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    ジャスト・ロンドンは、ロンドンの深層に迫る力量も器量もない中途半端な存在ですが、旅の判断をほんの少し整える一文が紛れていれば、それだけで存在理由になります。

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    ウォレス・コレクション

    The Wallace Collection

    ウォレス・コレクション

    常設展 無料
    目安 1.5時間

    本日:10:00–17:00

    Hertford House, W1U 3BN

    地図で見る公式サイト

    優美なロココの間は舞踏会の残り香を漂わせる。だが扉の先で待っているのは、鋭い剣と暗い兜。フラゴナールの<<ぶらんこ>>は、その狭間を軽やかに飛び越えていく。

    About

    どんなところか

    ウォレス・コレクションは、ロンドン中心部メリルボーンにあるハートフォード・ハウスを会場とした美術館で、18~19世紀に侯爵家とリチャード・ウォレス卿が収集した美術品や工芸品を展示しています。館内にはフラゴナールの「ぶらんこ」をはじめとするロココ美術、レンブラントやルーベンスなどオールドマスターの名画、さらには武具・鎧、セーヴル磁器や18世紀フランス家具といった多彩な作品が並びます。展示室は邸宅の雰囲気を生かした華やかな内装で、それぞれが異なる色彩と調度品で飾られており、作品と空間が一体となった鑑賞体験が魅力です。1897年にレディ・ウォレスから国に寄贈され、1900年に一般公開が始まって以来、現在も入館無料で開放され、静かに芸術と歴史を楽しめる特別な場所となっています。

    Must See

    これだけは見て帰りたい

    ウォレス・コレクションを短時間で回るなら、まずこの3つ。 展示室の番号は改装で変わることがあるので、当日は館内の案内で確認してください。

    1. 1

      フラゴナール《ぶらんこ》

      1767年頃。ぶらんこをこぐ女性、それを下から見上げる男、脱げて飛ぶ靴。ロココ絵画の官能性と軽妙さを一枚に凝縮した作品で、18世紀フランス絵画の代名詞になっています。

    2. 2

      ハルス《笑う騎士》

      1624年。実際には笑っておらず、口元をわずかに上げているだけなのですが、この表情に「笑う騎士」という通称が付きました。刺繍の一針まで描き込まれた袖の質感が見どころです。

    3. 3

      武具コレクション

      ヨーロッパとオリエントの甲冑・武器が地階にまとまっています。ルネサンス期の精巧な装飾甲冑が中心で、絵画目当てで来た人がここで足を止めることが多い部屋です。

    Route

    着いてからの歩き方

    ウォレス・コレクションに着いたら、この順に見ていくと迷いません。 展示室の番号や配置は改装で変わることがあるので、当日は館内の案内で確認してください。

    1. 到着

      オックスフォード通りから徒歩5分の邸宅

      セルフリッジズの裏手、マンチェスター・スクエアに面した邸宅がそのまま美術館です。看板が控えめで、外から見ると museum に見えないため通り過ぎがちです。買い物客でいっぱいのオックスフォード通りから5分歩くだけで、まったく静かな場所に入れます。入場は無料。

    2. 見どころ

      1階のグレート・ギャラリーが中心

      赤いダマスク織の壁に、ティツィアーノ、ベラスケス、レンブラント、ルーベンス、ヴァン・ダイクが並びます。一つの部屋にこの密度で並んでいる場所は他になく、しかもたいてい空いています。フランス・ハルスの「笑う騎士」(1624年)もここです。

    3. 見どころ

      甲冑の部屋は絵画と同じ規模

      英国有数の武具コレクションが階下にあります。1580年頃に作られたグリニッジ甲冑をはじめ、王侯のために作られた実物が並びます。絵画目当てに来て、こちらのほうに長居する人が少なくありません。

    4. コツ

      28室あるが半日で回れる

      部屋数は28室ありますが、邸宅なので一室ずつが小さく、通しで見ても半日かかりません。10:00から17:00まで開いています。順路の指定がないので、階段を上がって1階から見て、下りながら武具を見る流れが自然です。

    5. 見落としやすい

      家具と陶磁器も本気の収蔵

      壁の絵ばかり見ていると素通りしますが、部屋に置かれた18世紀フランスの家具とセーヴル焼きは、それ自体が世界有数の収蔵品です。展示ケースではなく部屋の一部として置かれているため、調度品だと思われて見過ごされます。

