fortnight
イギリスでは給料も家賃もゴミ収集も「fortnight」で回っている。ただの two weeks の言い換えだと思って辞書を閉じた人は、この単語がなぜ「14日」ではなく「14の夜」なのかを知らないまま損をしている。しかもこの単語には、生き別れた兄弟がいる。

week が2音節ぶんの手間を惜しんだ結果
ロンドンで fortnight という単語を一番強く実感するのは、給料日でも予約の電話でもなく、道端に出されたゴミ箱の前だったりする。出す週を間違えると、次に回収が来るのは2週間後だからだ。
まず身も蓋もない話をすると、fortnight が生き残っているのは風情でも伝統でもなく、two weeks より短いからだと思う。イギリス人は「fort-night」の2音節で済ませられるものを、わざわざ言い直したりしない。
そしてこれ、旅行者にとっては単なる語彙の問題では終わらない。イギリスの生活は、わりと本気でこの単位で動いている。
つまり「fortnight を知らない」は「2週間ゴミが出せない」と地続きなのだ。語学の話をしていたはずが、急に生活の話になる。ちなみに一部の自治体はすでに3週に1回へ移行し始めていて、そうなるともう fortnight ですらない。夏場にどうなるかは、まあ、想像がつくと思う。
sennight という、消えたほうの単語
ここからが、今日ひとつだけ賢くなるところ。
fortnight の語源は古英語の fēowertyne niht、つまり「fourteen nights = 14の夜」だ。日ではなく、夜で数えている。ゲルマン系の人々はもともと時間を夜で勘定していたらしく、タキトゥスが『ゲルマニア』でその習慣に触れている。日が沈んだところで一日が始まる、という感覚だったわけだ。
で、当然こう思うはずだ。14の夜があるなら、7の夜もあるだろ、と。
ある。sennight(seven-night)という単語が、ちゃんと存在した。15世紀から使われていて、ジェイン・オースティンの手紙にも出てくる。つまり19世紀初頭までは現役だった。
それが今、跡形もない。week に完全に食われて死んだ。生き残ったのは弟の fortnight だけ。理由は単純で、week という短い代替語がある sennight には存在意義がなく、two weeks より短い fortnight には存在意義があった——それだけの話だと思う。言語は情緒ではなく、文字数で人を選ぶ。
英語圏で fortnight が「古風で気取っている」と言われるのはアメリカでの話であって、イギリスでは今日もゴミ収集のカレンダーに刷られている。生き残った単語というのは、だいたい詩ではなく行政書類の中にいる。