的です。
フードホールはヴィクトリア朝のタイル装飾で天井まで埋め尽くされていて、食品売り場としては明らかに過剰な作りです。肉、魚、チョコレート、紅茶、チーズがそれぞれ独立した部屋のように区画されていて、装飾を見るだけで20〜30分は使えます。
服装について心配する人が多いのですが、現在のハロッズに服装の指定はありません。 スポーツウェア、短パン、スニーカーで入れます。ただし店側は「著しく場にそぐわない服装の場合は入店を断ることがある」という趣旨の但し書きを残しているので、極端な格好でなければ問題ない、という理解で足ります。普段の観光の服装で何も起きません。
写真撮影は場所によって制限があります。 宝飾品売り場、バンキングホール、金庫室などでは撮影が禁じられていて、警備員から止められることがあります。フードホールは一般に撮影されていますが、店員や他の客が写り込む撮り方は避けてください。
土産として買うなら、ハロッズのロゴ入りの紅茶缶やビスケットが定番です。緑と金のパッケージがそのまま「ハロッズで買った」ことを示すので、中身より見た目で選ぶ買い方が成立します。
最寄りはナイツブリッジ駅で、駅を出てすぐです。ハイド・パークとヴィクトリア&アルバート博物館が徒歩圏にあります。
実務メモ
- 全館を回ろうとしない。フードホールだけで十分に見物になる
- 服装の指定はない。普段着のままで入れる
- 宝飾品売り場と金庫室は撮影禁止。止められたら素直に従う
ヒント
土産はロゴ入りの缶が手堅い
緑と金のハロッズのパッケージは、中身が何であれ「ハロッズで買った」と一目で伝わります。 紅茶缶やビスケットなら £10〜25 程度で、缶は食べ終わったあとも残ります。
4. フォートナム&メイソンとセルフリッジズ
紅茶の店と、ショーウィンドウの店
残る2店は性格がはっきり分かれます。
フォートナム&メイソンは1707年創業の食品店で、ピカデリーにあります。デパートというより紅茶と食料品のテーマパークで、フロアごとに紅茶、ジャム、ビスケット、ハンパー(贈答用のバスケット)が並びます。
土産としての強さは、あの淡いターコイズ(オイスターブルー)の缶にあります。中身が同じ紅茶でも、この缶に入っているだけで受け取った側の印象が変わる。缶入りで £15〜25 なので、全員に配るものではなく、1〜2人に絞って買う品です。紙袋も同じ色で、そのままラッピングに使えます。
建物は外から見ても分かりやすく、正面時計の仕掛け(1時間ごとに創業者の人形が出てくる)が名物です。ピカデリー・サーカスとグリーン・パークの中間にあり、周辺の観光と組み合わせやすい立地です。
セルフリッジズはオックスフォード・ストリートにある大型デパートで、この4店の中では最も現代的です。建築の見どころという点ではリバティに及びませんが、ショーウィンドウの展示が凝っていることで知られ、季節ごとに大きく作り替えられます。クリスマス時期の窓は、それ自体が見物として扱われます。
品揃えは若い層向けのブランドが厚く、実際に服や靴を買うつもりがあるなら、この4店では最も現実的な選択肢です。ただしオックスフォード・ストリートは常時混雑していて、特に土曜は歩くのに体力を使います。
実務メモ
- フォートナム&メイソンは紅茶の缶が主役。1〜2人に絞って買う
- 本店に行けない場合、セント・パンクラス駅と空港にも店舗がある
- セルフリッジズは実際に買う人向け。見物ならリバティのほうが強い
5. デパートを回るときの実務
免税、支払い、荷物
4店に共通する実務です。
免税(VAT還付)は受けられません。 イギリスは2021年に旅行者向けの還付制度を廃止しました。ハロッズでもセルフリッジズでも、空港で書類にスタンプをもらって20%戻る、という手続きは存在しません。表示価格をそのまま支払う前提で予算を組んでください。
唯一残っているのは、店から日本の住所へ直接配送してもらう方法です。この場合は輸出扱いになるので英国のVATがかかりません。ただし日本側で輸入時に消費税と関税がかかり、送料も別途必要なので、必ず得になるとは限りません。高額品でのみ検討する価値があります。
支払いはカードで問題ありません。 タッチ決済が普通に使えます。日本発行のJCBは使えない店があるので、VisaかMastercardを持っておくと確実です。
大きな荷物は預けられます。 主要デパートにはクロークがあり、買い物中に荷物を預けられます。ただしスーツケースは断られることがあるので、出発日に立ち寄るなら駅のロッカーを使ってください。
時間の見積もりは、1店あたり最低1時間です。ハロッズを本気で回るなら3時間以上かかります。日曜は6時間しか開かないので、日曜に2店以上を回る計画は現実的ではありません。
実務メモ
- 免税は無い。表示価格をそのまま払う前提で予算を組む
- JCBが使えない店がある。VisaかMastercardを用意する
- 1店あたり最低1時間。日曜に2店は厳しい
よくある質問
参考・公式情報
- GOV.UK — Trading hours for retailers: the law
- GOV.UK — Tax on shopping and services(VAT還付の廃止)
- Liberty London(公式)
- Fortnum & Mason(公式)
料金・時刻・制度は変更されます。本記事は2026年8月時点の情報です。渡航前に各公式サイトで最新情報をご確認ください。