Story

    ウィキッド のあらすじ

    Wicked / Wicked For GoodApollo Victoria Theatre で上演中

    「悪い魔女」と呼ばれた女と、その親友だった女が、どこで道を分けたのかという話です。

    上演時間
    2時間45分(休憩20分込み)
    劇場の推奨
    7歳以上
    劇場
    Apollo Victoria Theatre
    楽曲数
    23

    『オズの魔法使い』で、ドロシーが水をかけて溶かしてしまう西の悪い魔女がいます。この作品は、その魔女が生きていたころの話です。

    彼女の名はエルファバ。生まれつき肌が緑だったというだけで父に疎まれ、行く先々で笑われて育ちました。大学で相部屋になったのは、金髪で人気者のガリンダ。反発しかなかった二人が、あるパーティの夜をきっかけに友人になります。そして数年後、片方は「西の悪い魔女」として国じゅうに憎まれ、もう片方は「南の善い魔女」として祝福される立場になる。

    この作品が問うのは、誰が悪者だったかではありません。誰が悪者ということにされたのか、そしてそれを知っていた友人が何を選んだのかです。動物たちが言葉を奪われていく国で、片方は声を上げて追われ、片方は残って人気者であり続けた。どちらが正しかったのかを、作品は最後まで決めてくれません。

    原作はグレゴリー・マグワイアが1995年に発表した小説で、ミュージカル版は2003年ブロードウェイ、2006年にロンドンのアポロ・ヴィクトリア劇場で開幕しました。以来ずっと同じ劇場で上演が続いています。以下、上演の順に沿って筋を追います。結末は折りたたみの中に入れてあります。

    物語の前提となる時代

    『オズの魔法使い』の続編ではなく、裏側

    時間軸はドロシーがオズに来る前から始まり、途中でドロシーの物語と重なります。竜巻で落ちてきた家、銀の靴、カカシ、ブリキの木こり、臆病なライオン——童話でおなじみのものが、こちら側ではまったく違う経緯で生まれたことになっています。原典を知らなくても筋は追えますが、知っていると仕掛けの効き方がまるで違う作品です。

    オズは、動物が話せなくなっていく国

    作中のオズでは、言葉を持つ動物たち(Animals)が公職から追われ、やがて話す力そのものを失っていきます。エルファバが権力と衝突するのはこの問題をめぐってで、恋愛や嫉妬が原因ではありません。誰かを敵に仕立てて国をまとめる、という政治の話が下敷きにあります。

    映画2部作との対応

    2024年公開の映画『ウィキッド』は舞台の第一幕、2025年の『ウィキッド:フォー・グッド』が第二幕にほぼ対応します。舞台は同じ物語を休憩を挟んで一晩で見せるので、映画を観た方には第一幕の終わりが「Defying Gravity」だと分かっているぶん、休憩の位置が予測しやすいはずです。

    主な登場人物

    プログラムやキャストボードと突き合わせられるよう、英語表記を添えています。

    • エルファバ主人公

      Elphaba

      生まれつき肌が緑の少女。父に疎まれ、車椅子の妹ネッサローズの世話を任されて育ちました。誰よりも強い魔力と正義感を持っていますが、それを使うほど世界から嫌われていきます。のちに「西の悪い魔女」と呼ばれる人物です。

    • ガリンダ / グリンダその親友

      Galinda / Glinda

      金髪で人気者の令嬢。愛されることに長けていて、望まれた自分でいることが得意です。物語の途中で、ある人物への敬意から自分の名前を「グリンダ」に変えます。のちの「南の善い魔女」で、物語の語り手でもあります。

    • フィエロ二人が惹かれる王子

      Fiyero

      何も考えずに生きてきた放蕩の王子。ガリンダと付き合いますが、エルファバに出会って初めて「態度を決める」ことを覚えます。彼が最終的に何を選ぶかが、第二幕の重い場面のひとつになります。

    • ネッサローズエルファバの妹

      Nessarose

      父に溺愛されて育った車椅子の妹。姉の献身を当然のものとして受け取り、やがて姉を責める側に回ります。マンチキンの総督となってから、彼女自身も人を縛る側になっていきます。

    • マダム・モリブルシズ大学の学長

      Madame Morrible

      エルファバの才能を見抜き、引き上げると見せて利用します。この作品でいちばん恐ろしいのは、彼女が魔法ではなく世論で人を殺せることです。「悪い魔女」という呼び名を作り、国じゅうに広めるのが彼女の仕事になります。

    • オズの魔法使い国の頂点

      The Wizard

      エメラルド・シティに君臨する偉大な魔法使い。会ってみると、驚くほど普通の——魔法の使えない——男です。彼が権威を保つために何をしてきたのかが、第一幕の折り返し点になります。

    • ボックマンチキンの学生

      Boq

      ガリンダに恋する小柄な学生。彼女に頼まれてネッサローズをダンスに誘い、そこから抜け出せなくなります。彼の行く末は、童話でおなじみのあの登場人物につながります。

    • ディラモンド教授唯一の動物教師

      Doctor Dillamond

      シズ大学で歴史を教える山羊の教授。オズで動物たちに何が起きているかを最初にエルファバへ告げる人物で、彼自身がその犠牲になっていきます。ガリンダの名前をうまく発音できないことが、のちに効いてきます。

