An Old Woman with a Rosary
ポール・セザンヌ, 1895-6年頃
ナショナル・ギャラリー Room 44

この肖像画は、セザンヌの家に仕えていた老女を描いたもので、彼女はかつて修道女であったと伝えられています。視線は宙をさまよい、手には祈りに用いられるロザリオ(数珠)を強く握りしめています。その姿は美化されることなく、老いの現実をありのままに映し出しています。
セザンヌの友人で作家のジョアシャン・ガスケは、1896年にエクス=アン=プロヴァンス近郊のセザンヌ家でこの作品を発見しました。当時この絵はアトリエの床に置かれており、タバコのパイプから滴る水滴や蒸気の影響で左下には染みが残っています。
容赦のない筆致で刻まれたこの老女の表情と姿は、セザンヌの人間観察の厳しさを示すと同時に、老いと信仰という普遍的なテーマを強く訴えかけています。