You alright?
「You alright?」に体調を答えた瞬間、あなたは会話を壊している
イギリス人の「You alright?」は質問じゃない。正解は「Alright?」と返すこと、つまり質問に質問で返すことです。真面目に体調を答えると、相手は一瞬フリーズします。
ロンドンに来て最初の月、近所のコンビニ(Tesco Express)のレジで店員に「You alright?」と言われた。私は反射的に「Yes, I'm fine, thank you. And you?」と答えた。教科書100点の回答である。店員は微妙な顔で「…yeah」と言い、そのあと妙に丁寧に袋詰めしてくれた。今ならわかる。あれは心配されていたのだ。「この人、なんかあったのかな」と。
質問の形をしているだけで、質問ではない
正解は「Alright?」と返すこと
「You alright?」は日本語の「どうも」とほぼ同義だと思っていい。意味は「やあ」。それ以上でもそれ以下でもない。
だから正しい返し方はこう。
- 「Alright?」 ← 質問に質問で返す。これが一番自然
- 「Yeah, you?」 ← 短く投げ返す。これも満点
- 「Not bad, you?」 ← ちょっと会話する気があるとき
注目してほしいのは、どれも相手の質問に答えていないという点。日本語で「どうも」に「どうも」で返すのと同じ構造で、意味のキャッチボールではなく音のキャッチボールをしている。
やってはいけないのは「Yes, I am fine, thank you」みたいなフルセンテンス。文法は完璧なのに、なぜか場が数ミリ秒止まる。あれは「大丈夫?」と軽く聞いただけの相手に「はい、私は健康です」と返しているようなもので、真面目すぎて逆に不穏なのだ。合コンで「趣味は?」と聞かれて職務経歴書を出す感じ、と言えば伝わるだろうか。
ちなみに「イギリス人は礼儀正しいから体調を気にかけてくれている」という説明をたまに見るが、あれは半分ウソだと思う。気にかけてはいない。挨拶している。
「Y'alright?」「Ait?」まで崩れると、もう原形がない
地域と場面で顔が変わる
この表現、口語なのでどんどん削れていく。
- You alright? … 基本形
- Alright? … 主語が消える。ロンドンの店ではこれが多い
- Y'alright? … 北イングランドやウェールズでよく聞く、くっつき形
- Ait? / Aight? … 若者言葉。ほぼ音だけ
- Alright, mate? … ロンドンや南東部。Alright, love? は北部でよく飛んでくる
知人の日本人が北のリーズに出張したとき、パブのおばちゃんに「Y'alright, love?」と言われて「恋人と間違われた」と本気で焦っていた。違う。あの love は「〜さん」くらいの重さで、老若男女問わず飛んでくる。そこに愛はない。
もうひとつ注意点。「Are you alright?」とフルで、しかもゆっくり言われたら、それは本物の心配である。転んだ直後や、明らかに顔色が悪いときなど。挨拶版との違いは速さと語尾で、挨拶は軽く上がって流れていくのに対し、本物は語尾が下がって間が空く。
見分けがつかないうちは、とりあえず「Yeah, you?」で返しておけばいい。本当に心配されていた場合でも、その返事は不自然ではないので事故らない。この汎用性の高さこそ、この一言が国中で生き残っている理由な気がする。