Great Bed of Ware
Hans Vredeman de Vries(デザイン), 1590-1600頃
ヴィクトリア&アルバート博物館 Room 57

幅3.26メートル。大人が4組、同時に寝られます。 400年前の、宿屋の客寄せです。
まず、サイズを体感してください。 幅3.26m、奥行3.38m、高さ2.67m。現代のキングサイズベッドが幅1.8m程度ですから、その倍近い。四本の太い柱が天蓋を支え、寝台というより小さな部屋です。
なぜこんなものが作られたのか。 1590年代、ロンドンから北へ約35キロの町ウェアは、ケンブリッジ方面へ向かう街道の宿場町でした。馬で1日の距離——ちょうど最初の宿泊地になる位置です。宿屋が林立し、客の奪い合いが起きていました。
そこである宿の主人が考えました。「とんでもなく大きいベッドを置けば、それを見に人が来る。」
これは中世の集客装置です。 そして、狙いは完全に当たりました。
彫刻を見てください。 後期エリザベス朝様式の濃密な装飾が全面を覆っています。
サテュロスがいる理由は明白です。婚礼の夜を過ごす客も想定されていました。
そして、ここが重要です。この彫刻は、もともと極彩色に塗られていました。 今は木の色に見えますが、当初は人物像に鮮やかな彩色が施されていた。それを蝋燭の光で見ると、どうなるか想像してください。 揺れる炎に照らされて、色鮮やかな半獣人とライオンが浮かび上がる。宿の名物としての破壊力が分かります。
次に、柱と頭板の表面をよく見てください。 無数のアルファベットの頭文字が刻まれ、赤い封蝋の印が押されています。宿泊した客が、自分がここで寝た証として残していったものです。400年分の落書きが、そのまま残っている。SNSに写真を上げるのと、まったく同じ衝動です。
有名になった証拠。 このベッドは制作からわずか10年ほどで、演劇の台詞に登場します。
観客が説明なしで笑えるほど、当時のロンドンでは誰もが知っている存在でした。
V&Aへ来るまで。 宿から宿へ持ち主を変えながら数百年を過ごし、1931年、V&Aが4,000ポンドで購入しました。これは当時の家具部門の年間予算の4倍にあたる額です。それだけの無理をして買うだけの価値がある、と判断されたということです。
現在の寝具や天蓋の布は現代の複製ですが、木の彫刻と、客たちの落書きは本物です。 近づいて、頭文字を探してみてください。