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Altarpiece of St George
聖ジョルジュの祭壇画
Master of the Centenar(推定), 15世紀前四半期頃
ヴィクトリア&アルバート博物館 Room 48a

作品の概要
壁一面が、金です。 V&Aの中世展示室で、この祭壇画の前に立つと、まず光量に驚きます。高さ約6.6メートル、幅約5.5メートル。文字が読めない人のための、巨大な絵本です。
まず、中央下部を見てください。 白馬にまたがった騎士が、槍でドラゴンを突いています。聖ジョルジュ(セント・ジョージ)——後にイングランドの守護聖人となる聖人の、最も有名な場面です。イングランド国旗の赤十字は、彼の紋章です。
この祭壇画は「読む」ものです。順序を追ってください。
- 中央上部——聖霊と、玉座のキリスト。両脇にモーゼとエリヤ
- 中央下部——ドラゴン退治と、エル・プッチの戦い
- 左右のパネル——聖ジョルジュの生涯が各10場面、計20場面。拷問、殉教、斬首まで
- 最下段(プレデッラ)——キリストの受難。磔刑、埋葬、復活の10場面
教会に来た人の大半は、文字が読めませんでした。 説教を聞きながらこの絵を見上げれば、聖人の生涯とキリストの受難が、順を追って目に入る。祭壇画は、視覚化された聖書であり、聖人伝でした。
エル・プッチの戦いに注目してください。 これは神話ではなく、1237年に実際に起きた戦闘です。アラゴン王ハイメ1世がイスラム勢力からバレンシアを奪回する過程の一戦で、その時、聖ジョルジュが天から現れてキリスト教軍を助けたと信じられました。
つまりこの祭壇画は、地元の戦勝記念でもあります。 制作を依頼したのは、おそらく「セントゥナル・デ・ラ・プロマ」——バレンシアの市民民兵団で、聖ジョルジュを守護聖人とする兄弟団でした。自分たちの町を作った戦いと、自分たちの守護聖人を、同じ画面に描かせている。
様式について。 これは国際ゴシック様式の傑作です。14世紀末から15世紀初頭、ヨーロッパの宮廷を横断して流行した様式で、特徴は——細く優美な人物、豊かな衣の襞、鮮やかな色彩、そして惜しみない金箔。 遠近法はまだ完成しておらず、人物は舞台のように前後に積み上げられます。リアルさよりも、豪華さと物語の明快さが優先された時代の美意識です。
近づいて、金箔の表面を見てください。 平坦ではありません。打ち出しや刻印で細かい模様が入れられ、蝋燭の光を受けたときに輝きが揺れるよう工夫されています。当時の教会は暗く、光源は炎だけでした。揺れる光の中で見ることが前提の絵です。
作者について。 現在は「セントゥナルの画家(Master of the Centenar)」という便宜的な呼称で呼ばれています。かつてはバレンシアで活動したドイツ系画家アンドレス・マルサル・デ・サスの作とされましたが、現在は議論があり確定していません。名前の分からない画家の、最高水準の仕事です。
2019〜20年、バレンシアの保存修復機関(IVCR+i)による修復が行われ、色彩が回復しています。
ここがポイント
- 高さ約6.6m・幅約5.5m。文字が読めない信徒のための巨大な絵本として作られた
- 左右のパネルに聖ジョルジュの生涯が計20場面、最下段にキリストの受難が10場面
- 描かれるエル・プッチの戦いは1237年の実在の戦闘。聖人が天から現れて助けたと信じられた
- 依頼主はおそらく聖ジョルジュを守護聖人とするバレンシアの市民民兵団。地元の戦勝記念でもある
- 金箔には打ち出しの模様が入り、蝋燭の揺れる光で輝きが動くよう計算されている