ライオン・キング のあらすじ
Disney's The Lion King ・ Lyceum Theatre で上演中
父の死を自分のせいだと思い込んだ子が、それでも帰ると決めるまでの話です。
- 上演時間
- 2時間30分(休憩20分込み)
- 劇場の推奨
- 6歳以上
- 劇場
- Lyceum Theatre
- 楽曲数
- 20曲
目次
幕が開くと、舞台には誰もいません。差し込む光の中で、一人の声が呼びかけるように歌いはじめます。その直後、客席の通路からキリンが、象が、ガゼルの群れが、あなたの座席のすぐ横を通って舞台へ向かっていく。
この最初の10分のために劇場へ行く価値がある、と言われる作品です。動物たちは着ぐるみではありません。演者の顔と体が見えたまま操られる、巨大な人形と仮面です。仕掛けが完全に見えているのに動物にしか見えない——その体験そのものが演出の核になっています。
物語は、ディズニー映画のとおりです。日本の観客にはほとんど説明が要りません。だからこそこの舞台は、知っている物語がどう翻訳されているかを見る作品として成立しています。歌はアフリカの言語のまま歌われる場面が多く、意味が分からなくても圧倒されます。
演出・衣裳・仮面をまとめたのはジュリー・テイモアで、1997年のブロードウェイ初演でミュージカル演出賞を女性として初めて受賞しました。ロンドンでは1999年からライシアム劇場で上演が続いています。以下、上演の順に筋を追います。
物語の前提となる時代
冒頭のあの呼び声は、英語ではありません
舞台がまだ暗いうちに聞こえてくる「ナンツ・インゴニャマ・バギティ・ババ(Nants ingonyama bagithi Baba)」はズールー語で、「ライオンが来るぞ、父よ」といった意味です。作曲したレボ・M が1994年の映画のために書いたもので、舞台版では呪術師ラフィキがこれを歌って物語を始めます。訳詞は付きません。意味が分からないまま浴びるように聴く場面です。
舞台版だけの曲が何曲もあります
映画の楽曲(エルトン・ジョンとティム・ライス)に加えて、舞台版では「One by One」「Shadowland」「Endless Night」「He Lives in You」「Grasslands Chant」「Chow Down」などが足されています。映画のサウンドトラックを聴き込んでいても、初めて聴く曲が何曲も出てきます。ズールー語やコサ語で歌われる曲も多く、これが舞台版の手触りを決めています。
ラフィキは舞台版では女性です
映画のラフィキは男性のマンドリルですが、舞台版では女性に変更され、物語の語り手として役割が大きく増えています。冒頭の「Circle of Life」を歌うのも彼女です。理由は単純で、原作の主要人物に女性がほとんどいなかったためです。
主な登場人物
プログラムやキャストボードと突き合わせられるよう、英語表記を添えています。
- シンバ主人公
Simba
王の息子として生まれた子ライオン。父の死に自分の責任があると思い込み、王国から逃げ出したまま大人になります。子ども時代と成人後で別の俳優が演じます。
- ムファサ父であり王
Mufasa
シンバの父。厳しくも温かい王として描かれ、退場したあとも息子の中で問い続ける存在になります。舞台版では巨大な仮面が俳優の頭上に掲げられ、感情に合わせて前後に傾く仕掛けになっています。
- スカー王の弟
Scar
兄への劣等感を抱え続けてきた叔父。力ではなく言葉と策略で王座を奪います。舞台版の仮面は、彼が感情を高ぶらせると顔の前へせり出してくる作りで、取り繕っているときと本性が出ているときが仮面の位置で分かります。
- ナラ幼馴染
Nala
シンバの幼なじみ。荒れ果てた王国に残り、逃げた彼を連れ戻しに来る側になります。舞台版では彼女が王国を出る決意を歌う「Shadowland」が加えられ、映画より役割が大きくなっています。
- ティモンとプンバァ逃亡先の相棒
Timon & Pumbaa
ミーアキャットとイボイノシシの二人組。「悩まない」という生き方をシンバに教え、結果的に彼の帰還を遅らせます。この作品でほぼ唯一、客席を笑わせる役どころです。
- ラフィキ呪術師のマンドリル
Rafiki
舞台版では女性に変更され、語り手として大きく役割が増えています。冒頭の「Circle of Life」を歌い、終盤ではシンバを水辺へ導いて父と向き合わせます。
- ザズー王の側近
Zazu
ムファサに仕えるサイチョウ。舞台版では演者が青い人形を手に持って操り、その演者自身も表情豊かに演じます。時事ネタを織り込んだ台詞が入ることがあり、公演によって笑いどころが変わります。
シンバの誕生から、逃亡先での成長まで
第一幕のあらすじ
王国の日の出から始まり、父の死と逃亡を経て、「Hakuna Matata」で幕になります。映画では中盤にあたる曲が、舞台では第一幕の幕切れです。
プライド・ロックの日の出
ラフィキの呼び声とともに、サバンナじゅうの動物が集まってきます。この場面で動物たちは客席の通路を通って舞台へ向かいます。象は数人がかりで操られ、キリンは竹馬に乗った演者、ガゼルの群れは車輪付きの装置に並んだ人形です。
王ムファサと妃サラビの子シンバが、次の王として一族にお披露目されます。
Circle of LifeGrasslands Chant
王座を狙う弟
