Water-Lilies
クロード・モネ, 1917年
ナショナル・ギャラリー Room 46

クロード・モネ(1840–1926)の《睡蓮》(1917年)は、彼がジヴェルニーに構築した庭の水面を描いた晩年の代表作です。1883年に借りたジヴェルニーの家を1890年に購入し、1893年には敷地を拡張して水の庭園を造成しました。1890年代の「積みわら」や「ポプラ並木」シリーズの後、モネは自身の庭へと関心を移し、最初は日本風太鼓橋などのモチーフを描きましたが、やがて視点は水面そのものへと向かいます。空や木々の反射と水面に浮かぶ花の対話を通じて、自然と視覚体験を融合させようとしたのです。
1912年から1914年にかけて家族の不幸で制作が中断しましたが、第一次世界大戦の勃発後「平和の象徴として作品を残すことは愛国的義務だ」と考え、再び筆を取りました。1915年には大規模連作を描くために新しいアトリエを建設し、戦後にはフランス国家に睡蓮連作を寄贈することを約束しました。その成果の一部はパリのオランジュリー美術館に設置され、現代でもモネ芸術の集大成とされています。
本作は大規模装飾連作と並行して描かれた中規模キャンバスで、屋外制作ならではの鮮やかさと直感的筆致が見られます。画面左下には岸辺を思わせる明るい緑の斜線が走り、右上には濃緑の筆致で樹木が暗示されています。水面は深緑で塗られ、その上に青や紫で表された楕円形の睡蓮の葉が浮かびます。丸みを帯びた筆致は装飾的なリズムを生み、淡黄色の睡蓮の花が水と葉の平面性から浮かび上がるように描かれています。
この作品は、モネが単なる風景描写を超えて、自然の抽象的リズムや色彩の詩情を探求した到達点を示しています。水面と空の境界を消失させる構図は、印象派の枠を越え、20世紀絵画の抽象表現を先取りするものといえます。