    Artworks

    見どころ作品

    ブランコ

    ブランコ

    ジャン=オノレ・フラゴナール — 1767頃

    **この絵は、注文主の要望通りに描かれています。そして、その要望が凄い。** **まず、絵の構造を見てください。** 三人の人物がいます。 **中央上**——ピンクのドレスの女性が、ブランコで宙に舞い上がっている。 **左下の茂みの中**——若い男が寝そべり、**女性を真下から見上げている。** **右奥の暗がり**——年配の男が、縄を引いてブランコを漕がせている。 **そして、決定的な事実。** 右奥の男は、**左下に男が隠れていることを知りません。** 彼はただ、縄を引いている。自分が漕ぐたびに、茂みの中の男に女性のスカートの中が見えていることに、気づいていない。 **注文の経緯が記録されています。** 依頼したのはサン=ジュリアン男爵という貴族で、最初に別の画家**ガブリエル・フランソワ・ドワイヤン**に持ちかけました。要望はこうです——「**愛人がブランコに乗っているところを描いてほしい。縄を引くのは司教にして、私は彼女の脚が見える位置に配置してくれ。**」 **ドワイヤンは断りました。** 聖職者を使ったこの構図は、さすがに度を越していたからです。話はフラゴナールに回り、**彼は引き受けました。** 最終的に司教は年配の男に置き換えられていますが、構図の発想はそのまま残っています。 **次に、飛んでいく靴を見てください。** 女性の左足から、**サテンの靴が脱げて宙を舞っています。** これは偶然ではありません。18世紀フランスにおいて、**靴を落とす・失うことは、貞操を失うことの婉曲な表現**でした。彼女は今、意図的にそれを蹴り飛ばしている。 **そして、左の彫像を見てください。** キューピッドの像が、**唇に人差し指を当てています。**「しーっ、黙っていろ」という仕草です。**秘密の共犯者として、この場面を見守っている。** **右側にも彫像があります。** イルカに乗ったプットー(幼児の姿の天使)たちで、こちらは何も語りません。 **光の配り方を見てください。** 森の中は全体に暗く、**光は女性にだけ集中して当たっています。** ピンクのドレスが、緑の闇の中で発光しているように見える。縄を引く男は影に沈み、茂みの男も半ば陰にいる。**光そのものが、誰が主役で誰が脇役かを決めている。** **色を見てください。** ピンク、クリーム、ミントグリーン。**パステル調の柔らかい色彩**が全体を覆い、明確な輪郭はどこにもありません。筆は速く、軽く、絵具は薄く置かれている。**ロココ**——18世紀フランス貴族社会の、軽やかで享楽的な美意識そのものです。 **ただし、この絵には時限装置が仕込まれています。** 描かれたのは1767年。**フランス革命の22年前**です。貴族が森の中で戯れ、愛人のスカートを覗いて笑っていた、その時代。**この絵の軽やかさは、後から見ると、崩壊直前の社会の姿**でもあります。 ウォレス・コレクションでは Study(書斎)にあります。無料で、しかも空いています。**ロンドンで最も贅沢な鑑賞体験の一つです。**

    笑う騎士

    笑う騎士

    フランス・ハルス — 1624年

    **タイトルは二重に間違っています。彼は笑っていないし、騎士でもありません。** **まず、口元を見てください。** 大笑いはしていません。**口角がわずかに上がり、口髭の先が跳ね上がっているだけ**です。にやりとしているのか、話しかけようとしているのか、こちらを値踏みしているのか——**判断がつかない。** この曖昧さが、300年間この絵を有名にしてきました。 **「笑う騎士」という題名は、19世紀にイギリスで付けられたもの**です。ハルス自身がそう呼んだわけではなく、彼が騎士だった証拠もありません。おそらく裕福な市民で、**布商人ティーレマン・ルーステルマン**ではないかという説がありますが、**身元は不明**です。分かっているのは、画面に記された年齢——**26歳**、そして制作年**1624年**だけです。 **次に、目を見てください。そして、動いてみてください。** 左へ、右へ。**視線がついてきます。** これは正面を向いて描かれた肖像画に共通して起きる現象で、平面に描かれた顔は、見る角度が変わっても顔の向きが変わらないため、常にこちらを見ているように感じられます。**この絵はその効果が特に強い**ため、部屋のどこにいても見られている感覚があります。 **そして、袖の刺繍に近づいてください。ここがこの絵の本体です。** **遠目には、精緻な刺繍が細部まで描き込まれているように見えます。** ところが、鼻が触れるほど近づくと——**そこにあるのは、素早く走らせた絵具の線と点の集合**です。形を成していない。**一筆も、刺繍の形をなぞっていません。** **フランス・ハルスは、輪郭を描かない画家でした。** 対象を観察し、**筆の勢いだけで質感を「示唆」する。** 一発で決め、直さない。同時代のオランダ絵画が、細密に描き込む方向へ進んでいたのに対し、ハルスの筆跡は乱暴なほど見えています。**この即興性が、人物に動きと生気を与えている。** 19世紀の印象派画家たちは、この筆致に衝撃を受けました。マネもゴッホも、ハルスを称賛しています。 **では、その刺繍には何が描かれているのか。** 実際には見えないのですが、資料によれば以下の象徴が織り込まれています。 - **蜂**、**矢**、**燃える角笛**、**恋人の結び目**、**炎の舌**——**愛の喜びと苦しみ** - **オベリスク**、**ピラミッド**——**力と不動** - **マーキュリーの帽子と杖**——**商業と富** **つまりこの服は、着ている本人を説明する文章です。** 恋をしていて、力があり、商売で成功している——**婚約の記念に描かれた肖像**ではないかという説の根拠にもなっています。 **そして、姿勢。** 彼は腰に手を当て、肘を張り、**下からわずかに見上げる角度**で描かれています。自信、余裕、そしてかすかな挑発。**26歳の男が「どうだ」という顔をしている絵**です。それが、これほど長く人を惹きつけている。 ウォレス・コレクションの Great Gallery にあります。**入館無料**です。

