Bathers at Asnières
ジョルジュ・スーラ, 1884年
ナショナル・ギャラリー Room 43

1884年、25歳を目前にしたスーラが取り組んだ最初の大作です。通常は歴史画や宗教画に割り当てられる巨大なカンヴァスに、彼はセーヌ川沿いで余暇を過ごす労働者や少年たちを描きました。背景には煙を吐く工場の煙突や鉄道橋、そして舟遊びを楽しむブルジョワの姿が配され、近代都市の風景と労働者階級の現実が重ね合わされています。
画面に登場する男たちは互いに関わらず、古代のレリーフのように横一列に配され、静止したポーズはまるで時間が止まったかのようです。これは印象派の即興的で動きのある筆致とは対照的であり、徹底的に準備された油彩スケッチとデッサンに基づいて緻密に構成されています。彼は川辺で馬や犬が水浴される「バイナード(bainade)」と呼ばれる労働の場を観察しましたが、完成作では労働の痕跡を消し去り、まるで理想化された静謐の場に変容させています。
人物像は古典彫刻やルネサンス美術からの影響が色濃く、特に水辺に立つ少年の姿はギリシア神話のトリトンを思わせます。さらに、ピュヴィ・ド・シャヴァンヌの壁画的構成を参照しながらも、スーラは近代的題材を荘重に描き上げました。肉体は明確な輪郭線で区切られ、肌の色調はルネサンスの壁画を思わせる明るいトーンで処理されています。一方で水面や帽子など一部には、のちの点描技法を思わせる小さな色点の重ねがすでに試みられています。
この作品は当時のサロンで落選し、スーラは独立展に出品することになります。しかし、この挫折を契機に彼は芸術的独自性をさらに追求し、翌年の《グランド・ジャット島の日曜日の午後》へと発展させます。二つの作品は同じセーヌ川沿いの風景を対岸から描いたもので、労働者階級とブルジョワ階級の余暇を対比する構想が読み取れます。
《アニエールの水浴》は、印象派の影響を受けながらも異なる方向へ進もうとしたスーラの宣言であり、近代の労働者階級に静謐と調和を見出した革新的な試みでした。若き画家の野心と冷静な観察眼が凝縮された、19世紀美術の転換点を示す重要な作品です。