Trajan's Column
Monsieur Oudry(石膏複製制作), 原作:AD 101–106、複製:1864-1874頃
ヴィクトリア&アルバート博物館 Room 46a

天井に入りきらなかったので、真っ二つに切って隣に並べてあります。
キャスト・コートに入って、まず目を奪われるのがこれです。高さ25メートルの円柱が、上下2本に分割されて並んで立っている。 展示室の高さが足りなかった、というただそれだけの理由で、古代ローマの記念碑が輪切りにされている。この率直さがV&Aらしい。
なぜ複製なのに、これほど価値があるのか。 理由は明快です。原作は、もう読めません。
原作はローマのフォルムに、今も立っています。 紀元101〜106年、皇帝トラヤヌスのダキア戦争(現在のルーマニアにあたる地域への遠征)の勝利を記念して建てられました。柱の表面には、螺旋状に巻き上がる帯状の浮彫が刻まれ、155の場面、2,500人以上の人物が連続して展開されます。世界最古の「漫画」とも呼ばれる、物語の連続表現です。
ところが、原作には決定的な問題があります。 上に行くほど遠くなり、地上からは肉眼でほとんど見えない。 さらに20世紀の大気汚染で表面が著しく劣化し、細部は失われつつあります。
この複製は1864年に作られました。 汚染が本格化する前の状態を型取りしているため、今のローマの原作よりも、細部がよく残っています。 そして分割展示のおかげで、上部の場面も間近で見られる。——古代ローマ人ですら見られなかった角度で見られる、というわけです。
浮彫を追ってください。 戦闘だけではありません。橋を架ける工兵、砦を築く兵士、船に荷を積む場面、行軍、演説、降伏、そして敵将デケバルスの自決まで。軍隊の日常が克明に記録されており、ローマ軍研究の最重要資料になっています。装備、服装、道具の形——考古学者はこの浮彫から実物を復元しています。
そして、円柱の基部の文字を見てください。 ここが意外な見どころです。
碑文に刻まれたラテン文字の形は、ローマ文字の完成形とされ、書体史における最重要資料です。20世紀にこの文字を元にした活字書体が作られ、「Trajan(トレイジャン)」と名付けられました。この書体は、ハリウッド映画のポスターで異様なほど多用されています——『タイタニック』も『ロード・オブ・ザ・リング』も、あの荘厳なタイトル文字がそれです。2000年前の柱の足元の文字が、現代の映画館の入口にある。
この複製の来歴も面白い。 1861年、ナポレオン3世の依頼でパリで型取りが行われ、V&Aはその型から1864年に石膏で複製を制作。1873年のキャスト・コート開設時に展示され、1874年に完成しました。内部には煉瓦の芯が入っています。
当時の目的は教育でした。 ローマまで行けない美術学生に、実物大で本物を見せる。その教育装置が、150年後には原作の代替資料になった。 複製が原本を越える瞬間が、ここにあります。