The Swing
ジャン=オノレ・フラゴナール, 1767頃
ウォレス・コレクション Study

この絵は、注文主の要望通りに描かれています。そして、その要望が凄い。
まず、絵の構造を見てください。 三人の人物がいます。
中央上——ピンクのドレスの女性が、ブランコで宙に舞い上がっている。 左下の茂みの中——若い男が寝そべり、女性を真下から見上げている。 右奥の暗がり——年配の男が、縄を引いてブランコを漕がせている。
そして、決定的な事実。 右奥の男は、左下に男が隠れていることを知りません。 彼はただ、縄を引いている。自分が漕ぐたびに、茂みの中の男に女性のスカートの中が見えていることに、気づいていない。
注文の経緯が記録されています。 依頼したのはサン=ジュリアン男爵という貴族で、最初に別の画家ガブリエル・フランソワ・ドワイヤンに持ちかけました。要望はこうです——「愛人がブランコに乗っているところを描いてほしい。縄を引くのは司教にして、私は彼女の脚が見える位置に配置してくれ。」
ドワイヤンは断りました。 聖職者を使ったこの構図は、さすがに度を越していたからです。話はフラゴナールに回り、彼は引き受けました。 最終的に司教は年配の男に置き換えられていますが、構図の発想はそのまま残っています。
次に、飛んでいく靴を見てください。 女性の左足から、サテンの靴が脱げて宙を舞っています。 これは偶然ではありません。18世紀フランスにおいて、靴を落とす・失うことは、貞操を失うことの婉曲な表現でした。彼女は今、意図的にそれを蹴り飛ばしている。
そして、左の彫像を見てください。 キューピッドの像が、唇に人差し指を当てています。「しーっ、黙っていろ」という仕草です。秘密の共犯者として、この場面を見守っている。
右側にも彫像があります。 イルカに乗ったプットー(幼児の姿の天使)たちで、こちらは何も語りません。
光の配り方を見てください。 森の中は全体に暗く、光は女性にだけ集中して当たっています。 ピンクのドレスが、緑の闇の中で発光しているように見える。縄を引く男は影に沈み、茂みの男も半ば陰にいる。光そのものが、誰が主役で誰が脇役かを決めている。
色を見てください。 ピンク、クリーム、ミントグリーン。パステル調の柔らかい色彩が全体を覆い、明確な輪郭はどこにもありません。筆は速く、軽く、絵具は薄く置かれている。ロココ——18世紀フランス貴族社会の、軽やかで享楽的な美意識そのものです。
ただし、この絵には時限装置が仕込まれています。 描かれたのは1767年。フランス革命の22年前です。貴族が森の中で戯れ、愛人のスカートを覗いて笑っていた、その時代。この絵の軽やかさは、後から見ると、崩壊直前の社会の姿でもあります。
ウォレス・コレクションでは Study(書斎)にあります。無料で、しかも空いています。ロンドンで最も贅沢な鑑賞体験の一つです。