ムファサの弟スカーは、兄への劣等感と王座への執着を抱えています。シンバが生まれたことで王位継承の望みは完全に絶たれました。側近ザズーとのやりとりで、彼が兄をどう見ているかが早い段階で示されます。
The Morning Report
好奇心と警告
幼いシンバは、いずれ王になる日が待ちきれずにいます。父は、王の責任とは何か——命は円環でつながっていて、王もその一部にすぎないことを説きます。
スカーは「あそこへは行ってはいけない」と伝えることで、逆にシンバを象の墓場へ向かわせました。シンバとナラはハイエナに襲われ、ムファサに助けられます。父から本気で叱られたシンバは、初めて自分の軽率さを知ります。
I Just Can't Wait to Be KingChow Down
谷での惨事
スカーはシンバを渓谷へ誘い出し、ハイエナにヌーの群れを暴走させます。舞台版のこの場面は、遠近の違う複数の回転装置で群れを表現し、視界いっぱいが同じ方向に流れていく作りになっています。
ムファサは息子を救い出しますが、崖にしがみついたところを弟に突き落とされました。駆けつけたシンバが見つけたのは、父の亡骸です。スカーは「お前のせいだ」と告げ、二度と戻るなと言い渡します。
Be Prepared
逃亡と、悩まない生き方
王国はスカーとハイエナの支配下に置かれます。逃げ延びて倒れていたシンバは、ティモンとプンバァに拾われました。
過去は考えない、心配しない——「ハクナ・マタタ」という生き方を教えられ、シンバはそのまま何年も過ごします。この曲で第一幕が終わります。映画では物語の中盤にある曲なので、ここで休憩に入ることに戸惑う方がいるかもしれません。
Hakuna Matata
荒廃した王国と、シンバの帰還
第二幕のあらすじ
舞台版で加えられた曲が集中する幕です。ナラの「Shadowland」とシンバの「Endless Night」は映画にありません。
荒れ果てた王国
第二幕は、ズールー語で歌われる「One by One」から始まります。演者が色鮮やかな鳥の凧を掲げて客席通路を練り歩く、物語からは独立した幕間の場面です。
スカーの治世でサバンナは干上がり、獲物は去っていきました。それでもスカーは自分の非を認めず、ナラを妃に迎えようとします。拒んだナラは王国を出る決意をし、群れの女たちに送り出されて旅立ちます。この「Shadowland」は舞台版だけの曲です。
One by OneThe Madness of King ScarShadowland
再会
食料を探して迷い込んだナラが、成長したシンバと鉢合わせします。互いを認め合った二人は惹かれあいますが、ナラが王国の惨状を伝え、戻って王になるよう迫ると、シンバは拒みました。父の死の記憶から、まだ逃げ続けています。
一人になったシンバが夜空に向かって歌うのが「Endless Night」です。これも舞台版で加えられた曲で、映画では描かれなかった「逃げている側の苦しさ」がここで正面から歌われます。
Can You Feel the Love TonightEndless Night
父との対話
ラフィキがシンバを水辺へ導きます。水面に映る自分の姿の中に、シンバは父を見ました。ムファサの声が「お前は自分が何者かを忘れている」と語りかけます。
シンバは王国へ戻る決意を固めます。
He Lives in You (Reprise)
よくある誤解
映画をそのまま舞台にしただけだと思われている
筋は同じですが、曲は同じではありません。「One by One」「Shadowland」「Endless Night」「He Lives in You」「Grasslands Chant」「Chow Down」は舞台版のために書かれたもので、映画にはありません。ラフィキの性別も変わっています。映画を何度も観た方ほど、初めて聴く曲の多さに驚く作品です。
動物は着ぐるみだと思われている
着ぐるみではありません。仮面は俳優の頭上に掲げられ、人形は俳優が手や体で操ります。演者の顔と動きは最後まで隠されません。ジュリー・テイモアはこれを、観客が人形と人間を同時に見る状態として意図的に設計しています。
「Hakuna Matata」は中盤の曲だと思われている
映画では中盤ですが、舞台では第一幕の幕切れです。あの曲が終わると休憩なので、映画の感覚で「まだ半分も進んでいない」と思っていると意表を突かれます。
子ども向けだから安心だと思われている
劇場の推奨は6歳以上です。ただし父が殺される場面と、その亡骸に子が呼びかける場面は、映画で観るのと劇場で観るのとでは重さが違います。暗転と大音量もあるので、小さいお子さん連れの場合はそこだけ想定しておいてください。
観る前に知っておくこと
- 動物たちが客席の通路を通ります。通路側の席だと真横を象やキリンが通っていくので、開演前に自分の席が通路側かどうかを見ておくと、最初の10分の体験が変わります。
- 冒頭の「ナンツ・インゴニャマ」はズールー語です。訳詞は出ません。意味を知らないまま聴く場面として作られています。
- 第一幕は「Hakuna Matata」で終わります。映画の感覚だとまだ中盤なので、休憩の位置を知っておくと慌てません。
- スカーの仮面の位置に注目してください。取り繕っているときは頭上にあり、本性が出ると顔の前へせり出してきます。台詞が聞き取れなくても、彼が何をしているかは仮面で分かります。
- 劇場はライシアム。コヴェント・ガーデンの東、ウォータールー橋のたもとにあります。ウエストエンドの劇場街からは少し歩きます。