British English2026年8月24日

    I'm not being funny, but

    「I'm not being funny, but」と言われたら身構えろ。面白い話は絶対に始まらない

    直訳すると「面白くしようとしてるわけじゃないんだけど」。じゃあ何をしようとしてるのかというと、これから悪口を言おうとしています。この前置きが出た瞬間、後半は100%失礼な内容です。

    「I'm not being funny, but」と言われたら身構えろ。面白い話は絶対に始まらない

    パブで隣に座った同僚が、ジョッキを置いてこう言った。「I'm not being funny, but...」。おっ、面白い話が始まるのかなと身構えたら、続きは「お前のプレゼン、誰も聞いてなかったぞ」だった。面白くない。1ミリも面白くない。でもこの人、宣言通り「面白くしようとはしていない」わけで、嘘はついていない。イギリス英語の理不尽さがここに凝縮されている気がする。

    01

    この「funny」は「面白い」じゃない。「変な奴」の方のfunny

    まず種明かしから。ここの funnyha-ha funny(笑える)じゃなくて、funny peculiar(奇妙・面倒くさい)の方。英語には昔から funny ha-ha or funny peculiar?(笑える方の変? 気味悪い方の変?)という聞き返しがあるくらいで、この単語は二毛作なんですよね。

    つまり I'm not being funny, but が本当に言っているのは:

    • ❌「冗談を言うつもりはないんだけど」
    • ⭕️「面倒な奴・突っかかってる奴だと思わないでほしいんだけど

    そう思ってほしくないなら言わなきゃいいのに、言う。ここが最高に英国的だと思う。

    構造としては日本語の「怒らないで聞いてほしいんだけど」と完全に同じです。あれを言われて怒らなかったこと、人生で一度もない。あるいは「悪気はないんだけどさ」。悪気しかない。予防線を張る行為そのものが、これから失礼をやる自白になっているという、世界共通のバグ。イギリス人はそのバグを、わざわざ専用の定型句にして常備しているわけです。

    02

    アメリカ人はゼロ回、イギリス人は600万語に1回言う

    これ、感覚の話じゃなくて数字が出ています。英語のコーパス(実際の会話を大量に集めたデータベース)を調べた言語学者によると、この言い回しはイギリス英語の話し言葉では約600万語に1回出てくるのに対し、アメリカ英語のコーパスでは出現回数ゼロ。ドーバー海峡で綺麗に途切れている。

    アメリカ人が同じことをやりたいときは No offense, but...(気を悪くしないでほしいんだけど)を使います。ちなみにアメリカ南部には Bless her heart, but... という必殺技があって、直訳「あの子に神のご加護を、でも」から始まる文が優しかった試しはないらしい。人類、考えることは同じ。

    もう一つ知っておくと得なのが階級と評判の話。この表現、どちらかというとワーキングクラス寄りの言い回しとされていて、しかも2008年にBBCがやった「イギリス人が最も嫌いな決まり文句」の投票にランクインしている。つまりネイティブからも「うわ、また始まった」と思われている枠。

    なので使い方の結論はこう。

    • 聞き取れるようにしておく — 出た瞬間「あ、これから刺される」と分かるだけで防御力が上がる
    • 自分では使わない — 日本語だって「怒らないで聞いてほしいんだけど」を連発する人、だいたい嫌われてるでしょう

    英会話の教科書は絶対に教えてくれないけど、パブでは週2で飛んでくる。知らないと、面白い話が始まると思ってニコニコしながら悪口を聞くことになります。私です。

    明日もまた1語、増えます。

    イギリス英語の沼は、思ったより深い。

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