
The Wallace Collection
優美なロココの間は舞踏会の残り香を漂わせる。だが扉の先で待っているのは、鋭い剣と暗い兜。フラゴナールの<<ぶらんこ>>は、その狭間を軽やかに飛び越えていく。
ウォレス・コレクションは、ロンドン中心部メリルボーンにあるハートフォード・ハウスを会場とした美術館で、18~19世紀に侯爵家とリチャード・ウォレス卿が収集した美術品や工芸品を展示しています。館内にはフラゴナールの「ぶらんこ」をはじめとするロココ美術、レンブラントやルーベンスなどオールドマスターの名画、さらには武具・鎧、セーヴル磁器や18世紀フランス家具といった多彩な作品が並びます。展示室は邸宅の雰囲気を生かした華やかな内装で、それぞれが異なる色彩と調度品で飾られており、作品と空間が一体となった鑑賞体験が魅力です。1897年にレディ・ウォレスから国に寄贈され、1900年に一般公開が始まって以来、現在も入館無料で開放され、静かに芸術と歴史を楽しめる特別な場所となっています。
ウォレス・コレクションを短時間で回るなら、まずこの3つ。 展示室の番号は改装で変わることがあるので、当日は館内の案内で確認してください。
1767年頃。ぶらんこをこぐ女性、それを下から見上げる男、脱げて飛ぶ靴。ロココ絵画の官能性と軽妙さを一枚に凝縮した作品で、18世紀フランス絵画の代名詞になっています。
1624年。実際には笑っておらず、口元をわずかに上げているだけなのですが、この表情に「笑う騎士」という通称が付きました。刺繍の一針まで描き込まれた袖の質感が見どころです。
ヨーロッパとオリエントの甲冑・武器が地階にまとまっています。ルネサンス期の精巧な装飾甲冑が中心で、絵画目当てで来た人がここで足を止めることが多い部屋です。
ウォレス・コレクションに着いたら、この順に見ていくと迷いません。 展示室の番号や配置は改装で変わることがあるので、当日は館内の案内で確認してください。
セルフリッジズの裏手、マンチェスター・スクエアに面した邸宅がそのまま美術館です。看板が控えめで、外から見ると museum に見えないため通り過ぎがちです。買い物客でいっぱいのオックスフォード通りから5分歩くだけで、まったく静かな場所に入れます。入場は無料。
赤いダマスク織の壁に、ティツィアーノ、ベラスケス、レンブラント、ルーベンス、ヴァン・ダイクが並びます。一つの部屋にこの密度で並んでいる場所は他になく、しかもたいてい空いています。フランス・ハルスの「笑う騎士」(1624年)もここです。
英国有数の武具コレクションが階下にあります。1580年頃に作られたグリニッジ甲冑をはじめ、王侯のために作られた実物が並びます。絵画目当てに来て、こちらのほうに長居する人が少なくありません。
部屋数は28室ありますが、邸宅なので一室ずつが小さく、通しで見ても半日かかりません。10:00から17:00まで開いています。順路の指定がないので、階段を上がって1階から見て、下りながら武具を見る流れが自然です。
壁の絵ばかり見ていると素通りしますが、部屋に置かれた18世紀フランスの家具とセーヴル焼きは、それ自体が世界有数の収蔵品です。展示ケースではなく部屋の一部として置かれているため、調度品だと思われて見過ごされます。
ウォレス夫人の遺贈条件により、収蔵品は貸出も含めて館外に出さないと定められていました。2019年に慈善委員会の認可を得て一部緩和されましたが、基本方針は維持されています。つまり、ここの絵は他所の展覧会では見られません。
同じ遺贈条件により、新規の収蔵ができません。19世紀の貴族の趣味がそのまま凍結された状態で保存されており、その意味で「コレクションそのものが展示品」と言えます。ハートフォード・ハウスという邸宅がそのまま美術館になっています。
Hertford House, W1U 3BN
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ロンドンには無料で入れる館が多くあります。近くの館と組み合わせて回るのがおすすめです。