A Man and a Woman seated by a Virginal
ガブリエル・メツー, 1665年頃
ナショナル・ギャラリー Room 16

17世紀オランダの画家ガブリエル・メツーによるこの作品(1665年頃)は、当時の風俗画にしばしば見られる音楽=愛の寓意を巧みに描き出しています。
画面には、ヴァージナル(小型ハープシコード)を挟んで向き合う男女がいます。若い女性は男性に楽譜を手渡し、男性はその見返りにワイングラスを差し出しています。この軽妙なやり取りは、互いに好意を探り合う穏やかな恋の駆け引きを象徴しています。
さらに、楽器には「我を決して困惑に陥らしめるな(never let me be put to confusion)」といった銘文が刻まれており、これは享楽的な欲望に対する道徳的な警告と解釈されています。
メツーの繊細な筆致と心理的なニュアンスの描写により、この絵は単なる恋愛場面以上の深みを持ち、当時の観衆にとっては娯楽と教訓を同時に提供する作品となっていました。