The Boulevard Montmartre at Night
カミーユ・ピサロ, 1897年
ナショナル・ギャラリー Room 44

1897年、晩年のピサロはグランド・ホテル・ド・ルッシーに部屋を借り、パリの大通り、特にモンマルトル大通りを描きました。19世紀半ばから後半にかけてのパリの都市改造で、バロニックな大通りと商業・余暇空間が整備され、画家たちは新しい都市景観に魅了されました。ピサロは普段の田園風景から都市景観に戻り、光と季節の変化を14回描く計画を立てました。
本作は夜景の唯一作で、人工光のみで照らされた都市環境を描いています。前景には電灯の淡い光球が置かれ、その背後に複数の光源が配され、濡れた舗道に反射する光が精巧に表現されています。ガス灯の温かみある黄色やオレンジの光、路上の馬車の灯火は、赤・白・黄色の小さな点で描かれ、街の複雑な照明を強調します。ピサロは雨上がりの夜を描くことで、光の反射と輝きを際立たせました。
遠近法の処理も重要で、屋根や歩道の斜線、街路樹や街灯の並びが奥行きを生み、遠くのポルト・サン=ドニに向かう三角形の収束点を形成しています。夜空の「V字」も街路の形と呼応し、空間感を強化します。
筆致は点描から離れ、自由で勢いのあるタッチで街の動きと光を表現。雨で濡れた舗道や人々の行き交う様子が、抽象的とも感じられるパッチワークの筆触で生き生きと描かれています。ピサロはこの作品で都市の近代性と人工光の表現に挑戦し、技術的・視覚的に洗練された都市夜景を完成させました。