Philip IV of Spain
ディエゴ・ベラスケス, 1656年頃
ナショナル・ギャラリー Room 30

本作はディエゴ・ベラスケスによる油彩画(1656年頃)で、フェリペ4世の最晩年の肖像です。
王はこの肖像を描かれた当時、長期にわたる統治(1621–1665年)の疲れや、三十年戦争による政治的困難、家族の喪失による影響が表情や体格に現れています。顔のたるみや腫れた目は重責を象徴し、人間的でありながら威厳ある姿を伝えています。背景と衣装は黒で統一され、顔の蒼白さが際立っています。髪は規則正しい波状に整えられ、白いゴリージャの襟が端正に首元を飾ります。胸元には金羊毛騎士団の徽章が描かれ、当時の観覧者には即座に認識可能でした。
ベラスケスは自由な筆致で肖像を描き、細部を写実的に描くのではなく、王の存在感や威厳を印象的に表現しています。目や装飾のハイライトは緩やかなタッチで示され、服の刺繍や金のボタンも軽やかな筆致で描かれています。 王として尊敬を損なわずに、人間的な側面も表現されているのです。
王や貴族は通常、肖像画では理想化され、威厳や美しさを強調されるのが常識でした。ところが、ベラスケスは、あえて老いや疲れをそのまま描きながらも、姿勢、服装、徽章などで王としての威厳をしっかり保持しています。
この肖像はフェリペ4世最後の公式肖像で、弟子たちによる多数の複製が制作され、宮廷関係者や来訪者への贈呈に用いられました。また、1658年にはベラスケスがサンティアゴ騎士団に叙任されるなど、王の支持を受けた栄誉もこの時期に重なっています。