The Stove in the Studio
ポール・セザンヌ, 1865年頃
ナショナル・ギャラリー Room 44

この静物画は、セザンヌが若い頃にパリで描いた作品と考えられています。描かれているのはストーブや花瓶、キャンバスやパレットといった質素なアトリエの道具であり、無名の画家として過ごした厳しい暮らしぶりを暗示しています。高い視点から見下ろすように配置され、セザンヌ自身がイーゼル越しに眺めていた光景を思わせます。
暗い色彩と厚みのある絵肌はこの時期のセザンヌの特徴で、彼はしばしばパレットナイフで絵具を塗り込んでいました。日常の簡素な道具を正面から描く構図は、セザンヌがルーヴル美術館で学んだシャルダンの影響を強く感じさせます。特に1869年にルーヴルに収蔵された《銅の水差し》と通じる点が多くあります。
この作品の最初の所有者は、セザンヌの幼なじみで作家のエミール・ゾラでした。若き芸術家の厳しい現実と、その中で育まれた鋭い観察眼が凝縮された一枚です。