quite
イギリス人の "quite good" を真に受けると人生を損する
quite good、額面通り「かなり良い」だと思って喜んでたら、実は「まあ悪くはないけど...」って言われてるだけかもしれない。1音節の強勢だけで、褒め言葉が急にダメ出しに変わる、イギリス英語で一番信用ならない副詞だと思う。
ロンドンのギャラリーで自分の絵を見せたら、イギリス人の同僚が少し間を置いて "It's quite good." と言った。素直に喜んでいいやつだと思ってたら、あとで聞いたらどうも褒めてなかったらしい。quite、油断すると足元をすくわれる。
"quite" は褒めてるようで褒めてない、あの空気
強く読むかどうかで意味が反転する
アメリカ英語だと quite はほぼ very。"quite good" は「かなり良い」でだいたい合ってる。
ところがイギリスに来た瞬間、この単語は掌を返す。
- quite に強勢を置いて "QUITE good" → 「まあ、悪くはない」くらいの、ふんわりしたダメ出し
- good に強勢を置いて "quite GOOD"(尻上がり) → こっちは素直な称賛
文字だけのLINEやメールで "quite good" って来たら、正直どっちか判断できない。声のトーンとセットで初めて意味が確定する言葉を、よくもまあ日常的に使うなと思う。日本で言う「まあまあだね」を、もっと澄ました顔で言ってくる、そのくらいの温度感で受け取っておくのが安全。
正体は「遠回しに詩でこき下ろす」伝統芸
18世紀の詩人がもう同じことをやっていた
この「褒めてるようで褒めてない」構文、実はイギリスに古くからある damning with faint praise(弱い称賛でこき下ろす) という話法そのもの。1723年、詩人アレクサンダー・ポープが風刺詩の中で使ったのが元祖と言われていて、「正面から罵倒するより、気乗りしない生ぬるい称賛の方が相手に深く刺さる」という発想。もう300年前からイギリス人はこの技を使っている。
語源をたどると quite はもっと素直で、古フランス語 quite(自由な、清算済み)→ ラテン語 quietus(静かな)にさかのぼる。quiet や quit と兄弟の単語で、もとは「完全に解放された」=強調の「完全に」だった。それが日常会話の中でどんどんトーンダウンして、今の「まあまあ」に着地したらしい。
旅先で "quite nice" と言われたら、まず合格点止まりだと思っておくのが無難。本気で褒めたいときはこっちも really か absolutely を使う——quite に頼ると、意図せず inception 状態のダメ出しをしていることになる。