The Manchester Madonna
ミケランジェロ, 1494年頃
ナショナル・ギャラリー Room 51

この作品はミケランジェロの初期の未完成作で、フィレンツェで制作されました。絵画技法としてはまだテンペラ(卵を使った絵具)を用いており、画家としての模索期にあたる貴重な例です。
画面の左側では、天使たちが下描きや下塗りの段階にとどまっており、肌を表現するための緑色の下層(ヴェルデ・アンダーペインティング)が確認できます。また、聖母マリアの衣服も黒で形が取られているものの、最終的に塗られるはずの青はまだ施されていません。
一方、右側の完成部分では、ミケランジェロ特有の彫刻的なボリューム感がすでに際立っています。絵画でありながら、まるで大理石を刻むように人物が立体的に表現されているのです。
この未完成作品は、なぜ制作が中断されたのかは不明ですが、後の「システィーナ礼拝堂天井画」に代表されるミケランジェロの独自の造形感覚の萌芽を感じさせる、重要な初期作です。