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    申立ての進め方(まとめ)

    How to bring a claim, end to end

    職場での問題提起から、回収までの全体像。各段階の期限、実際にかかった費用、提出物のチェックリスト、そしてやってはいけないこと。

    ここまでの各章を、実際に動くための順序としてまとめ直します。

    全体像を先に示すとこうなります。

    職場で問題提起 → Acas Early Conciliation → certificate → ET1提出 → 相手方の答弁期間 → 証拠提出 → 審理 → 判決 → (支払われなければ)強制執行

    私の場合、最初の問題提起から判決までがおよそ8か月、実際の回収の動きが出るまではさらに数か月かかりました。

    短距離走ではありません。 ただ、各段階でやることは、それほど複雑ではありません。

    1. 全体フローと各段階の期限

    落としてはいけない期限は3つ

    段階やること期限
    1職場内で問題提起し、記録に残す
    2Acas Early Conciliationを申請問題発生から3か月−1日以内に開始
    3調停担当者とやり取り
    4certificate発行解決しなければ発行される
    5ET1提出certificate発行後、残りの期間内。すぐ出す
    6審判所が相手方へ送付提出から数週間
    7相手方の答弁書(ET3)送付から28日以内
    8証拠を相手方へ送付通知に記載された期限
    9証拠を審判所へ送付審理の7日前まで(別の期限)
    10審理
    11判決支払期限は通常14日程度
    12強制執行支払期限を過ぎたら着手

    特に注意すべき期限は3つです。

    1. Acasへの申請期限。 問題が生じてから3か月−1日。これを過ぎると原則として請求できません
    2. ET1の提出期限。 certificate発行後、待たずに出す
    3. 審判所への提出期限。 相手方への送付とは別の期限です。ここは見落としやすい

    期限の計算は、状況によって複雑になります。継続的な未払いの場合、いつを起算点とするかで判断が分かれることもあります。 迷ったら、早めにAcasへ通知してください。 早く出して困ることはありません。

    2. 実際にかかった費用

    自己負担は£80だけだった

    よく聞かれる点なので、はっきり書いておきます。

    項目費用
    Acas Early Conciliation無料
    ET1の提出無料
    審理への出席無料
    通訳(審判所が手配)無料
    弁護士使っていない(本人で対応)
    High Court writの発行費用£80(立替。債務者に加算される)
    HCEO手数料債務者負担

    私が実際に負担したのは、writ発行費用の£80の立替だけです。

    英国のEmployment Tribunalには、現在申立て手数料がありません。過去に手数料が導入された時期がありましたが、後に違法と判断され廃止されています。

    つまり、金銭的なハードルはほぼありません。

    かかるのは、時間と労力です。そちらは相応にかかります。

    3. 提出物チェックリスト

    段階ごとに必要なもの

    Acasへの申請時

    • 自分の氏名・連絡先
    • 相手方の正式な法人名と登記上の所在地(Companies Houseで確認)
    • 問題の概要(短く)
    • 希望する連絡方法(英語に不安があれば、その旨も)

    ET1提出時

    • Acas certificateのreference number(正確に転記
    • 相手方の正式名称・所在地
    • 雇用開始日と終了日
    • 職務内容
    • 請求の内容と根拠(Claim Details)
    • 請求額(gross
    • 求める救済(compensation)
    • 通訳やその他の配慮の希望

    ET1に証拠を添付する必要はありません。

    証拠提出時

    • 索引(index)を付けた一式にする
    • 請求額の計算書(主張と方法の説明)
    • 算出表(日ごとの数字と計算過程)
    • 日次の売上レポート(Zレポート)
    • シフト表(キッチン・フロア両方)
    • 給与明細
    • 実稼働日数の集計
    • 証人陳述書(あれば)
    • 相手方へ送付した記録(日時・方法)

