Bathers (Les Grandes Baigneuses)
ポール・セザンヌ, 1895–1906年頃
ナショナル・ギャラリー Room 45
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ポール・セザンヌ(1839–1906)の《浴女たち(大水浴図)》は、彼が生涯をかけて探究した裸体群像の集大成にあたる作品です。セザンヌは1870年代から男女の裸体を描き続け、約200点に及ぶ浴女の作品を残しました。本作はその中でも最大規模であり、晩年の10年間に取り組んだ3点の大作のひとつです。他の2点とともに、ピカソやマティスをはじめとする20世紀初頭の画家たちに決定的な影響を与え、キュビスムの先駆けとも位置づけられています。
本作は11人の裸体の女性たちが森の中で憩う場面を描きます。湖や川といった入浴の場は描かれず、代わりに草地に並ぶ彼女たちは、彫刻的で建築的な塊としてひとつのピラミッド型の構成を形成します。その形はセザンヌが繰り返し描いた故郷の山、サント=ヴィクトワール山を想起させます。
特徴的なのは、遠近法の破壊と空間の圧縮です。通常であれば遠景は淡く描かれるはずですが、ここでは空の青はむしろ濃く描かれ、大地・木々・人物と同等の存在感を放ちます。さらに裸体の輪郭線には青と黒が繰り返し使われ、光の斑点として機能すると同時に、女性たちを背景と統合し、自然そのものと同化させています。立ち姿の女性の肌に見られる青い斜線は木の幹の線と呼応し、人体と風景の融合を強調しています。
セザンヌの歪んだ人体表現は、彼のデッサン技術の拙さやモデルを雇うことへの照れによるものとも言われますが、それ以上に、人物を自然と同等の存在として構造化するための必然でした。裸体は単なる肉体ではなく、自然と人間の合一を象徴する構築的な要素となっているのです。
セザンヌの《浴女たち》は、古代からルネサンス、ティツィアーノやルノワールに至るまで続いた裸体群像の伝統を引き継ぎながらも、神話的物語を排し、より普遍的で現代的な自然との調和のヴィジョンを提示します。それは同時にセザンヌ自身の芸術の総決算であり、近代絵画を決定的に変革した作品群の頂点といえるでしょう。