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    ジャスト・ロンドンは、ロンドンの深層に迫る力量も器量もない中途半端な存在ですが、旅の判断をほんの少し整える一文が紛れていれば、それだけで存在理由になります。

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    The Fighting Temeraire

    戦うテメレール号

    Must See

    ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー, 1839年

    ナショナル・ギャラリー Room 40

    戦うテメレール号

    作品の概要

    イギリス人が「国民的絵画」の投票をすると、たいてい一位になるのがこの絵です。描かれているのは、ただの曳航作業。しかしイギリス人はこの絵の前で、しばしば言葉を失います。

    画面の左を見てください。 白く発光するような巨大な帆船が、幽霊のように音もなく進んでいます。テメレール号——トラファルガー海戦(1805年)でネルソン提督の旗艦を救い、英雄となった戦艦です。マストは高くそびえ、船体は夕日を受けて青白く輝いている。実物はこの時すでにマストも大砲も外され、みすぼらしい木の殻でした。ターナーは事実を曲げて、記憶の中の姿で描いています。

    その手前、小さくて黒いものを見てください。 石炭を焚く蒸気タグボートです。ずんぐりとして、煙突から赤黒い煙を吐き、火の粉を散らしている。優雅さのかけらもないこの小さな鉄の船が、栄光の戦艦をロープで引きずって、解体場へ連れて行くところです。帆の時代が、蒸気の時代に首根っこを掴まれて処分されに行く——その一場面だけで、産業革命という時代の転換が語られてしまう。

    そして右を見てください。 沈む夕日が、水面を金と緋色に燃え上がらせています。実際のこの航路では、太陽はこの方角には沈みません。ターナーは構図のために、太陽の位置ごと動かしました。老いた船が左、沈む太陽が右、その間を横切る煙——絵の中の全部が「終わり」を指しています。

    ターナーはこの絵を生涯手放さず、売却の申し出をすべて断って「私のお気に入り(my darling)」と呼び続けました。死後、遺贈によって国民のものとなり、今もここにあります。イギリスの20ポンド紙幣に描かれていた時期もあり、この国の自画像そのものと言っていい一枚です。

    ここがポイント

      • トラファルガー海戦の英雄艦が、解体場へ曳かれていく最後の航海——帆の時代の終わりそのもの
      • 実物はマストも大砲も外された木の殻だったが、ターナーは記憶の中の輝く姿で描いた
      • 白く発光する巨艦と、赤黒い煙を吐く小さな蒸気タグボートの対比に産業革命が凝縮されている
      • 構図のために夕日の位置まで動かした。実際の航路では太陽はこの方角に沈まない
      • ターナーが生涯手放さず「私のお気に入り」と呼んだ絵。イギリスの国民投票で常に一位に選ばれる