Avenue at Chantilly
ポール・セザンヌ, 1888年
ナショナル・ギャラリー Room 44

本作はポール・セザンヌによる油彩画(1888年)で、パリ北方24マイルのシャンティイの森の並木道を描いた作品です。セザンヌは滞在中、並木道の構造や周囲の景色をじっくり観察し、城そのものよりも人工的に整備された自然の幾何学的構造に関心を持って描きました。これは、彼の故郷エクス=アン=プロヴァンスの自宅、ジャス・ド・ブッファンにあった栗の木の並木道を思い起こさせる構図でもあります。
画面は鉛筆で下描きした上に色面を重ねる手法で描かれ、中央付近は何度も描き直され、一方で下地のベージュが残された部分もあり、色彩の多層性と奥行きの表現に寄与しています。セザンヌは暖色(テラコッタ色の屋根や黄土色の並木道)と寒色(青・緑・灰色)を巧みに組み合わせ、光と影、遠近感の変化を描写しています。また、木製の柵や画面中央の支柱が画面に人間的なスケール感と視点を与えています。
この作品では、セザンヌが一生をかけて取り組んだ平面上での三次元空間表現の問題が明確に示されており、色彩・筆触・構図・光の操作を通じて、自然と人間の存在、そして観る者の視点を統合しています。また、水彩で培った重ね塗りや色の透過性の技法も応用され、油彩でありながら水彩的な軽やかさを感じさせる点も特徴です。
セザンヌの芸術的探求の中で、風景を通じて空間の構造を理解し、色彩と形態の相互作用で視覚体験を構築するという試みが、最も明確に示された重要な作品の一つです。