    審判所からの計算書提出要請があった場合

    • 週給(gross と net の両方)
    • 請求額と算出方法(期間を含む、grossで)
    • 他に請求する項目があればその算出方法

    4. やってはいけないこと

    私が気をつけた点と、危なかった点

    1. 和解の期待で期限を流す

    いちばん危険です。「相手が提案すると言っている」は、期限を止めてくれません。ET1を出した後でも和解はできます。先に出してから交渉する方が安全です。

    2. 感情的に書く

    書きたくなりますが、審判所が判断するのは請求の中身です。淡々と構造的に書いた方が強く読めます。相手方から感情的なメールが来ても、返すのは事実だけで十分です。

    3. Acasを催促しすぎる

    Acasは中立機関です。頻繁な催促は、焦っている印象や感情的な印象を与えかねません。一定期間待ってから、短く丁寧に確認する程度で足ります。

    4. 早い段階で証拠を全部出す

    Early Conciliationは和解を探る手続きであって、正式な証拠提出の場ではありません。この段階で全部見せると、相手に反論を準備する時間を与えることになります。出すべき段階で、出すべき形で出す。

    5. 争点を広げすぎる

    言いたいことは複数あっても、証拠で示せて金額に落とし込める1点に絞る方が、結果的に強くなります。私は不当解雇を含めず、未払い賃金1点に絞りました。

    6. 送達の記録を残さない

    「送ったつもり」は通用しません。日時、方法、宛先を記録してください。大容量ファイルのリンクを使う場合は、有効期限にも注意が必要です。

    7. 判決が出た時点で終わったと思う

    判決は自動的には支払われません。支払期限を過ぎたら、次の手続きに進む準備を始めてください。

    8. 同僚を巻き込むリスクを軽視する

    証言に協力してもらう場合、その人に不利益が及ばないかを先に考えてください。まだ在職している人は、特に慎重に。

    5. 自分のケースで請求できるか判断する

    3つの質問

    質問1 — サービスチャージは、実態として報酬の一部でしたか?

    次に当てはまるなら、その可能性が高いです。

    • 定期的に支払われていた
    • 給与計算を通して処理されていた
    • 給与明細に記載されていた

    その場限りの現金の心付けとは扱いが異なります。

    質問2 — 配分ルールは書面化されていましたか?

    • 書面化されていなかった → 記録から検証できる方法で計算する余地があります。ルールの存在を示す責任は、記録を保持すべき側にあります
    • 書面化されていた → そのルールに沿って計算します。ルールどおりに支払われていなければ、それ自体が問題です

    質問3 — 記録を確保できますか?

    最低限、次の3つが必要です。

    • 日ごとの総サービスチャージが分かるもの
    • 日ごとの稼働人数が分かるもの
    • 自分に実際に支払われた額が分かるもの

    在職中であれば、今すぐ集め始めてください。 辞めた後では格段に難しくなります。

    完全な期間分は要りません。 記録が完全にそろった1か月分があり、運用が期間を通じて変わっていなければ、代表月として使える可能性があります。

    3つとも当てはまるなら、計算してみる価値があります。手順は「自分の未払い額を計算する」にあります。

    6. 最後に

    やってみて思ったこと

    振り返って、いくつか書いておきます。

    弁護士がいなくても進められました。 Acasも審判所も、本人で手続きする人を前提とした説明をしてくれます。英語に不安があっても、通訳を手配してもらえます。

    淡々と進めるほど強くなりました。 感情的なやり取りに付き合わず、事実と数字だけを積んでいく方が、結果的に説得力が出ました。

    時間はかかりました。 最初の問題提起から判決まで8か月ほど。回収の動きが出るまではさらにかかりました。途中で誤った通知が届いたり、相手から不快なメールが来たりもしました。

    それでも、記録は残ります。 たとえこの先どうなっても、客から徴収されたサービスチャージの配分について、審判所が判断した記録は残ります

    同じ状況にいる人が、この記録を使って自分の数字を出せるなら、書いた意味があります。

    なお、相手方は、この判決の取消しを裁判所に申し立てたと述べています。 ただし、申立書の写しは私にも、執行を担当しているHCEOにも届いておらず、裁判所からの通知もありません。 確認できているのは、相手方がそう述べているという事実だけです。実際に申立てがなされ、認められれば結果は変わり得ます。そこも含めて、正直に記録しておきます。