Double-headed Serpent
作者不明, 15〜16世紀頃
大英博物館 Room 27

照明の下で、青が燃えて見えます。 500年前のアステカの職人が貼りつけたトルコ石が、今も一片も色褪せていません。
まず、全体の形を見てください。 中央から左右へ、二匹の蛇が身をくねらせて向かい合い、それぞれの端で口を開けています。二つの頭を持つ一匹の蛇とも、絡み合う二匹とも読める形。W字に波打つ胴体が、静止しているのに動いて見えます。
次に、表面に近づいてください。 約2,000片のトルコ石が、木の芯(スギ材)の上にモザイクとして貼られています。一片一片は爪の先ほどの大きさで、微妙に色が違う。職人はそれを、蛇の胴の起伏に合わせて濃淡を配置しました。松脂を接着剤にして、この量を手作業で並べています。
口の中を見てください。 歯と歯茎には赤い貝殻(スポンディルス貝)が使われ、青の中で血のように鮮やかに浮かんでいます。鼻先にも同じ赤。そして眼窩は空洞ですが、かつては黄鉄鉱の球が嵌め込まれ、金属質の光を放っていたと考えられています。青・赤・金の三色で構成された装身具でした。
蛇の意味を知ってください。 アステカにおいて蛇は、羽毛の蛇の神ケツァルコアトルと結びつく神聖な存在です。ケツァルコアトルは風と知恵を司り、人間に暦と農業を授けた創造神でした。この胸飾りをつけた人物は、その神の力を身に帯びていたことになります。
素材そのものが権力です。 トルコ石はアステカ帝国の領内では採れず、はるか北方(現在のアメリカ南西部方面)から交易と貢納で運ばれてきました。帝国が支配した広大な範囲を、身につけて示す——この胸飾りは装飾品であると同時に、政治的な地図でもあります。
なお、この品には有名な仮説があります。 1519年、アステカの王モクテスマ2世がスペインの征服者コルテスを迎えたとき、贈り物としてトルコ石のモザイク細工を渡したと記録されています。この胸飾りがその一つではないか、という説です。確証はありませんが、もし本当なら、これは帝国が滅びる直前に、滅ぼす相手へ手渡された品ということになります。
アステカのトルコ石モザイク細工で現存するものは世界に25点前後しかなく、その大半がここ大英博物館にあります。