    いちご売りの少女

    いちご売りの少女

    ジョシュア・レイノルズ — 1772–1773年頃

    **18世紀のロンドンで、いちご売りは子どもの仕事でした。** そのことを知ってから、この絵を見ると、印象が変わります。 **まず、少女を見てください。** クリーム色のドレス、ピンクのターバン、首元に青いリボン。腕には、いちごが山盛りになった籠を抱えている。ハート型の輪郭の顔、ターバンの下から覗く前髪、そして——**大きな目が、こちらをまっすぐ見ています。** 少し不安げに、あるいは何かを問いかけるように。 **次に、背景を見てください。** 街路ではありません。**暗い森の中**です。 **ここが、この絵の仕掛けです。** 実際のいちご売りは、ロンドンの雑踏の中で声を張り上げて商売をしていました。レイノルズはその現実の背景を消し、**少女を森という非現実の空間に移した。** 具体的な貧困の情景から切り離すことで、彼女は「いちご売りの子ども」ではなく、**普遍的な子どもの姿**になります。 **光を見てください。** 森は暗く沈み、**光は少女の顔と胸元にだけ強く当たっています。** 背景から人物を切り離し、浮かび上がらせる手法です。レイノルズは**レンブラント**の少女像、特に《窓辺の少女》(ダリッジ美術館)を意識していたと考えられています。 **「ファンシー・ピクチャー」とは何か。** 18世紀イギリスで流行した絵画のジャンルで、**実在の人物の肖像ではなく、物売りや農民の子どもなどを情緒的・理想的に描いた作品**を指します。注文肖像画と違い、**画家が自分の判断で描き、後から売る**。フランスの**グルーズ**が確立した形式を、レイノルズがイギリスに持ち込みました。 **注意深く見ると、感傷の絵でもあります。** 当時のロンドンでは、貧しい子どもが街頭で働くのは日常でした。**その現実を、可愛らしく、詩的に、鑑賞可能なものに変換している。** ファンシー・ピクチャーがなぜあれほど売れたのかを考えると、当時の富裕層の心理も見えてきます。 **技法を見てください。** ドレスのピンクは、**赤や黄のレーキ顔料**(染料を無機物に定着させた顔料)で作られ、その上に**グレーズ**(透明な絵具の層)を何度も重ねています。色が内側から発光しているように見えるのはそのためです。レイノルズは**古典絵画の風合い**を再現しようと生涯実験を続け、その一部は経年で変色・劣化してしまいました。 **モデルは誰か。** 伝統的に**レイノルズの姪**とされていますが、確証はありません。 **この絵には兄弟がいます。** レイノルズは同じ主題で**少なくとも4点**描き、現存するのは**ウォレス・コレクション版と、ボウード・ハウス版の2点**のみです。**X線調査により、ウォレス版はもともとボウード版に近い構図だったことが判明**しており、制作途中で構図を変更したことが分かっています。 **そして、レイノルズ自身の評価。** 彼はこの絵を注文ではなく自分のために描き、**自分のコレクションに置き続けました。** 「自作の中で最も独創的なものの一つ」と語っています。ロイヤル・アカデミー初代会長として、格式ある歴史画を最上位に置く理論を説いた人物が、**私的に最も誇ったのが、いちご売りの少女の絵だった**——ここが面白いところです。 1857年、第4代ハートフォード侯が、詩人サミュエル・ロジャースの遺品オークションで購入しました。

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    Essentials

    基本情報

    大人料金
    無料
    子ども料金
    無料
    滞在時間の目安
    1.5時間
    写真撮影
    撮影自由
    荷物預かり
    無料ロッカーあり(最大サイズ:56cm x 25cm x 45cm)
    最寄駅
    Bond Street(徒歩5分)
    最寄バス停
    Portman Square(徒歩3分)
    音声ガイド
    あり
    カフェショップWi-Fi
    Trivia

    知っていると見え方が変わる話

    作品は原則この館から出ない

    ウォレス夫人の遺贈条件により、収蔵品は貸出も含めて館外に出さないと定められていました。2019年に慈善委員会の認可を得て一部緩和されましたが、基本方針は維持されています。つまり、ここの絵は他所の展覧会では見られません。

    新しい作品を買えない美術館

    同じ遺贈条件により、新規の収蔵ができません。19世紀の貴族の趣味がそのまま凍結された状態で保存されており、その意味で「コレクションそのものが展示品」と言えます。ハートフォード・ハウスという邸宅がそのまま美術館になっています。

    Access

    場所

    Hertford House, W1U 3BN

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