Portrait of a Young Man
サンドロ・ボッティチェリ, 1480-1485年頃
ナショナル・ギャラリー Room 51

この作品はイタリア・ルネサンス期を代表する画家サンドロ・ボッティチェリによる肖像画です。当時の肖像画は横顔や斜め向きが主流でしたが、この絵では若者が正面から観る者を見つめています。この正面向きのポーズは本来、キリスト像に用いられるものであり、肖像画としては非常に革新的でした。そのため、若者の姿が単なる人物像以上の精神的な力を帯びています。
また、当時フィレンツェに輸入されていたフランドル地方(現在のベルギーやオランダ)の油彩肖像画から影響を受けつつも、ボッティチェリは伝統的なテンペラ(卵を使った絵具)を使い続けました。油彩に比べて発色が明るく、やや平面的な印象を与えるテンペラは、人物に独特の清澄な雰囲気を与えています。
この絵は、肖像画が単なる「似顔絵」から、精神性や象徴性を担う芸術作品へと発展していく過程を示す重要な一作です。