Christ in the House of Martha and Mary
ディエゴ・ベラスケス, 1618年頃
ナショナル・ギャラリー Room 30

本作はディエゴ・ベラスケスによる油彩画(1618年頃)で、マルタとマリアの家のキリストを題材にしています。
画面手前には、使用人が乳鉢でニンニクを潰し、老女が横で見守る日常的な場面が描かれています。背景には小さく聖書の場面が描かれ、マルタが妹マリアに不満を述べると、キリストはマリアの行為を正しいと答えます。老女の仕草は、使用人に対して仕事だけでは充足は得られないことを示し、観者に物語と日常生活の関連を考えさせます。
ベラスケスは、背景の聖書場面を壁の小窓やハッチ越しに描くことで、層状構図(絵中絵)を用い、物語と現実の対比を巧みに演出しています。手前の料理の描写や人物の表情は非常に写実的で、スペインの家庭生活を精緻に再現しています。この手法は、後の『エマオの晩餐の台所の場面』(1618年)、『糸紡ぎ女たち』(1657年)、『ラス・メニーナス』(1656年)などにも発展しています。
本作は、日常生活の自然主義的描写と宗教的寓意を重ねたベラスケス初期の傑作であり、精神的な生活(vita contemplativa)と現世的活動(vita activa)の対比というカトリック思想の文脈も含む作品です。