    エルファバの誕生 〜 シズ大学 〜 エメラルド・シティ

    第一幕のあらすじ

    反発しあっていた二人が友人になり、そして袂を分かつまで。幕切れは、エルファバが箒に乗って宙へ舞い上がる「Defying Gravity」です。

    プロローグ — 魔女の死を祝う国

    幕開けは、オズ国民が「西の悪い魔女が死んだ」と喜び祝う場面です。そこへ南の善い魔女グリンダが降り立ち、民衆に問われて魔女の生い立ちを語りはじめます。

    物語のほぼ全体が、グリンダの回想として語られます。つまり観客は最初から「彼女は死んだ」と告げられた状態で、そこに至る道のりを見ていくことになります。

    No One Mourns the Wicked

    シズ大学 — 手違いから始まる同居

    エルファバは、車椅子の妹ネッサローズに付き添う形でシズ大学へ入学します。父の関心は妹だけに向いていて、彼女は世話係として送り出されただけでした。

    入学式でエルファバが思わず魔力を暴発させたのを、学長マダム・モリブルが見逃しません。特別に個人指導を申し出て、いずれ魔法使いの右腕になれると予言します。一方ガリンダは、手違いからエルファバと同室になり、互いへの嫌悪を全力で歌い上げます。

    Dear Old ShizThe Wizard and IWhat Is This Feeling?

    動物たちが言葉を失っていく

    唯一の動物教師ディラモンド教授は、オズ各地で動物が話す力を失いつつあると打ち明けます。証拠を示そうとした授業は妨害され、やがて教授自身が連れ去られます。

    同じころ、王子フィエロが転入してきます。何も考えずに楽しく生きようと歌う彼に、エルファバは苛立ちますが、二人はある一件で協力することになります——授業に持ち込まれた檻の中の子ライオンを、逃がすためです。

    Something BadDancing Through Life

    パーティ — 黒い帽子の夜

    ガリンダは、悪意のこもった贈り物として醜い黒い三角帽子をエルファバに渡します。エルファバはそれを本気で受け取り、パーティに被って現れて嘲笑の的になりました。

    誰も踊らない中央で、彼女は一人で踊り続けます。見ていられなくなったガリンダが隣に並び、同じ動きを真似はじめる。罪悪感と親愛が入り混じったまま、二人はこの夜に友人になります。翌朝ガリンダは、エルファバを「人気者に作り変える」ことを申し出ます。

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    改名と、届かない想い

    ディラモンド教授が連れ去られたあと、ガリンダは彼が自分の名を最後までうまく発音できなかったことを思い出し、その音に合わせて自分を「グリンダ」と呼ばせることにします。彼女なりの弔いです。

    一方エルファバは、フィエロへの気持ちを誰にも言えずにいます。自分はそういう役をもらえる側の人間ではない、と歌う場面が「I'm Not That Girl」です。

    I'm Not That Girl

    エメラルド・シティ — 憧れが壊れる日

    モリブルの推薦で、エルファバはついに魔法使いへの謁見を果たします。グリンダも同行しました。憧れの都で二人が浮かれる「One Short Day」の直後に、この作品の折り返し点が来ます。

    魔法使いはエルファバに、魔法の書『グリメリー』の呪文を唱えるよう促します。彼女が読み上げた瞬間、檻の中の猿たちに翼が生えました。実験だったのです。動物たちから言葉を奪い、監視の道具に変えてきたのは魔法使い本人でした。しかも彼自身には魔法が使えず、権威はすべて演出でできている。

    協力を拒んだエルファバに、モリブルは即座に「魔女が国を脅かしている」という触れ込みを回します。

    One Short DayA Sentimental Man

    Defying Gravity — 第一幕の幕切れ

    塔へ逃げ込んだ二人を衛兵が追います。グリンダは、謝って許しを請えば元の暮らしに戻れると説得しました。エルファバは断ります。

    一緒に来てほしいと誘われたグリンダは、行きませんでした。この場面で二人が選んだものが、そのまま第二幕の立場になります。箒に乗ったエルファバが宙へ舞い上がり、追手に向かって宣言したところで休憩に入ります。

    Defying Gravity

    指名手配から、二人が最後に会うまで

    第二幕のあらすじ

    エルファバが「西の悪い魔女」に作り上げられていく一方で、グリンダは「善い魔女」として祭り上げられます。童話でおなじみの登場人物が、この幕で次々に生まれます。

    善い魔女と、指名手配の魔女

    失踪から時が経ち、モリブルはエルファバに「西の悪い魔女」という呼び名を与えて国じゅうに広めました。同時にグリンダを「善い魔女」として祭り上げ、フィエロを親衛隊長に任じます。

    グリンダとフィエロの婚約が発表される場では、民衆の歓声の中で彼女だけが上の空です。すべてが望みどおりに運んだのに、何ひとつ望んだ形ではない——それを笑顔で歌わなければならない場面が「Thank Goodness」です。

