Memorial Pole (pts'aan) for Chief Luuya'as
追悼用トーテムポール
作者不明, 1850年頃
大英博物館 Great Court

作品の概要
大英博物館で、首を最も大きく反らすことになる展示品です。 高さおよそ12メートル。グレート・コート脇の階段室を貫いて立っており、一階から見上げ、階段を上りながら各部を間近で見ていくという、館内でも珍しい鑑賞の仕方ができます。ぜひ上まで上ってください。
まず、下から順に読んでください。トーテムポールは「読む」ものです。
- 最下部——神話上の海の存在「Man-Underneath」が、鯨を捕らえている場面。海の力そのものです。
- その上——母ビーバーと子ビーバー。氏族の名と、家系の継承を表します。
- 上部——ワシ、あるいは雷を呼ぶ伝説の鳥サンダーバード。天空の力です。
- 頂点——鋭い嘴の鳥。氏族の伝承に登場する特別な存在です。
これは装飾ではありません。 ヨーロッパの貴族が紋章で家系を示したのと同じように、モチーフの積み重ねが氏族の歴史と権威を語る文書になっています。読める人には、誰の家系で、どんな出来事を経てきたかが分かる。
素材と技術を見てください。 一本のレッドシダー(ベイスギ)から彫り出されています。継ぎ目はありません。この木は北米北西海岸に育つ巨木で、まっすぐで割れにくく、腐りにくい。斧と手斧(アッズ)だけで、これだけの深浮彫を成立させています。
これは誰のためのものか。 カナダ・ブリティッシュコロンビア州のニスガ族、イーグル・ビーバー氏族の酋長ルーヤアスを追悼するために、19世紀半ばに建てられました。墓標ではなく、記念碑です。故人の地位と氏族の物語を、村に立ち続けることで語り継ぐ。
立てる行為そのものが儀礼でした。 完成したポールを起こすには、数十人から数百人規模の人手が要ります。縄と足場を使い、共同体が総出で引き起こし、その後に大規模な饗宴(ポトラッチ)が開かれる。彫ることではなく、皆で立てることが完成だったのです。
なお、ポトラッチはカナダ政府によって1885年から1951年まで法律で禁止されていました。トーテムポールの制作と建立の伝統も、その間に大きく断絶しています。この一本が彫られた頃には当たり前だった営みが、その後、法によって止められた——展示を見上げるとき、その時間差も一緒に見えているといいと思います。
ここがポイント
- 高さ約12メートル。階段を上りながら各部を間近に見ていける、館内でも珍しい展示
- 下から順に「読む」もの。鯨を捕らえる海の存在、母子のビーバー、ワシ、頂点の鳥へと氏族の物語が積み上がる
- レッドシダー一本から継ぎ目なく彫られている。斧と手斧だけの深浮彫
- ニスガ族イーグル・ビーバー氏族の酋長ルーヤアスの追悼碑。墓標ではなく記念碑
- 共同体総出で引き起こす儀礼までが完成だった。その饗宴ポトラッチは1885〜1951年まで法で禁じられた