The Wilton Diptych
作者不詳, 1395-1399年頃
ナショナル・ギャラリー Room 51

この作品はイギリス王リチャード2世(在位1377〜1399)の私的礼拝のために制作された小型の祭壇画(二連祭壇画、ディプティク)です。ディプティクとは、二枚の板を蝶番でつなぎ、折りたたんで持ち運べる形式の祭壇画を指します。
左側のパネルでは、若きリチャード2世が跪き、洗礼者ヨハネ、イングランドの守護聖人エドワード懺悔王、エドマンド王によって聖母子のもとへ導かれています。右側のパネルには聖母マリアと幼子イエス、そして深い青の衣をまとった天使たちが描かれ、天使たちはリチャードの紋章である「白い鹿(ホワイト・ハート)」の徽章を身につけています。
金箔の輝きやラピスラズリによる深い青の発色は、当時でも非常に高価で特別なものであり、この作品の豪華さと荘厳さを強調しています。作者については不明ですが、その繊細な筆致と装飾技法は国際ゴシック様式の典型とされ、フランスまたはイングランドの宮廷に近い画家の手になる可能性が高いと考えられています。
小型ながら王の信仰と権威を象徴する極めて重要な作品であり、14世紀後期のイングランド美術を代表する傑作です。