    Thank Goodness

    妹とボック — ブリキの木こりが生まれる

    父の死後、ネッサローズはマンチキンの総督となり、逃げられないようにボックを縛りつけています。訪ねてきたエルファバは、妹の銀の靴に魔法をかけてルビー色に変え、歩けるようにしました。

    ところが自由になったネッサローズを見て、ボックはこれで解放されると喜びます。引き止めようとした彼女の呪文が暴走し、ボックの心臓を縮めてしまう。エルファバは咄嗟の魔法で命だけは救いますが、彼は心臓を持たないブリキの体でしか生きられなくなりました。ボックは、自分をこうしたのがエルファバだと信じたまま去ります。

    The Wicked Witch of the East

    魔法使いの取引と、森の夜

    翼を与えてしまった猿たちを解放するため、エルファバは宮廷へ戻ります。魔法使いは和解を持ちかけ、二人でオズを良くしようと誘いました。彼女が心を動かしかけたところで、檻の奥から出てきたのは、もう話せなくなったディラモンド教授でした。エルファバは誘いを拒み、逃げます。

    助けに現れたフィエロは、グリンダを捨ててエルファバと去りました。森で二人が過ごす短い時間が「As Long As You're Mine」です。

    WonderfulAs Long As You're Mine

    妹の死と、フィエロの選択

    妹の身に何かが起きたと察したエルファバが駆けつけると、既に手遅れでした。空から落ちてきた家がネッサローズを押し潰し、ルビーの靴だけが、ドロシーという少女の足に移っています。

    現れたグリンダと口論になったところへ衛兵が迫り、フィエロは彼女を逃がすために自ら囮になります。連れ去られた彼は拷問を受けることになりました。

    すべてを失ったと知ったエルファバは、彼を救う呪文を必死に唱えます。何をしても悪い方へ転がっていく——善い行いなど一度も報われなかった、と叫ぶのが「No Good Deed」です。

    No Good Deed

    For Good — 二人が最後に会う

    ボックに率いられた群衆が魔女狩りに向かうなか、グリンダは城のエルファバのもとへ辿り着きます。ドロシーたちがすぐそこまで来ていました。

    二人はもう責め合いません。エルファバは魔法の書をグリンダに託し、自分がしてきたことの後始末を頼みます。そして、出会わなければ互いにどうなっていたかを確かめあう。**「あなたのおかげで永久に変わってしまった」と歌うのが「For Good」**で、二人が舞台上で言葉を交わす最後の場面になります。

    March of the Witch HuntersFor Good

    よくある誤解

    『オズの魔法使い』の続編だと思われている

    続編ではなく前日譚で、途中からは童話と同じ時間を裏側から描きます。ドロシーは舞台にほとんど姿を見せず、名前と足音だけで存在します。彼女の視点では「魔女を倒した冒険」だった出来事が、こちら側では友人の死として起きている、という二重構造になっています。

    カカシ・ブリキ・ライオンは、ただの引用だと思われている

    三体とも本編の登場人物です。カカシはフィエロ、ブリキの木こりはボック、臆病なライオンは第一幕でエルファバとフィエロが檻から逃がした子ライオンです。この三つが誰なのかを知って観ると、第二幕の意味が変わります

    「ガリンダ」は誤記だと思われている

    誤記ではありません。第一幕の途中まで彼女の名は本当に「ガリンダ」で、ディラモンド教授がその音をうまく発音できなかったことを受けて、彼女自身が「グリンダ」に改めます。プログラムや歌詞カードで表記が揺れているのはそのためです。

    エルファバは死ぬと思われている

    溶けて消えるのは演出で、彼女は生きています。ただし、そのことを知るのは観客とフィエロだけです。作品がいちばん残酷なのは死なせなかったことのほうで、グリンダは友人が生きていると知らないまま国を治めることになります。

    映画版と舞台版が同じ長さだと思われている

    映画は2部作で、2024年の『ウィキッド』が舞台の第一幕、2025年の『ウィキッド:フォー・グッド』が第二幕にほぼ対応します。舞台は両方を一晩で、休憩20分を挟んで上演します。映画で追加された場面は舞台にはありません。

    観る前に知っておくこと

    • 第一幕の幕切れが「Defying Gravity」です。あの曲が終わると休憩なので、映画を観た方は休憩の位置を予測できます。
    • 『オズの魔法使い』を予習するなら、覚えておくのは4つだけで足ります——竜巻で落ちてきた家、銀(ルビー)の靴、カカシ・ブリキの木こり・臆病なライオン、そしてドロシーが魔女に水をかけること。この4つが全部この作品の中で作られます。
    • 英語は台詞と歌が半々で、言葉遊びが多い作品です。ただし冗談が聞き取れなくても筋には影響しません。人物の関係さえ入れておけば十分に追えます。
    • エルファバとグリンダの二人芝居として観てください。恋愛は物語を動かしますが、主題ではありません。最後に二人が何を言い合うかに向けて、すべてが積み上がっています。
    • 劇場はアポロ・ヴィクトリア。ヴィクトリア駅のすぐそばで、ウエストエンドの劇場街からは少し離れています。当日は劇場の場所を確認してから向かってください。

    よくある質問