Hillside in Provence
ポール・セザンヌ, 1890–1892年頃
ナショナル・ギャラリー Room 44

この作品に描かれているのは、鋭く突き出す岩の壁のような丘陵です。地層が露わになった採石場を思わせ、自然の力強さと構造を強調しています。具体的な場所は特定されていませんが、セザンヌの故郷であるプロヴァンスの風景であることは間違いありません。
制作時期は1890年前後とされ、1880年代半ばに彼が描いていたエクス=アン=プロヴァンス周辺の風景画と様式的な関連があります。単なる風景の再現ではなく、岩や斜面の形態を幾何学的にとらえることで、自然の根本的な構造を探ろうとするセザンヌの姿勢が反映されています。
岩の角度や切り込みの表現は、後のキュビスムの発展を予感させるものでもあり、セザンヌが「自然を円筒と球と円錐で扱うべきだ」と述べた理念を具体化する一例といえます。