A Young Woman seated at a Virginal
ヨハネス・フェルメール, 1670-1672年頃
ナショナル・ギャラリー Room 16

この作品はヨハネス・フェルメールによる1670年代の室内画で、タペストリーが脇に引かれ、その奥にヴァージナル(小型チェンバロ)を弾く若い女性が描かれています。彼女は正面から視線を送り、まるで観る者をデュエットに誘うような演出がなされています。
背景の壁に掛かる絵画には娼婦が客と戯れつつリュートを奏でる場面が描かれており、当時の象徴表現に基づき「音楽と愛(あるいは誘惑)」の関係を示唆しています。フェルメールの比較的少ない作品群のなかでも、この寓意性と親密さを兼ね備えた肖像的室内画は注目に値します。
また、本作は技術調査により数々の発見がありました。
モデルの髪型は1670年頃の流行で、『レースを編む女』の女性と一致し、制作時期の近さを示しています。本作は署名がなく、ナショナル・ギャラリー所蔵の『立つ若い女性』より先か後かは断定できませんが、両者の密接な関係性が改めて明らかにされています。
このように本作は、視線の演出・寓意的背景・科学的調査による裏付けを総合的に備えた、フェルメール研究において非常に重要な作品です。